chapitre.2
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瞬間、爆発的な光が生まれた。
強い光に目を瞑る。
光が晴れた先で、少女は目を疑った。
崩れかけた城を優に超えるほど巨大な人影が現れたのだ。
滲み出る優しさが出ている顔と、身につけた中華服に見覚えがある。
正義の巧断だ。
プリメーラに抱かれた腕の中のモコナの瞳がもう一度大きく開かれた。
「あった!羽根!!この巧断の中!!」
『え。』
「羽根はあの巧断の中って、アレにかよっ!」
「なるほど、巧断を人探しに使ってもモコナが反応しないわけだー」
突然巨大化した正義の巧断。
叫ぶのも無理はない。それほどの迫力だったのだ。きっとこの世界どこを探してもこれほど大きい巧断はいないだろう。
そんな中ファイは一人冷静に巧断を見上げた。
「巧断は憑いた相手を守る。一番強い力を発揮するのは、守るべき相手が危機に陥ったとき。」
今思えば思い当たる点もある。
以前、モコナが羽根の波動を感知した時も正義が危険な場面だった。
そして今もまた、彼の巧断は崩れる城から主人を守ろうとしている。
すると巧断の口がぱかりと大きく空いた。
その奥で光を蓄えている。
あれはやばい。みながそう直観した。
カッ!
蓄えた光は、莫大な光線となって城を崩した。
「きゃぁっ!」
その衝撃でプリメーラとモコナが吹き飛ばされる。
軽い二人の体は、空中で笙悟とその巧断に受け止められた。
「ぼ、僕はもう大丈夫だから!元に戻って!!」
主の声は届かない。
正義の巧断は口の光線を周囲に散らしていく、止まれと叫ぶ主人の言葉も聞こえないようだ。
「どうなってんだ?あの巧断は」
「羽根の力が大きすぎるんだ。正義君、あの巧断を制御しきれてない」
『どうすれば…っ。』
分かりやすいほどの暴走状態だ。
主人に似て礼儀正しくお辞儀をしてくれて、いつも優しく側にいた姿はカケラも見えない。
歩みは止まらない。このままでは市街地まで出るだろう。
小狼が一歩、前に進み出た。
「どうする気だ。」
「サクラの羽根を取り戻します。」
呼び止めた黒鋼に振り向かずに小狼は言う。
「あのでかいのとどう戦うつもりだ。ヘタしたら死ぬぞ。」
「死にません。」
少年は振り返る。
「まだやらなきゃいけないことがあるのに死んだりしません。」
力強い声。しっかりとした眼差し。
彼が、姫を想う力はそれほど強いのだ。
黒鋼と小狼の視線が交差する。
二人のやり取りを微笑ましく見守っていたファイ。
「ん、分かった。ここは黒ぴーがなんとかするから行っておいで。」
「って!俺かよ!!」
ひらりと手をふる彼に黒鋼が噛み付く。
真面目な空気は一瞬で崩れた。
いつもの空気だ。
『小狼…、サクラが待ってる…。でも小狼も無事に帰って来ないと私やだよ…。』
「…はい。」
ふっと固まったままだった小狼の頬が緩む。
「行ってきます。」
炎の巧断を従えて、少年は強く地を蹴り上げた。
「小狼君は強いねぇ、色んな意味で。」
『どうして彼に炎の巧断が憑いたのか、分かる気がします…。』
小さくなる彼の姿。なんの迷いもなく、飛んでいく背を見送った。
きっと彼は、必ず羽根を手に取り戻すのだろう。
正義君の元へと向かった小狼。
巨大化した巧断の中の探していたものがあるのだと、彼は伝えた。
そして正義君もまた取ってください、と。
小狼君が探してるものなら、と。
苦しくても耐えます。涙ながらに彼は小狼に言った。
セイが顔を上げた先。
巨大な正義の巧断の胸元に向かって小狼ご飛び込んで行く。そこから炎が吹き出すように燃えていた。巨大化した功断の防衛反応だろうか。
火がさらに大きくなったと思った矢先、
ズルリッ
光る何かが胸から抜け出た。
シュルルルルルルルル――…、
正義君の巧断の身体が、空気が抜けた風船の様に小さくなっていく。
落ちていく正義と巧断を、一角獣が背で受け止める。
ポツポツ……
ザァアアアアァ……――。
雨が降った。
降り注ぐ雨が燃える城から火を消していく。
「とりあえず、火事になるのは防げたかな」
笙悟の巧断が降らした雨。
小狼は握り締めた手をゆっくりと開いた。
優しい光が傷だらけの指の間から溢れる。
少年の掌の上には、望んで止まなかったものが乗っていた。
砂漠の姫の羽根。サクラの記憶。…大切な人の大切なもの――。
「やっとひとつ、取り戻した……。」
心からの安堵が零れ落ちる。
琥珀の瞳は、初めて泣きそうな様にも見えた。
一件落着後、小狼は一目散に間借りしている下宿先に戻った。
ファイと黒鋼もその後を追うが、セイは壊された阪神城を錬丹術で直してから追いかける。
追い付いた先で見たのは――…、
「あなた、だあれ?」
「――…っ、」
とても空虚な声で、力のない声だった。
明るくて元気で、それでも気品のあるサクラ姫は、今は羽根となって異世界のどこかへ置き去りにされてしまっている。
きっと、誰もが“こう”なると予想していた。小狼自身でさえ。それがサクラ姫を救う手段を得るために、払った対価だから。
だけど、実際に目の当たりにすると、辛くて…こんなにも苦しい。
「おれは、小狼。あなたは桜姫です。どうか、落ち着いて聞いてください。あなたは、他の世界のお姫様なんです」
「他の…世界?」
「今あなたは記憶を失っていて、その記憶を集めるために異世界を旅しているんです」
「…一人で?」
「いいえ、一緒に旅している人がいます」
「…あなたも…一緒なの?」
「…はい。」
「……知らない人なのに……?」
はい。とそれでも小狼はサクラに向かって笑顔を向ける。
そんな小狼を見ていられなくてファイがバトンタッチしに部屋に入り、耐え切れなくなった小狼は静かに退室する。
「サクラ姫、はじめましてー。ファイ・D・フローライトと申します」
成すがまま。
サクラがぼんやりした目をファイ達に向ける。
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