chapitre.3
夢小説設定
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翌朝。
トン、カン。
トン、カン。
「何でっ、俺がっ、人ん家、直さなきゃ、ならねぇんだ、よっ!」
「一泊させてもらったんだから当然でしょー」
「だいたいあの小娘が錬丹術とやらで直せば済む話だろうが!あんにゃろとっとと買い出しに行きやがって。」
『なんでもかんで術で直せばいいってもんじゃないですよ黒鋼さん!』
脳裏にはさっそうと買い出しに出向く皇女の姿。それが黒鋼をさらにイラつかせる。
一方で、町に出かけた春香・サクラ・セイの三人が仲良く手を繋いで歩きその後ろをモコナを頭に乗せた小狼が付いていく。
「モコナ、羽根の波動感じるか?」
「うーん、うーん…。わかんない…。この辺り全部、なんだか不思議な力でいっぱいなのー」
「不思議な力?」
困った様子のモコナと小狼。
すると先を行く女子三人に市場のおじさんが声をかけた。
「よう春香!見たことないお嬢さん達連れてるな!」
「客人なんだ。遠くから来たんだって。」
「旅の人か!なら一緒にどうだ?」
『あ、賭博ねっ』
「セイさん知ってるんですか?」
興味深々の小狼にセイはうん、と答えた。
『私がいた国にもあったよ。主に都で流行ってるらしいけど。』
器の中にサイコロのようなものが二つ。
「簡単だよ。これを二個振って足した数が相手より多い方が勝ちだ。」
そういっておじさんは半分寝ぼけているサクラにサイコロを二つ渡した。
「ったく好きなんだから。で、今一番多い数、出したのは誰だ?」
「わしだよ、11。」
『そんなのどっちも六を出さなきゃ勝てないじゃない!』
「そうだぞ!素人相手に――っ」
コロン――…、
『え…。』
出た数字は六と、六。
これにはその場にいた全員、開いた口がふさがらなかった。
しかも。
何度。
やっても。
『六と六…。』
こんなのってあり得る…?
もう勘弁してくれー…、とおじさんをさんざん泣かせたサクラ。本人わかってない。
たっぷり賭けに勝って稼いだお金でこの国の衣装と食料を買うことが出来た。
帰り道、川にかかる小さな橋で桃饅というお菓子を頬張る。
いやサクラ様様である。
「サクラは神の愛娘なんだな。」
「神の、愛娘?」
『なにそれ?』
「特別に運のいい人間のことをそういうんだって、母さんが教えてくれた。神様が特別に愛してるから幸運なんだって。」
『へぇー初めて聞いた。』
今までずっとそうだったのか、と春香に尋ねられたが困った顔でサクラがわからない、と答えた。
「なぜだ?」
「わたしが覚えてるのは…、自分の名前と後…砂漠の中にある街並みのことだけなの…」
「…ごめん。いやなこと聞いたな。」
「ううん。今なくなった記憶を集める為に旅をしてるんだって。そう小狼君に…。」
そういってサクラは小狼を振り返る。
数秒間があったがそのあと彼は「はい、サクラ姫」と優しく微笑んだ。
その笑顔がセイはなんともいたたまれない気持ちになる。
辛いはずなのに。どうして笑えるのだろう、と。
ガシャーン!!
――!!
何かが破壊される音がセイ達のもとにも届いた。
「やめてください!!」
「この店はまだ領主様に納めるべき税金を払っていないだろう!」
この声は、昨日市場にいた野蛮なあの男の声だ。性懲りもなくまた民を苦しめているのだろう。
駆け付けた小狼達の目に映ったのは老人と女性の姿。
店先も容赦なく荒らされ、二人もずいぶん痛めつけられている様子だった。
「祖父は病気なんです!薬代がいるんです!だからもう少し待ってください!」
「いいや待てない!今すぐ滞っている税金、耳揃えて払ってもらおう!」
「無理です!前の領主様の時の二十倍の税金なんてとても払えません!」
「だったらそのじいさんをもっと鞭打ってやる!100回だ!」
「やめて!」
容赦なく男が手にする鞭が振り下ろされる。
もちろん当たる前に止めるつもりでいたが、意外にもサクラが二人をかばおうと前に飛び出す。
そんなサクラをケガさせまいと小狼が鞭を掴んでまた男を足蹴にする。
二人をかばうサクラの前にセイと春香がさらに盾突く。
「き…貴様っ、昨日の!そこをどけ!」
「どきません。」
「~~~っ!蓮姫の領主の恐ろしさを思い知らせてやるー!」
『お前はただの息子だろう。』
「それもバカの!」
セイと春香の台詞が領主の息子の神経をさらに逆撫でする。
「うるさいーー!」
『――っ!』
男は小狼を強引に振り下ろすと背に持っていた大きな扇を手にした。春香がそれに反応する。
扇を一仰ぎ。
するとそこから人形のような兵隊が何体も出てきたではないか。
一体どういう原理なのだろう。
昨日も聞いたこれが秘術というものなのか。
「あの扇は母さんのなんだ。母さんは秘術師だったんだ。」
人形兵の振り下ろされる剣を小狼は蹴りで防ぎ、ついで強烈な蹴りをいれる。
『小狼!』
「大丈夫ですっ。」
しかし小狼が次々と兵隊を倒すも領主の息子が何度も扇を仰ぎで何体も兵隊を出してくる。
これでは小狼が不利だ。
『春香っ、サクラ、二人をお願いねっ』
「セイっ、ダメだ危ない!」
「セイさん!」
セイはクナイとは別のもう一つの武器。三節に折りたたまれた棒を取り出した。
紐で繋がったその紐を引くと長棍へと変わる。
『はぁあ!』
ガガッ!
長棍を器用に操り人形兵を次々と倒し、小狼も蹴りで仕留めていく。
最後の人形兵を倒し、春香がやった!と声を上げた時だった。
ヒュ――……、
この音は…っ!
昨日も耳にした音だった。
そのあとは春香の家がボロボロにされたのだ。
『小狼!』
「――っ!」
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