chapitre.2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
黒鋼の退屈していた発言に、後ろにいたファイとモコナはいやいやいや、と手を横に振る。
「黒鋼、さっきまで楽しんでたー」
「満喫してたよねぇ、阪神共和国を」
「うるせぇぞ そこ!!」
『…。』
ごめんなさい黒鋼さん。
私もそんなことないですって言えません。
そんな彼と違って唯一心配したのが最年少のしっかり者・小狼だ。
「黒鋼さん。刀をあの人に…、」
「ありゃ、破魔刀だ。特別のな」
店で一瞬だけ見た銀の龍の拵えが付いた、立派な長刀。
あれかそれ相応の何かがなければ彼の力は存分に発揮できないのではないかと心配になる。
しかし当の本人、関係なく巧断を出した男の元へ歩みを進める。
「俺がいた日本国にいる魔物を切るにゃ必要だが…、巧断は、『魔物』じゃねぇだろ。」
『黒鋼さん…、』
空気が、変わった。
セイは無意識に両手を握りしめていた。
こんな感情、自分でも知らない。
わからない。なんと説明すればいいのだろう。
ただ見ていたい。…漠然とそう思った。
「セイちゃん?」
『…。』
ファイに声をかけられても気づかないくらい黒鋼に文字通り、釘付けになっている彼女を見て、ふっと微笑んだ。
「お前の巧断は何級だ!?」
「知らねぇし興味ねぇ。ごちゃごちゃ言ってねぇで、掛かって来いよ」
黒鋼の態度に、歯噛みした男は巧断による攻撃を始めた。
叩きつけられる尾を軽々とかわす黒鋼の口元は笑っている。
しかし、目はぎらぎらと光らせて。
そこへ家に電話をかけに行っていた正義君が合流する。
「小狼くーーん!」
黒鋼の様子を見る三人の元に正義が走り寄ってくる。
「正義君、あれ知ってるー?」
「この界隈を狙ってるチームです!ここは笙悟さんのチームのナワバリだから…!」
「あの人強いのかなぁ」
「一級の巧断を憑けてるんです!
本人はああだけど、巧断の動きはすごく素早くて…!」
それに、と正義は言葉を切って息継ぎをした。
「蟹鍋旋回(カニナベセンカイ)!!」
男の声に呼応するように、巧断がその身を横に回転させた。
鞭のように横薙ぎに飛んでくる尾。
飛んできた斬撃を、黒鋼は後方に転回する事で避けたその先。―斬撃が、柱を綺麗に切断した。
『――!!』
「切れた!?」
「あの巧断は、体の一部を刃物みたいに尖らせることができるんです!」
あの巧断の攻撃は危険すぎる。
巨大な刃物と生身の人間が対峙しているようなものだ。
「いけいけいけいけーー!!」
巧断の繰り出される攻撃を黒鋼は走りながら避ける。
巧断はその体の大きさから周囲の柱をなぎ倒し、逃げる獲物を追う。
「危ない!」
思わず身を乗り出した小狼。
その肩をファイが引き留めた。
「手出すと怒ると思うよー。黒たんは」
にっこり笑うファイに困惑した小狼は動きを止めた。心配なのは同じ気持ちだが、彼はきっと手を出されると怒るタイプだ。…ものすごく怒ると思う。そして根に持つ。
戦いが並行する中、セイは自分の視界の端で泣く子供を見つけた。
親と逸れたのだろうか。気づけばその子供の元へ駆けて行った。
「セイちゃん?」
『子供がそこにいるんですっ。避難させてきます!』
セイが向かう先でファイと小狼も子供を視界にとらえた。と同時に黒鋼の相手をしていた男が大技を繰り出そうとしていた。
「蟹動落(カニドウラク)!!」
キジャッ!!
巧断の尾が一際早く動いた。
尾はあらゆるものを巻き込みながら、襲い掛かる。
「セイさん危ない!」
「セイちゃん!」
『――っ!』
泣きじゃくる子供を抱えた瞬間、斬撃がセイの元へも飛んでくる。
防御の陣を出す暇がないっ。
とっさにセイは子供を腕の中へ隠し、背中で受け止める覚悟をした。
―ドッ。
『……っ、』
鈍い音がした。
あれ…、痛く、ない?
「おい、」
『あ、黒鋼、さんっ!?』
後ろを振り返るとそこには黒鋼が血を流して立っていた。明らかにかばってくれた、という状況だ。
「邪魔だ、さっさと行け。」
『あ、は、はいっ。』
呆気にとられながらもセイは急いでその場から離れる。そのあとすぐ子供の親とも合流でき、何度もお礼を言われていたセイだった。
「巧断はどうした!見せられないような弱いヤツなのか!?」
己の勝利を確信した男の高笑いが響く。
「―うるせぇ」
瓦礫を踏み鳴らす。
「ぎゃあぎゃあ、うるせぇんだよ」
瓦礫の山から黒鋼が姿を現す。
全身を覆う細かい傷が痛々しい。
しかし、その表情は依然笑っていた。
『黒鋼さん…、』
「セイちゃん危なかったねー、大丈夫だった?怪我してない?」
ファイが気に掛ける。セイは頷いて答えた。
『私は大丈夫です。…でも黒鋼さんが…、』
「黒りんが?」
セイの言葉の先をファイは優しく促す。
『黒鋼さんが、意外だったから…。』
「かばってくれたこと…?」
『はい…。小狼の事、自分は関係ないって言った人なのに、』
もっと薄情な人かと思っていたのに…。
そうではないのかな――。
『それに怪我もさせてしまった…。』
セイの気持ちにファイは微笑む。
「大丈夫だよー。心配ならあとで手当てしてあげようね。最初はいらないって意地張ると思うけど、強気で行けば案外素直になると思うな黒たんは。」
『ファイさん…、』
不安気な顔をするセイに、ね。とファイは優しく笑うのだった。
.