ACT.25
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「すまない。今のは忘れてくれ。」
『忘れません。』
「――!」
『…もう忘れることは出来ませんっ。』
小さく目を開く。
震える体を見て、てっきり不快な気分にさせたのだとばかり思った。
だが違った。
小父様が伝えてくれた“愛してる”。
いままで感じたことのない感覚が押し寄せる。
初めて異性から“愛している”と言われた。
胸の奥がきゅっと締め付けられるような。でも足はふわふわしていて。
胸のドキドキがずっと収まらない。どうしよう。
『―嬉しいです。すごく嬉しいです私っ』
「アル…、」
『どうしよう、嬉しすぎて涙がっ』
ぽろり。
紅く染まった頬に一粒、また一粒。
強引に拭おうとする彼女の手を優しく取り、溢れる涙をバッシュがごつごつした指で優しくぬぐった。
『でもごめんなさい。私…、』
「いいんだ。君になにかを求めているわけじゃない。」
『小父様…、』
「君が他の誰かを愛していたとしても、君が幸せなら私はそれだけでいい。ただ、せめて君を愛する者として側で守らせてほしい。」
『私、守られるようなやわな女の子じゃないですよ?』
そもそもそんなか弱いつもりはない。守りたい、と言ってくれたバッシュには嬉しさもなくはないがすこし複雑なところもある。
「もちろんわかっている。だが君は…、少々無茶をする癖があるだろう?」
だから余計に目が離せなくなる。
『…。』
そう言われればふいっと視線を反らす。
これは多少なり自覚はあると言っているようなものだ。
バッシュはくっと笑って肩を揺らす。
それを見たアルフィナはようやく緊張がほぐれたのか、バッシュに向かって姿勢を正す。
『私も、小父様に打ち明けようと思います。』
「?」
彼が聞く姿勢を見せる。
すぅと息を吸って吐く。
『私、バルフレアが好きです。』
「…そうか。」
『…、…え、それだけですか?』
「あ、いや。その、そんな気はしていたんだ。」
『んん?』
まさかのばれてた?
もしかしてみんな気づいてる?
瞬間、顔が青ざめていく。
慌ててバッシュがフォローする。
「殿下やヴァンは気づいていないと思うが…、」
『でもパンネロは気づいてます。…というか見られた?』
「何を?」
何を、と問われるとうっ、言葉が詰まる。
ヴァンに聞かれた時もそうだったが。
『その…、ガリフの里で…、』
と、だんだん声が小さくなって気のせいか。身体も縮こまっていっているような気がして。
『こ、告白したところをパンネロと見たみたいで…』
何を話してたのか聞かれ、なんでもないと無理やり誤魔化したのだが。それは彼だからこそ通じた手でもあるといえる。
もちろんヴァンは誤魔化せてもパンネロは女の子。そうはいかない。
あの時そんなことがあったのか、とバッシュは教えてくれたことに嬉しくさと少し申し訳なさも気持ちになった。
なんとなく聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がして。
「それで彼はなんと?」
『返事はもらってません。』
「なぜだ?」
その問いに彼女は少しさみしそうに笑って見せた。
『だって彼と私は生きる道が違うから。今は偶然一緒に旅をしていますが…、』
叶えたい恋じゃないから。
想いが通じても共に生きられるわけじゃない。
その方がよっぽど辛い。
なら一方通行で想っていたほうが楽な気がして。
『小父様が私に想いを告げてくれた気持ち、よくわかります。』
「…。」
想いを伝えるだけなら、知ってもらうだけなら。
『愛情を伝えることは大切なことです。小父様も私も。明日にはどうなっているかわからない身ですから。伝えられるときに伝えるべきだと。』
「そう、だな。そういう時代がいつか終わりがくるといいな。」
職業も家柄も関係なく。好きな人に愛を伝えられて、
当たり前に隣に居られる、そんな時代。
『そうですね。好きな人に好きだ、と気にせず言える世界がくるといいですね。そしたら私、小父様のお嫁さんにしてもらおうー。』
「っ!?」
突拍子もない言葉に盛大にむせた彼。
今まで見たことがないくらい目が大きく開いていた。
そんなに驚くことか、とちょっと悪ふざけがすぎた。
「何を言い出すんだ、君は。」
『だって小父様、私のこと愛してくれてるんでしょう?』
「そうは言ったが…、バルフレアはどうしたんだ。」
数分前に彼が好きだと打ち明けたはず。
一瞬だけ登場した有名な空賊も彼女の前ではもはや過去の存在なのだろうか。
『だって所詮彼も空賊だし?ダルマスカの将軍の方が身は固いと思うのは普通ですよ。』
「意外と現実的なんだな。」
『もちろん彼のことは好きだけど…、』
「…。」
やはり想う相手から他の男が好きだと聞くのは少々堪えるな。返事はいらないと言っておきながら情けない。…これがいわゆる嫉妬というものなのか。
『振られた時は小父様もパンネロと一緒に慰めてくださいね。』
「―!任せてくれ。」
まさかの頼られ方に少々驚くも素直に嬉しい方が勝つ。
いままで以上に距離が縮まった気がしたバッシュであった――。
『そういえば私、ガブラスに啖呵を切ってやったんです。』
「ガブラスに?」
『小父様の名誉も命も私が守って見せるって。』
「……。」
そんなことを言ってくれていたなんて。
最初は驚いた顔をして見せたが、すぐふっと笑みをこぼした。
「では私はそれ以外の敵から君を守るとしよう。」
『お、小父様ー…、』
これは納得いかないときの顔だ。
また頭を何度かぽんぽん撫でる。
――そろそろ約束の時間だ。