ACT.08
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部屋を出るとアーシェは廊下の窓から景色を眺めていた。心ここにあらず、といった様子で景色が目に映っているかは分からない。
『………。』
なんとなく声をかけられなかった。落ち込んでいる人に何と声をかければいいのか、アルフィナもまた不器用な人であった。
「いつもそう…」
『え…』
どう声をかけようか悩んでいたアルフィナにアーシェが静かに口を開いた。
「いつも私は無力で…、なにも出来ない…」
『……。』
「ウォースラやみんなに守られてばかり…。私はダルマスカを守らなければならないのに…、」
なにも出来ない…、となんとか聞き取れる程の小さな声で呟く。
そんなアーシェの姿を見てアルフィナは以前の…不良をやっていた自分を思い出す。
己の無力に嘆き、希望も見いだせず絶望に暮れる日々。虚しさに叫ぶ気力も無く、下ばかりを見つめ歩く。
『私も…、』
「…?」
『自慢じゃないけど、私もつい先日までは自暴自棄になっていました。父も母も亡くなって、どうしたらいいのかわからなくて。…逃げるように屋敷を出て不良になってケンカ三昧の日々を過ごしてました。』
逃げる場所があっただけ、まだ私の方が幸せだったかもしれない。その逃げた場所にヴァンがいてパンネロがいて。
アーシェには逃げることすら許されなかっただろう。それはすなわち国を捨てることを意味するから。
2年かけてようやく逃げるのをやめることができ、アルフィナは前に進むことが出来た。それは人知れずバッシュのおかげである。
彼の国を想い、誰に後ろ指刺されようとも諦めない姿勢がアルフィナに道を示した。他人と関わる事で初めて人は変わる事が出来る。それをアルフィナは実感したのだ。
『アーシェ殿下。私が居ます。あなたがいつか希望を持って前に進めるよう、力になります。この先ずっと…』
「──…!」
アーシェは俯いていた顔を上げ、アルフィナを見た。
アルフィナは真っ直ぐに、アーシェを見つめ返す。
『私があなたの剣になります。盾になります。バッシュ小父様のようにはなれないけれど…──あなたを守る騎士になります。』
「…あなた、」
『だから1人で背負い込まないで下さい。悔しさも悲しさも苦しみも…私が共に分かち合います。どんなことでもかまいません。私に分けてください。』
影が差したアーシェの表情が少しだけ和らいだ気がした。
儚げであったが、小さく微笑むアーシェにアルフィナは目一杯の笑顔を返す。
『ちょっと生意気でしたね。ごめんなさい、』
「いいえ、ありがとう。少し楽になったわ、」
真剣な顔をしたかと思えば、今度はふにゃり、と不真面目そうな顔を見せるアルフィナにアーシェもくすっ、と笑みがこぼれたのだった。
「…お願いがあるの」
唐突にアーシェはそう切り出した。アルフィナは首を傾げる。
『なんでしょう?』
「協力してほしいの。後で部屋に来て」
なにがなんだかわからなかったが、とりあえずアルフィナは首を縦に振って見せた。ちょうどその時、バルフレアが請求した食事の用意が出来た、とヴァンが呼びに来たので会話はそこで終わった。
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