ACT.08
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
すぐ後ろから居るはずのないオンドール侯爵の声がしてヴァンとアーシェ、アルフィナまでもが動きを止めた。
「──なんてな、驚いたろ」
しかしそこには侯爵ではなく、代わりにへんちくりんな編声マイクを持ったバルフレアが立っていた。
「仕事柄、こういうのがあるとなにかと便利でね」
すると再びマイクを口元にあて、
「お前はやめて」
今度はアーシェの声。
バルフレアは編声マイクを元の位置に戻し、呆れたように鼻を鳴らすと一歩近づいてアーシェに言い放つ。
「侯爵に引き渡す」
「待って下さい!」
慌てるアーシェ。
バルフレアは無断でシュトラールに上がり込み、操縦席をいじった事には敢えて何も言わなかった。
「その方があんたのためだ」
バルフレアはシュトラールから降りようとする。
すると、その後ろ姿に向かってアーシェはとんでもない事を叫んだ。
「では─誘拐して下さい!」
『――!?』
アルフィナとヴァンは言葉が出なかった。バルフレアも驚き、足を止めた。
「あなた空賊なんでしょう!?盗んで下さい!私を、ここから!」
「俺に何の得がある」
バルフレアは自分の利益にならない事には手を貸さない主義だとアルフィナは理解していた。だからアーシェの提案にも乗らないだろうと思っていた。
眉を歪ませ、振り返らず背中ごしに返すバルフレア。
「覇王の財宝。“暁の断片”があるのはレイスウォールの墓所なんです」
レイスウォールの名にバルフレアは景気よく口笛を吹いた。
「あの“レイスウォール”か?」
バルフレアはアーシェに振り返り、興奮気味な声を出した。
“レイスウォール”は空賊なら誰でも知り、その墓所に手を出したくなる程の偉人らしい。
「そして君に掛かる懸賞金も跳ね上がる。なにしろ王族の誘拐となれば重罪だ」
『小父様!』
いつの間にかバッシュまでもがシュトラールに現れ、アーシェの提案に反対するどころか、賛成している。
若干楽しげなのは、決して気のせいではないだろう。
「煽った家来も同罪だろうな」
バッシュと顔を合わせ、呆れたように返す。
.