ACT.14
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アーシェ達が集会場に入ると真ん中で焚き火をくべる最長老が顔をゆっくりと上げた。
「わたしはアーシェ・バナルガン・ダルマスカという者です。」
アーシェは礼儀正しく名乗ると灰色にくすんだ暁の断片を最長老に見せた。
「あなた方ガリフ族は魔石の伝承を語り継いでいると聞き、参りました。なにかご存知なら教えて下さい。破魔石についての伝承を…、」
必死にすがるような思いで話しかけるアーシェに最長老は一言も返すことなく、じっくりと暁の断片を凝視する。
ときおり角度を変えてはうなずき、ようやくアーシェと視線を交わす。
「─そなた…、この破魔石を使ったな?」
「!…、わたしではないのです。わたしには扱い方がわからず…」
それで、…と続いた言葉は小さいがそれを聞いた最長老はふむ、と再び頷いた。
「ほう…、使い方を知らんのか。
ならばガリフと同じよの。」
穏やかに語られた言葉にアーシェを含め一行がえ…、と最長老を見た。
「往古、ガリフは神々より破魔石をたまわった。
しかし、ガリフには破魔石を扱えんでのう。
ガリフに失望した神々は石を取り上げ、今度はヒュムの王に破魔石を授けた。
王は破魔石の力で乱世を平らげ、覇王と呼ばれた─……。」
静かに語る最長老の話に口を挟むことが出来ず、ただ聞き入るばかり
そんな一行をよそに最長老はさらに話を続けた。
「奇態なことよ。覇王レイスウォールの血を引くそなたが破魔石を扱えんとはのう。」
「待ってください!では、あなた方は破魔石の扱い方を…っ」
「まことにお恥ずかしい。せっかく覇王の末裔にお会い出来たというに、なにひとつ教えられん。
…もっとも、使い方が分かったとてどうにもならぬよ。」
「!」
焚き火に新たな薪をくべながら、最長老は静かに口にした。
「その破魔石は長年蓄えたミストを放ち、力を失っておる。再び使えるようになるのはそなたの孫子の代かのう。」
最長老からの容赦ない言葉にアーシェは気が遠くなる気がした。
失望が漂う背中をバッシュと2人で見守るアルフィナ。
力を失ったように沈むアーシェを見て、最長老は再び口を開いた。
「力の失せた、うつろなる石──、
飢えておるな。空しさを満たそうとあらゆる力を求めておる。」
今のアーシェには反論出来ない言葉だった。
まさにその通り。
力が欲しいと、
それがたとえどんなに危険な力であってもだ
自分は無力だから。
無力なままでいることが自分には許されないとまるで追い詰められているよう。
意外な展開に誰も口を開けずにいると、新たに集会場に近づいてくる足音が一つ。
一番最後尾にいたパンネロが振り返る。
「ラーサー様!?」
────…………、
「ブルオミシェイスへ?」
怪訝そうな表情のアーシェにラーサーは頷いた。
「明日にでも発ちましょう。護衛が戻るのを待つつもりでしたが、ここでお会い出来た幸運を生かしたいのです。大戦を防ぐためあなたの力を貸してください。」
「───大戦?」
物騒な言葉にアーシェが聞き返す。
ラーサーがアーシェに持ち掛けた話は 、神都ブルオミシェイスへ行き大僧正に会って王位継承者としてを認めて貰い、今にも起こりそうなアルケイディア帝国と反乱軍、その味方をする西の大国ロザリア帝国との戦争を帝国との友好を訴えることで止めてほしいとのことだ。
ラーサーからまさかの提案だったのだが、今のアーシェには火に油を注ぐようなもの。
「友好っ!?勝手なことを…!」
暁の断片が使えないと知ってか、そのことも相まってラーサーの言葉にアーシェは激昂する。
「そちらが攻めてきて、なにもかも奪って…、それを水に流せと!?」
「戦場になるのはダルマスカなんです。ラバナスタを第2のナブディスにしたいんですか!?兄は破魔石を持っているんです!」
アーシェの怒りに物怖じせずラーサーも必死に説得した。
言い返すことが出来なくなったアーシェにラーサーは少し声を落として話を続けた。
「すみません。図々しい話です。血が流れない方法を他に思い付けなくて……、信用出来ないのであれば、僕を人質にしてください!」
そう話すラーサーにアーシェは何も言えず、2人で話していたその場を1人離れて行った。
すぐさまバッシュが後を追い、1人残されたラーサーのもとへヴァンとパンネロが駆け寄る。
少し笑顔を戻すラーサーにアルフィナはほっとするも、戦争が始まるかも知れない現実に身を震わせた。