ACT.13
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
“ダルマスカの人間ではない”
…確かに小父様は自身のことをそう言った──。
「あぁ、私はダルマスカの生まれではない。」
『…ではどこなんです?』
「ランディスという小国だ。今や帝国の支配下にある国だ…。」
『ランディス…』
「あの時は私も若くてな。どうしても帝国に屈することが出来ず、病弱な母と弟を残して国を出たんだ。」
『そう、だったんですか…』
知らなかった。バッシュ小父様の事は平民から将軍になったという事しか聞かなかった。
だが、そのバッシュの出自に少しだけ喜んでいる自分がいる。私と同じダルマスカ人でないことに、気が紛れたのだ。
『その事はアーシェは知っているのですか?』
「あぁ。陛下にお伝えしたからな。」
『私もいつかは話せる時が来るでしょうか…』
「そうだな。今は無理でもいつかきっと…」
アーシェの心が今よりもっと穏やかになれば…。伝えられるかもしれない…──。
「風が湿ってきたな。そろそろ街に戻ろう。」
『はい。』
ギーザ草原に現れた灰色の雲は少しずつ太陽を隠していく。
だがその空とは反対にアルフィナの心は曇り空に太陽の日が少し差し込んだように軽かった───。
──…、
街に戻ったアルフィナとバッシュは2人でバザーの喧騒の中を歩いていた。世界は大きく変わろうとしていても、ラバナスタの雰囲気は2年前から変わった様子など全く見られず。
…逆を言えば2年前はもっと生き生きとした雰囲気が見られたのだが、今では道行く人々の中に俯き歩く人たちがちらほら見られる。
『…変わってしまいましたね、ここも』
「あぁ…、たった2年でこうまで変わってしまうのだな…」
賑やかなのに、どこか物寂しいムスルバザー。
いつからこんな風になってしまったのだろう。そんな事を思いながら、アルフィナとバッシュは隠れ家に向かって歩いた。
*
隠れ家に着き、とりあえず腰を下ろすアルフィナ。その額にはうっすらと汗が滲んでいた。目聡いバッシュがそれをいち早く発見する。
「無理をするからだ。少し横になった方がいい。」
アルフィナは苦笑いを返す。
『大丈夫です。少し疲れただけですから…』
「疲れたのなら休むべきではないのか?」
『…、…怖いんです…。』
ふとアルフィナが表情を変えた。
バッシュは思わず瞠目する。
『眠ると私の中にある人造破魔石が私の意識を奪ってしまうんじゃないか、って…。そう考えると眠るのが怖いんです…。…子供ですよね、』
あはは、と明るく振る舞うつもりが全く出来なくて。だからバッシュ小父様も悲しそうな顔をする。
心配かけたくないのに…
迷惑かけたくないのに…
うまくいかない…──。
するとバッシュがため息をこぼした。呆れられただろうか、とそんな考えがアルフィナの脳裏を過ぎる。
しかし、彼の口から出た言葉は意外なもので。
「君はなかなかの強情だな。私にくらい弱音を吐いてもかまないんだぞ?」
『……?』
「君が抱えているものはとても大きい。それは1人では抱えきれないほどだ。」
彼の言葉一つ一つが胸に染み渡るよう。
頼っていいんだと、面と向かって言ってくれたバッシュ。
暖かく広がる波紋はまるで日だまりのようで。ついすがりついて泣きたくなる。
「そのために私がいる。1人で無理はするな。君に何かあったらスコールにどやされるのは私だからな。」
『!』
最後は冗談を交えイタズラっぽく笑うバッシュ。
アルフィナは心が軽くなった気がした。
『…そう、ですね。お父様、普段は優しいけど稽古の時と怒るときはまるで別人ですから。』
儚くではあったが心からの笑顔にバッシュも微笑みを浮かべるのであった。
.