chapitre.2
夢小説設定
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「医者いらずだな。」
そう呟いた黒鋼にセイはそうでもありません、と答える。
『元々、錬丹術は医療に特化したものなんです。けれど万能ではありません。』
「……。」
『大地に龍脈という力の流れがあるように、人間の身体の中にも力の流れがあります。流れが止まっているところは治せません。ですから…』
包帯を巻く手を止め黒鋼をまっすぐ見る。
『あまり無茶して大怪我しないでくださいね。』
治せる怪我にも限度がある。
昼間は本当に肝が冷える思いをしたのだ。
「さぁな。」
黒鋼らしい返答にセイも苦笑い。
『それと、』
「まだなにかあんのか。」
『いえ。昼間はありがとうございました。助けてくれて。』
ずっとそれが言いたかった。
しかし素直に受け取らないのが彼だ。
セイの言葉にそっぽ向いてしまう。
「戦いの邪魔だったからだ。勘違いすんな。」
『はいっ。そういうことにします。』
「そういうことじゃねぇ。そうなんだっつってんだろ。」
しょうもない意地を見せる黒鋼にくすくす笑う。
笑ってんじゃねぇ、という彼をなだめながら手当てが終わると、セイと黒鋼も夕飯の支度を手伝いにキッチンへと向かった。
今日の夕飯はきつねうどんと、炊き込みご飯というものだった。美味しかったのであとで嵐さんから作り方教えてもらおう。
* * *
ぐるりと首を回して街を見た。
阪神共和国、三日目。
今日も一同は街に繰り出す。
「みんなやっぱり巧断出して歩いてないみたいだねぇ」
とファイ。
「そうなると、誰の巧断が強いのか分からないねぇ」
『普段からあんまり出して歩くものでもないんでしょうか。』
二人の会話に黒鋼は腕を組んで口を開く。
「もし、どの巧断が羽根を取り込んでるのか分かったとして。そう簡単に渡してくれんのか。」
『ですよね…。』
そこなのだ。
有栖川夫婦の見立てでは、サクラの羽根を取り込んでいるのは強い巧断。
その強い巧断を使役する人間が、果たしてすんなりと羽根を返してくれるのだろうか。
『正直望み薄…ですね。』
「無理だろうな。」
「……。」
さて。ではどうするかと頭を悩ませている一同の横から、
にゅるんっ
見覚えのある中華服の男の子が壁をすり抜けて現れた。
「わっ!」
丁度真近にいた小狼が驚き、そんな小狼に対し、壁を抜けてきた男の子はペコリと頭を下げた。
『あれ、正義君の』
「小狼くーん!」
聞きなれた声が少年を呼んだ。振り返れば正義君がこちらに駆けてくる姿が見える。中華服の男の子は、四人にもう一度お辞儀をしてからその姿を消した。
「探しもの、あの後見つかりましたか?」
ずっと走りながら探していたのか、
膝に手を当て、息を整えながら正義は訊ねる。眉を寄せ小狼は首を振った。
「まだです。」
「だったら、今日も案内させてください!」
「いいんですか?」
「はい!今日、日曜日ですし!」
一日大丈夫です!と胸を叩く正義。その顔は晴れ晴れとしていた。
土地勘のない自分達には非常にありがたい申し出である。
「でも、よくオレ達がいるとこ分かったねー」
ファイの言葉にうんうんと頷くセイ。
「僕の巧断は一度会った人がどこにいるのか分かるんですよ。」
『へぇー!そうなの!?』
あんまり遠いと無理なんですけど。はずかしそうに頭をかきながら正義は語る。その頭にモコナがぴょんと飛び乗った。
「すごいですね。」
「でも…そのくらいしかできないし弱いし…」
『そんなことないよ!十分すごいことだよ!』
目を輝かせた小狼とセイに、正義は少し照れたように頬を染めた。
正義は謙遜するが、正義の巧断の能力は素晴らしいものだ。
人口が密集するこの場所にとっては貴重な巧断とも言える。人当たりの良い正義君だからこそついた能力かもしれない。
なおも謙遜を続ける正義に、モコナも頭の上ですごいすごーい!と手を叩く。
「じゃ、昨日探してない方にいきま……」
キィイイイイイイ――…、
突如、不自然な風の切る音と次いで聞こえた耳鳴りに似た音がした。
正義君を除いた全員が一斉に空を見上げる。
けれど、一瞬間に合わなかった。
「わぁっ!」
「きゃー!」
風を切る轟音と爆風に正義とモコナの体が地上から離れた。
飛んできたのは、巨大な鳥。鳥は大きな嘴で正義の服を咥えると正義君の頭に乗っていたモコナも一緒に連れ去っていく。
『モコナ!正義君!』
正義君の手を取る間もないくらい、あっという間だった。そしてひらりと舞う一枚の紙切れ。
小狼がそれを拾い、慌ててこちらを見た。
「ファイ××、黒鋼××、セイ××、×××!!」
「「!?」」
『え?』
小狼、今何を言ったんだろう。
辛うじて私達の名前を呼んだことだけは理解できた。でも、それ以降は全くもって分からない。いつも丁寧に呼ぶ小狼のことだから、名前の後のほにゃほにゃ聞こえた部分は敬称だったんだろうけどそこさえさっぱりだ。
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