chapitre.2
夢小説設定
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風の属性のファイの巧断が、彼の身体を浮き上がらせ、城の上に立っていたプリメーラさんのところへ。
『と、飛んだ…っ』
「つくづく何でもアリだな巧断ってのは。」
ファイは初めて巧断を出したのにもうあんなに使いこなしている。
高くて見えないが戦闘が始まったようだ。
彼女の手にはマイクが現れる。
色んな巧断があるとはいえ、そんなものまで武器になるとは思わなかった。
ファンの一人が彼女の巧断も特級だと言った。
マイクだなんてふざけた巧断と思ったが油断しないに越したことはないだろう。
《みんな!元気ーーー♪》
―――!!
プリメーラがマイクを通して叫んだ言葉が、文字の衝撃波となって実体化する。おまけに当たると爆発効果でもあったのか、一直線に飛ばされた文字が大きな音を立てて破裂していった。
『――っ!!』
「ファイさん!」
「良く見ろ」
当たったと思った。
心配する小狼とセイに黒鋼は冷静になれという。
黒鋼に促されよく見てみれば、ファイはいつもの飄々とした態度を崩すことなく、攻撃をかわし続けている。
どれだけの連撃があったとしてもそれは変わらない。笑顔のまま、戦い続けている。ペースの乱れも一切なく。
薄々分かっていたことだけど、ファイさんは強い。先日の黒鋼さんとの戦いとはまた違うが彼も強い。
すごい、と切実に思う。
『大丈夫かなファイさん…、』
「いいからそのまま見てろ」
『黒鋼さん…?』
言葉通り、彼はファイの戦いをただ、黙って見ていた。時にはそういうことも必要だと知っている目だ。
「……。俺も巧断で戦ったことがあるから分かる。巧断で飛べるようになったっつっても、体は元のまんまだ。」
『紙一重で避けているのはファイさん自身だってことですか?』
「ああ。へにゃへにゃしてやがるが、あいつ…戦い慣れてる」
「…そうですね。」
と小狼。
「驚かねぇな。」
「ファイさんの何気ない身のこなしとか、あと…目とか見てて何となくそうかなって。」
「…バカじゃあねぇらしいな。」
「でも、手助けできるならしたいですっ」
「けど、甘くてガキなのは間違いねぇと。」
『ていうか、さっきから物壊しすぎーっ!』
「いやそこかよ。」
まったく違うことに怒る彼女に黒鋼が冷静につっこむ。
プリメーラが技を出す度にファイが避けるので結局その攻撃は周りへと被害が及ぶのだ。
セイはなによりそれが許せない。
『――っ。』
「おい、そこの小娘。」
「何ですかっ。その呼び方。失礼ですよ。」
「すこし落ち着け。バテるぞ。」
『……っ、』
自分でも無意識だった。なのに黒鋼さんの言葉に図星だったのか身体がピクリと反応する。
彼は無関心そうに見えても、何もかもお見通しで…そして痛いところをついてくるのが上手だ。そういうところが、ホンモノの大人らしい。
そういうところを比べるとまだまだ自分も小娘なんて言われても仕方ない子供なのかな、と思ってしまう。
頭上で続く戦いは、大詰めに差し掛かろうとしていた。プリメーラさんの持っていたマイクがスタンドマイクに変化し、文字の動きが大幅に変わり、ファイを襲う。
追尾型、と表現するのが一番近いだろうか。彼女の攻撃はさっきよりずっと手強い。ファイも予想だにしていなかった湾曲した攻撃がよけきれず当たり、落下。
落ちた下が木の上だったのが幸いだ。
「ファイさん!」
『ファイさん、大丈夫ですか!?』
「大丈夫だよー。」
小狼とセイの声に応えるファイさんは、戦い始める前とさほど変化は見られない。けれど、何かを考えている様子はあった。再び浮き上がり、再び戦いへと戻っていく。
「だったら!あたしに!勝たなきゃだめねーー!!」
メロディにのせて歌い続ける彼女の攻撃は、容赦なくファイを追い続ける。
だが、その時ファイは思わぬ行動に転じた。追ってくる文字の上を駆け抜け、そして。
彼女の元へ。
『あれ?どうなったんですか?』
「……勝ったんだろ、ほっとけ」
『え?え?』
文字の上を駆け上がっていった後の、ファイの様子は小柄な身長と立ち位置も相まって、よく見えない。
黒鋼さんに聞けば、呆れたような顔で見上げるばかりだし、小狼も同様なようで緊張感が抜けていない。
何が起こったのか、困惑するばかりの私達が理解したのは、いきなり城の頂点、モコナ達がいる場所に放たれた攻撃だった。
壊れていく天守閣と、落ちていくモコナと正義君。
セイは咄嗟に5本のクナイを手にしたが、錬丹術で二人を助けようにも足場になる地面が遠い。どうしたって間に合わない。
「危ない!!」
『正義君、モコナ!』
「Calling!」
――!!
聞き覚えのある声。
地面に叩きつけられそうな正義君達を救ったのはエイのような姿の巧断を使いこなす予想外の人物。
それは以前小狼を気に入ったと言った、浅黄笙悟という青年だった。そういえば、正義さんが彼について熱く語っていた内容を思い出す。
“町を壊すけれどそれ以外の悪いことはしないかっこいい人”だと。
「何やってんだ?プリメーラ」
「笙悟君!」
さっそうと現れたかと思えば何やらケンカを始めた二人。建物を壊した話をしている時は真面目だと思っていたが。やれ仕事はどうしたから始まり、やれ浅黄君が遊んでくれないだとか、寂しいだとか。
というよりあの二人、よくあの距離感で会話ができるな。それも堂々と自分のファンの前で。
涙を流す彼らを前にしても、彼女は一切動じない。なんとも自由だ。
『いきなり現れて痴話喧嘩ってどういうこと?』
「やれやれー、大変だったよー」
『あ、ファイさんおかえりなさい。怪我してませんか?』
「うん、この通り。なんともないよー」
よかった、と思うもつかの間。
モコナが小狼小狼ー!と目一杯叫ぶ。
呼ばれた方を見ると、モコナの目がめきょ、となっていたのだ。それは羽根が近くにある証拠。
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