chapitre.2
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「つうわけでっ、」
朝食後。
下宿屋の玄関に集まった一行。
太陽は完全に登り切った時間。
だいたい8時前くらいだろうか。
教師である空汰さんの出勤もだいたいこのくらいなんだと。走ったら5分で着くんやー、言っていたが。
「部屋の中でじっとしとってもしゃあない。さくらちゃんの記憶の羽根を早よ探すためにも、この辺探索してみいや。」
「「はーい。」」
「『はい。』」
「……。」
各々着ていた服からこの阪神共和国の服へと着替えた。
セイも嵐からブラウスとリボンタイ、フレアスカートとショートブーツを借り、髪も高く結い上げていたのを下ろして三つ編みにされた。本人納得がいかない顔したが嵐が満足そうな顔をするので反論出来ずにいた。
「この国の人っぽいよー、良く似合ってる。」
『納得いきません。とくにこのひらひらしたの…、』
「スカートだよ。女の子はみんなそういうのを履くんだって。」
ねー、とファイとモコナが顔合わせて笑う。
隣では黒鋼さんも慣れない服装に困惑した顔をしていた。
「うしっ。んじゃこれ。御昼御飯代入っとるさかい、四人で仲良う食べやっ。」
カエルの形をしたガマ口財布を最年少の小狼へと渡す空汰。その意図は…
「一番しっかりしてそうやから!」
『……。』
「どういう意味だよ!」
「あははー。」
一番最年少がしっかりしてるように見られる私達って。なんとも情けない…。
小狼もセイもお互いにいたたまれない気持ちになるのだった。
出かける前にひと騒ぎしたあと、セイ達は街中へと繰り出した。
人の多さもさることながら、建物がひしめき合うように立ち並ぶ。
よくこんなに密集して建てたもんだと思う。
そんな景色に明らかに浮いている自分達。
『ずいぶん賑やかですね。都もここまで人はいませんよ。』
「ひと、いっぱーい。」
「でっかい建物と小さい建物が混在してるんだー。」
全てにおいて大きさが違う。
建物もそうだが、川の上に掛けた橋ですら大きい。その橋の上を人だけでなく、大きい鉄の塊(車)も何台も通っている。自分のいた国じゃ考えられないほどだ。
「小狼君はこういうの見たことある―?」
「ないです。」
「セイちゃんはー?」
『私もないです。』
「黒たんはー?」
「ねぇよ!んでもって妙な呼び方するな!」
なぜかファイさんは黒鋼さんだけかわいい名前で呼ぶのだ。彼はそれがすこぶる気に入らないらしい。
いまにもガルル…と唸り声が聞こえてきそう。
すると小狼の頭の上にいたモコナが道行く女の子たちにくすくす、と微笑みを向けていた。
それも何人も。
「笑われてっぞ、おめぇ。」
「モコナもてもてっ!」
「モテてねぇよ。」
『もしかしてモコナ、小狼の巧断って思われたのかな?』
「え?」
「あーなるほどー。空汰さんも言ってたもんねー。モコナ連れてってもこの世界ではありがちな光景だからって。」
たしかに小狼がモコナの巧断だとしたらこれ以上にかわいい光景は無いと思う。
そんな会話をしながら歩いていると、果物がたくさん並ぶ店の前で男性に声をかけらた。
「お!そこのお嬢さん!リンゴ買っていかねぇかい!?」
『へ?りんご、てなんです?』
「リンゴを知らねってかい!?」
セイは初めてみる真っ赤な果物をじっと見つめる。
小狼も自分が知るリンゴとは異なっていたようで同じようにまじまじと見た。
「それリンゴですか?」
「これがリンゴ以外のなんだっちゅうんじゃ?」
ただ販売営業していただけのおじさんも少年と少女の意外な反応にだんだん困惑してくる。
「小狼君の世界じゃ、こういうのじゃなかったのー?」
ファイもリンゴとやらを興味津々。
「形はこうなんですけど、色がもっと薄い黄色で…、」
「ん?そりゃ梨だろ。」
と黒鋼。
「いえ。ナシはもっと赤くてヘタが上にあって…」
「それ、ラキの実でしょー。」
『???』
話しがどんどん混乱してきた。
結局なにが正解だったのか。
しびれを切らしのたがセイでなくおじさん。
いるかいらんか、と言われたので食いしん坊モコナの「いるー!」の一声でお買い上げしてしまったのだった。
人混みを避けるように川の上に掛けられた橋の歩道でファイ・小狼・セイ・黒鋼と並んで買ったばかりのリンゴをかじる。
シャリ…とした食感と甘みのある味にセイは感激する。シン国にはこういう果物はない、と思う。もしかしたら自分の領地だけかもしれないが。
「おいしいねーリンゴ。」
「はい。」
『初めて食べます。』
「そーなんだ。けどほんとに全然違う文化圏から来たんだねぇオレたち。」
リンゴの話もそこそこに、
そういえば…、ファイはみんなに尋ねた。
「まだ聞いてなったね。小狼君はどうやってあの次元の魔女のところへきたのかなー」
セイがリンゴの真ん中の種まで食べようとしていて黒鋼にそこは食うんじゃねぇと言われながらファイと小狼の話を横耳に聞く。
「おれがいた国の神官様に送って頂いたんです。」
「すごいねー、その神官様。一人でも大変なのに二人も異世界へ同時に送るなんて。“黒りん”はー?」
「だからそれヤメろっ。―うちの国の姫に飛ばされたんだよ、無理矢理っ。」
「悪いことして叱られたんだーっ。」
『へー、何したんですか?黒鋼さん、』
「なんもしてねぇよ!」
もはや何かした前提だ。それで異世界へ飛ばすというのもぶっ飛んだ話だと思うが。
黒鋼さんのこれまでの態度をみているとそう思えてくるのは仕方ないのかな?
「セイちゃんはー?」
『私?』
「どうやってあの場所にきたのかな?」
セイは身につけていた首飾りを三人とモコナに見せた。
.