chapitre.2
夢小説設定
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「いっただっきまーす!」
「あってめ!それは俺のだろうが!」
『あの、私のを半分食べますか?』
モコナとお好み焼きを取り合う黒鋼。
二人の様子に気を利かせてセイが声をかける。というかこんな店の中で騒がないで欲しい…。
短い攻防戦の後、黒鋼は一枚、モコナは私の半分を食べるということで一応の手を打ってくれた。
「あぁ?何見てやがる」
じっと見つめすぎたのだろうか。
正面に座る不機嫌な赤い瞳と目が合ってしまった。
『な、なんでもないです。』
意外な一面につい見てしまうなんて恥ずかしくて言えない…。
「さてと、これからどうしよっかー」
「もう少し、この辺りを探してみようと思います」
店を後にした一行は、正義君の案内の元大きな商店街を歩いていた。
「んー。でもオレたちこの辺分かんないから、あんまり遠出できないねぇ」
空ちゃんとこに帰れなくなっちゃうからねー。と言うファイに正義は意を決したように声をかけた。
「あ、あの!どこか行かれるんですか!?」
「はい。」
「場所はどこですか?」
「……分からないんです。探しているものがあって……」
うまく言葉を濁す小狼に、正義はそれでも自分も一緒に探すと街の案内を買って出てくれた。
本当にいい子だなぁとしみじみ思う。
「でも御迷惑じゃ……」
『家の人心配しない?』
「全然!家に電話します!」
ちょっと待ってて下さいねー!と言い残し、少年はどこかへ走っていった。
心なしか、その足取りは嬉しそうに弾んでいるように見えて。
小狼の役に立てるのが本当に嬉しいみたいだ。
「ほんとに憧れなんだねぇ、小狼君のこと」
照れたような表情を浮かべる小狼。
そういえば、とファイは思い出したように店での話の続きを促す。
「話が途中になっちゃってたね。夢を見たんだって?」
「はい。さっき出てきたあの炎の獣の夢です。」
自分を守った一角の炎の獣を、夢で見たと小狼は話す。
「妙な獣の夢なら俺も見たぞ」
玩具屋のショーウィンドウを、興味深げに見ていた黒鋼も振り返ってその話に乗った。
「オレも見たなー、なんか話しかけられたよー。セイちゃんは?」
『多分…見ました…。』
獣の夢。
セイは夢に出てきた赤い鳥を思い出して頷いた。
尾羽が長い美しい鳥だったと思う…。
「『シャオラン』ってのは誰だ!?」
――??
突然の名指しに振り返る。
そこにはずらりと並んだ厳つい格好の軍団が数人。その中でひときわ目立つ少し小太りした小柄な男性。
さっきからちらちら感じていた視線はこいつらか。
はて、まったく見覚えない人達であるが…。
「なんか用かなぁ?」
「笙悟が『気に入った』とか言ったのはお前か!?」
反応したファイに、小太りした小柄な男が前に進みでる。
「だとしたら?」
なおも朗らかな笑みで笑うファイ。
側に戻ってきた黒鋼は男を睨み腕を組んでいた。
「小狼は、おれです。」
「こんな子どもが!?」
正直に前に進みでる小狼。
男は信じられないものを見るように、上から下まで少年を睨みつけた。
「笙悟のチームに入るつもりか!」
「チーム?」
「笙悟んとこはそれでなくとも強いヤツが多いんだ。これ以上増えたら不利なんだよ!」
『そうなったのはあなた自身の問題じゃないの?』
「うるさい!笙悟が認めたんだ。
おまえも相当強い巧断が憑いてるんだろう!
もし笙悟のチームに入るつもりなら容赦しないぞ!!」
「入りません。」
清々しいくらいにきっぱり断る小狼。
しかしなぜかその返答に相手はおぉ!なにかを期待する。
「だったら、うちのチームに入れ!」
「入りません。」
男たちの勧誘に、さっきと同じようにはっきりと断る少年。
「小狼君きっぱりだねー」
「小狼かっこいいー!」
『いっそ気持ちいいくらいだよね。』
外野のこちらは大人しくやりとりを眺めるしかない。
勧誘をにべもなく断られた男たちは、何かを堪えるように拳を震わせていた。
小狼はきちんと事情を説明しようとしたのだが…、
「新しいチームを作るつもりだな!?」
「いえ、そうじゃなくて……」
『なぜそうなるの?』
事情を説明しようともう一度口を開く小狼だったがそれを遮るように、男は全く見当外れなことを喚いた。
男の手が勢いよく小狼に向けられる。
「今のうちにぶっ潰しとく!!」
そういって現れたのは巨大なカブトガニ。
男の巧断だ。
「「でっかいねー」」
『またこんな街中でっ、』
「おれはそんなつもりありません!」
誤解を解こうにも相手は全く聞き入れてくれる様子もなく。さらには攻撃までしかけてくるではないか。
頭を下げた先にある柱を、尾が一閃した。
柱が深く抉れる。
いまのは危険だ。
「聞く耳持たない、って感じだね」
ファイの目が細められた。
危険だからセイを下がらせようと片手で制するがそのファイをさらに同じように片手で制する者がいた。
黒鋼だ。
「ちょっと退屈してたんだよ」
床に落ちた破片を黒いブーツが踏みしめる。
「俺が相手してやらぁ」
『黒鋼さん…、』
好戦的に光る瞳。
愉しげに上がる口角。
こちらにも伝わるほどの高揚感。
この人、強い…―。
思わずぞくり…、と鳥肌が立つ。
これが武者震いというのだろうか。
「ちょっと退屈してたんだよ。」
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