ACT.16
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
自由を求める彼女を慰留したのはまさかのフランだった。
「あなたはヒュムに関わらないで。森にとどまり、森とともに生きなさい。…それがヴィエラよ。」
「でも、姉さんだって…、」
「もうヴィエラではなくなったわ。」
そう話すフランはどこか淋しげで。
「森も里も家族も捨て自由を手に入れた代わりに、過去から切り離されてしまったの。…今の私には森の声も聞こえない。ミュリン、あなたもそうなりたい?」
「姉さん…、」
全てを捨てて自由に生きる。それは一体どれほどの決断と覚悟が欲しかっただろう。普段から表情に出さないフランだがきっと想像すらつかないほどの覚悟や葛藤があったことだろう。
悲しそうにするミュリンにフランは彼女の目を見つめて静かに言った。
「いいえ、あなたの姉はもうひとりだけ。私のことは忘れなさい。」と。
その言葉にミュリンはその場から走り去ってしまった。
ヨーテがミュリンの去った方を見ながらフランに話しかける。
「嫌な役をさせたな。」
「あの子は掟に反発している。掟を支えて里を導く立場のあなたより…、掟を捨てた私が止めた方がいいわ。」
ヨーテは後ろにいた側近たちにこの場を去るように目配せをする。
「頼みがあるの。私の代わりに声を聞いて。…森は私を憎んでいる?」
彼女からの頼みに何も言わずヨーテは以前にもやったように、森の声を聞く。
「去っていったお前を、ただ懐かしんでいるだけだ。」
いつもより少し優しい声で、フランにそう伝えた。フランは安心したように息を吐く。
「嘘でも嬉しいわ。」
「気を付けろ。森はお前を奪ったヒュムを憎んでいる。」
「今の私はヒュムと同じよ。…そうでしょう?
―さよなら、姉さん。」
フランは最後にヨーテにそう告げると、先で待つ仲間たちのもとへと戻っていった。
ヨーテはその後ろ姿をずっと見つめていた。
.