chapitre.2
夢小説設定
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「それは…すごい力だね。」
『はい。母が渡してくれた物です。この首飾りには世界を渡る力が込められています。』
「だけど回数に制限がある。」
『そしてその回数は残り一回。それは私が不老不死の法を得て国に帰るとき。』
「なるほどね。」
「てめぇこそどうなんだよ。」
今度は黒鋼さんがファイに問うた。
「オレ?オレは自分であそこへ行ったんだよー。」
「だったらあの魔女頼ることねぇじゃねぇか。自分で何とか出来るだろ。」
黒鋼さんもそうだがセイにも魔力というものには縁遠い。異世界を移動することがどれほどのものかわからないが自分で行ったのならその次も出来るのでは思う。
しかしそうはいかないようだ。
「無理だよー。オレの魔力総動員しても一回他の世界に渡るだけで精一杯だもん。」
『そう…なんですか?』
「そーだよー。だからセイちゃんのその首飾りを作った人も小狼君を送った人も、黒ちんを送った人も物凄い魔力の持ち主だよ。でも、持てるすべての力を使ってもおそらく誰かを異世界へ渡せるのは一度きり。だから神官さんは小狼君を魔女さんのところへ送ったんだよ。」
「……。」
さくらの記憶の羽根を取り戻すには
いろんな世界を渡り歩くしかない。
それが今、出来るのは
あの次元の魔女だけだから
『……。』
だからお母様はあの方の元へ行けとおっしゃったのね…。
お母様―…。
「ところでさー、セイちゃん。」
『はい?』
小狼越しにファイが尋ねた。
「不老不死の法を探してる理由ってやっぱり聞いても教えてくれたりしないのかなぁ?」
『あ、いいですよ。』
あまりにもセイがあっさりOKしたのでそのことに黒鋼は不満を抱く。
「てめぇ俺が聞いたは関係ねぇってつっぱねたじゃねぇか。」
『だってあの時は初対面で、まさか一緒に旅することになるなんて思いませんでしたし?』
「…。」
『でも今は違います。同じ釜の飯を食う仲ですから。』
セイはそういったがそれでも納得のいく顔をしない黒鋼だった。
「で、どうして不老不死の法なんて探してるの?」
『はい。私のいた国…シン国と言いますが、50もの民族から集まる国家なんです。その中でも私の一族、ラン家は権力なんて無いに等しい弱小一族で…、このままではラン家は滅びてしまう…。ですから不老不死の法を皇帝陛下へ献上して我が一族の信用を得て地位を上げてもらわなければなりません。』
「セイちゃん、皇女だっていってたよね?」
『はい。皇帝陛下は私の父です。と言っても陛下の子にあたる皇子や皇女達は他にもたくさんいて、私が国を出る間際の情報では皇子二十四人、皇女十九人だったかと。』
各民族の首長の娘が皇帝の妾(めかけ)として召し上げられ、皇帝の子を産む。
そうしてシン国が成り立っているのだ。
『…私の母もラン家の代表として皇帝に嫁ぎ、私を生みました。私は皇帝の十一子にあたります。』
「すごーい!そんなにいるのー?」
モコナが黒鋼の上で飛び跳ねる。黒鋼がそれを鬱陶しそうにむぎゅと掴むとセイに言った。
「そんなにいてりゃ跡継ぎに苦労するな。」
『まさにそうです。今、皇帝陛下は病に侵され余命いくばくとまで言われています。おかげで今シンでは各族、覇権争いの潰し合いが始まっています。…なかには嵌められ、滅ぼされた一族もいて、その一族には武術に優れた皇女がいたそうですが流刑にされたと聞きます。…今となっては生きているのかさえ分かりません。』
「それで不老不死の法を探してるんですか?」
と小狼。セイは彼をみて頷く。
「皇帝陛下に不老不死の法を渡すために…。」
『正確には不老不死の法を献上して我が一族の信用を得て地位を上げてもらい、あわよくば私が次の皇帝になるため、です。』
「わぁお。セイちゃんすごいこと考えてるねー。」
『…というのはあくまで出来たらの話でしてっ。女性で皇帝の座に就いたものは歴史上存在しませんし、』
なにせ一族の存亡をかけて今自分は旅に出たのだ。
ただ聞いてもらっただけなのに心なしか胸が軽くなった気がした。
が、ふと黒鋼はあることに気づく。
「もしその方法を持ち帰ったとして今の皇帝が本当に不老不死になっちまったらいつまでたっても自分の座が巡って来ねぇじゃねぇか。」
『はい。ですのであくまで“それらしき物”でいいんです。それで一時的にでも皇帝を喜ばせることが出来れば…』
「あとは力ずくでぶんどるってか?」
『はいっ。』
まさかその問いに肯定するとは思ってなかった黒鋼だったが、意外にも好戦的な彼女の一面をみて無意識に口元を緩めたのだった。
セイからほかにもいろいろ事情を聞いているその時だった――。
「きゃー!」
――!!
突然悲鳴が四人の元にも届く。
事情がのみこめない四人を無視して道行く人たちは逃げ惑う。
何が起きたのかまったくわからないセイは人波に流されそうになり、誰かと肩がぶつかり転びそうになった。
だがそんな彼女を太い腕が支えてくれた。
黒鋼だ。
「流されてんじゃねぇ。つかんでろ。」
『あ、は、はい。』
己の背にかばうようにして支えてくれた黒鋼に対し、セイは意外に思っていた。
『(冷たい人かと思ってたけど…、)』
案外そうでもないのかな…?
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