ACT.15
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少し道から外れた行き止まり。
何もない空間の前でフランは立ち止まる。
そんな彼女にバルフレアが話しかけた。
「寄ってくんだな。」
「ええ。」
「過去は捨てたんじゃないのか?」
「他に方法がないから。」
フランがバルフレアを振り返った。
「あなたのためでもあるのよ。焦っているでしょう。破魔石がそうさせているの?」
思いがけない相棒の言葉にバルフレアは言葉をつまらせる。
フランは小さく笑った。
「あなた意外と顔に出るのよ。」
2人の会話をアルフィナはつい聞き耳を立て聞いてしまった。
『破魔石……、』
バルフレアも破魔石のことでなにか焦ってるのかしら……
そんなことを聞けるわけもなく、フランがなにも無い空間に向かって静かに指で空虚を撫でる姿をただ見ていた。
「───つまり、どういうこと?」
「こういうことよ。」
追い付いたヴァンを横目にフランは空間をなぞった指をはじく。
するとなにもなかったそこに、突然緑のこけのような道が姿を見せた。
驚き言葉を失った一行にフランが振り返る。
「この森に暮らすヴィエラの力を借りるわ。」
「もしかして、ここってフランの──?」
「今の私は招かれざる客よ──」
言いかけたパンネロの言葉を静かに遮り、道の奥をただ懐かしそうにフランは見つめるのだった。
*
「この先の里にミュリンという子がいるわ。呼んできて。私が行かなくてもあの子ならわかってくれるから」
ヴィエラの住むエルトの里の入り口に足を踏み入れた一行にフランが一番に言った。
エルトの里はゴルモアの森とは違い太陽の光がやさしく降り注ぐ、少し独特の雰囲気を感じられる所だった。
里に入ることを躊躇するフラン。
その思いを理解してか、バルフレアが先立って里に入ろうとした瞬間、アルフィナも残ると言い出した。
「行かないのかよ」と、ヴァン。
『うん。フランが心配だし…
それに少し話したいことがあるの。』
フランと。
その言葉は口にしなかったが、彼女の意図を汲み取ったバッシュが行こう、と一行を促した。
そんなバッシュの気遣いに感謝の目配せをすると、彼は小さく頷いたのだった。
遠ざかるヴァン達の背を見続けるアルフィナがフランの方へ向き直る。
『驚いた?』
「そうでもないわ。なにか私に話したがっていたのは薄々気づいていたから。」
フランはアルフィナを見下ろす。
「話して」
『うん──、』
2人きりの空間で、アルフィナはずっとフランに話しておきたかった。
少し前に起きたリヴァイアサンでのことを。
バッシュしか知らないあの“出来事”を──。
「そう…、そんなことがあったの」
『うん。』
「だから私を遠ざけてくれていたのね。」
『……。』
「人造であれ破魔石がヴィエラに悪影響を及ぼすこと知って」
『ごめん。黙っていても気配に敏感なフランなら気づくと思って話しておきたかった。』
フランを避けていたのは事実。
リヴァイアサンでのフランのことは後日パンネロから聞いた。
破魔石が放つミストがフランの意識を狂わせ、猛らせた…と。
ならその破魔石を人造ではあるが体内に持つ自分がフランに近づくのは良くないと思いに出来る範囲で避けていたのだ。
まっすぐにフランを見れないでいると、ふとヴィエラ独特の長い指がアルフィナの頬を撫でた。ひんやり冷たい彼女の手が心地良い。
『フラン?』
「………。」
彼女を見下ろす目は優しげに細められ、じっと見つめていた。
「私と話したいからと言ったのは本当だけれど、里に住むヴィエラにも影響を与えるかも知らない。……だから私と残った。そうでしょう?」
『……。』
彼女には隠し事は一生出来ない気がしたアルフィナだった。
そんな事を考えていると、フランが爆弾発言をする。
「バルフレアがあなたに惹かれたのもわかる気がするわ。」
『──!ふ、フラン…っ!』
一瞬で私の顔が赤くなる。
そんな様子をフランは小さく笑うだけだった。
すると、フランの長い耳がピクリと動く。
『フランどうしたの?』
「……行きましょう。」
『え、行くって…』
「ここにミュリンはいない。」
そう言うと少し顔を強ばらせてフランは里へと足を踏み入れたのだった。
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