chapitre.2
夢小説設定
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「それで、こっちがー」
「黒鋼だ」
『はじめましてサクラ姫。私はセイといいます。』
「で、このふわふわ可愛いのがー」
「モコナ=モドキ!モコナって呼んでっ」
よろしくあくしゅっ!とモコナがサクラの指を握る。サクラをモコナに任せてファイ、黒鋼、セイは窓から外を見た。そこには小狼がいた。その背を静かに見守る。
外では雨が降りはじめた。
「泣くかと思った、あの時。」
静かに雨に打たれ続ける少年を見てファイが呟いた。
「今は…泣いてるのかな」
「さぁな」
同じく窓の外を見ていた黒鋼が口を開く。
「けど、泣きたくなきゃ強くなるしかねぇ。何があっても泣かずにすむようにな」
噛みしめるように言い聞かせるように、黒鋼は言った。
まるで自分も経験したことのあるような…そんな口ぶりだった。
「うん、でも」
少年に、青い龍と新緑の鳥の羽が覆い被さった。
まるで、雨から守るように。
赤い獣は主人に寄り添うように身を寄せ、肩に赤い鳥が止まる。セイの巧断だ。
「泣きたい時に泣ける強さも、あると思うよ。」
泣かない強さと、泣ける強さと。
その両方にセイは頷いた。
彼はこれから先も姫の記憶を取り戻す。
そしてその度に傷を負うのだろう。
知らず、セイは自分の左腕を強く握りしめた。
「で、てめぇはなに泣いてやがる。」
『泣いてません。』
「セイちゃん?」
黒鋼とファイの間にいるセイ。
窓の外の方を向きながらも顔は俯いたまま。
それでも頬を流れるものは紛れもない涙そのもの。
「泣いてるだろうが。」
『泣いてませんっ。』
どういう意地の張り方だ、と黒鋼は胸の中で突っ込む。
涙を流すのは小狼を思ってなのか、それとも小狼と同じものを対価にした己の覚悟の無さゆえか。
わかっていた。
わかっているつもりだった。
そんなに甘くない。心のどこかで母は私の事を覚えていてくれているかも、なんて思っていたのかもしれない。でも…。
小狼とサクラを見て、自分の現実を突きつけられた。
私も同じだと。いつか母と会う時が来ても、
他人のように「こんにちは、いいお天気ね。」なんて言われるのだろう。
そう考えると急に怖くなってきたのだ。
不安になってきた。
それが今の状態を表している。
明らかに泣いているのに、泣いてないなどと意地を張るセイにファイは肩をポンと撫で、黒鋼は頭をガシガシと乱暴ながらも撫でる。
何かを言うでもなく。
ただずっとセイの気が済むまで、そうしてくれていた。
* * *
翌朝。
昨日降った雨は止み、小狼とファイと黒鋼は正義君達に別れを告げるべく以前も行ったお好み焼き屋に行っていた。
セイももちろん行くかと思われたが、もし街中で浅黄笙悟にあったら殴ってしまうかもしれないからここで留守番してる、などと物騒な事を言うのでそれ以上は小狼もなにも言えなかった。
『もし会えたら伝えてくれる?』
「はい?」
『戦う時は周りの状況をよく見て戦え、と。もしまた物を壊すようならそのときは…』
「そのときは…?」
『うふふ…っ』
笑いながら拳を握ってみせるセイ。
セイさんの目が笑ってなかったです。
小狼はお好み焼き屋に現れた浅黄笙悟に正直に全部伝えたのだった。
「OK…。肝に銘じとくぜ…。俺もまだ死にたくないからな。」
これにこりて街を壊すのも控えてくれること祈るばかりである。
そんな会話をしているとはつゆ知らず。
元の世界の服装に着替え、小狼たちの帰りを待つ女性チーム。
気晴らしにセイはサクラに自分の巧断を見せていた。
「きれい…。」
『でしょう?』
「セイの巧断も特級なんやな。」
と空汰さん。
きれーやなぁといって見上げた体長30cmほどの赤い鳥。
長い尾羽を足すとその倍くらい。
「昔本で読んだことある。不死鳥っていうもんが存在する話や。」
『不死鳥…。』
それは何度寿命を迎えようとも何度でも蘇ることができる、という鳥だそうだ。
皮肉なものだ。
今最も自分が欲するものなのに。
この世界を出てしまうとおそらくこの巧断は消えてしまう。
『お前も一緒に来てくれたらどんなにいいことか…。』
「セイも早く見つかるとええな。みんなを助ける為に。」
『はい。』
「お待たせしました。」
『あ、おかえり!』
ちょうど小狼たちが帰って来る。
すぐさま各々元居た世界の服に着替えてセイ達がいるところへ戻ってくる。
その間、セイはずっとサクラと手を繋いだまま。
少しでも彼女の不安が和らぐように。
「もう行くんか」
「はい」
下宿屋の前で、この国に来た最初の装いをまとった五人。
「まだまだわいとハニーの愛のコラボ料理を堪能させてへんのにー!」
「これ、ありがとうございました。」
くぅっと悔しがってくれる空汰を慣れた様子で無視し小狼が嵐にカエルの財布を手渡した。
セイは隣に立つ姫を盗み見た。
ふらりふらり。小狼の外套を羽織ったサクラは少しだけ眠そうである。
『平気…?』
「まだちょっと、眠いだけだから」
頷きながらも目元をこするサクラ。繋いだ手をぎゅっと握りしめる。
その様子を小狼は辛そうに見守っていた。
「下を見るな。」
「――っ。」
「やらなきゃねらねぇことがあるんなら前だけ見てろ。」
「……はい。」
黒鋼なりの励ましの言葉、だった。
しかしその言葉が小狼の背中を押した。
「ほんとうに、ありがとうございました。」
「なんの!気にするこたぁない」
感謝の言葉に、気持ちの良い言葉で返してくれる空汰。
「次の世界でも、サクラさんの羽根が見つかりますように。」
嵐が目を閉じて祈る。
フサァ…――。
モコナの背から大きな翼が広がった。
大きく開けた口で勢いよく吸い上げる。
久しぶりの強い吸引力。今度は逆らわないで身体の力をゆっくりと抜いた。
さよなら、阪神共和国。
とても素敵な、神と人間の調和する世界。
そうして五人は阪神共和国から消えた。
ピイィ―――…っ
聞こえてくる甲高い鳴き声。
ありがとう。
とセイは心の中で呟いた。
いつか必ず手に入れてみせる。不老不死の法を。
遠のいていく不死鳥の姿。
_____貴女に、幸よあれ。
『え…――。』
そんな祈りを、聞いた気がした。
阪神共和国編 Fin。To Be Continued.
2022/03/23