ACT.13
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「今回の旅も短くはない。最悪一週間掛かる可能性もある。無理をして倒れたりするかもしれない。殿下には私の方から言っておくから…」
『心配性ですねバッシュ小父様は。』
「笑っている場合か。」
少し肩を震わせ笑うアルフィナにバッシュは言い返せなかった。彼女が言った“心配性”というのは自分でも薄々感じていたからだ。
『少し前の私ならたとえ無茶でも旅についていくでしょうね。』
「…やはりあの事を気にしているのか。」
『………。』
バッシュが話に持ち出した“あの事”とは人造破魔石の事である。
その話にアルフィナは顔を強ばらせた。
この先、自分の身体がどうなるか。その不安を抱えて旅をしなければならない。
『誰にも言ってないんですか?』
「私から言う事ではないし、皆に心労をかけさせるわけにもいかんからな。」
『そう…ですか。』
アルフィナはこの事を一生黙っておく気でいる。話した所でどうにか出来るわけでもないし、何かが変わるわけでもないのだから。
バルフレアやフラン辺りは遠からずアルフィナの異変に薄々感づいているかもしれないが、だからといって他人の事を根掘り葉掘り聞いてくるような人でもない。
問題はヴァンとパンネロ、そしてアーシェだ。
だが今のアーシェはアルフィナの異変に気づいてられる程余裕はない。
自分の口から話さなければ、気づかれることもないだろうが。ヴァンとパンネロは何かあったのか、と食いついてくかもしれない。
「他にも心配事がありそうだな…」
『………。』
一番鋭いバッシュには何もかもお見通しのようだ。人造破魔石の事は言っても言わなくても彼にならすぐにバレただろうな、とアルフィナは思った。
『小父様…、もし…もしも自分が、自分の知っている自分じゃなかったら…どうしますか?』
「?…どういう意味だ?」
アルフィナの“なぞなぞ”のような質問に流石にバッシュも首をひねった。
アルフィナは無意識に膝の上に置いた両手を握りしめる。心なしか震えているように見えた。
『私は──、私の知っている私じゃなかったんです…。』
「………。」
『ギースが言っていました。私には“憎き血”が流れていると…』
「“憎き血”…?」
この事はまだ誰にも話していない。自分自身もまだ受け入れられないからだ。だけど、話せば少しは気が軽くなるのでは、と淡い期待を寄せバッシュになら、と話す事を決めたのだ。
『憎き血…、
──帝国の…ソリドール家の血です…。』
「──…!?」
以前、バッシュと数年ぶりに再開したバルハイム地下道でアルフィナはバッシュに「君はダルマスカ人か」と問われた事がある。それにアルフィナは「ダルマスカ生まれのダルマスカ人だ」と答えたことがある。
…あれは嘘だったのかとバッシュの脳裏を過ぎった。
「君は…──」
『あの時言った事は本当です。…いえ本当だと私も、思っていました…。』
「………。」
ギースの話を聞くまでは…。
言いたい事を先に言われてしまったのでバッシュは口を噤んだ。
『数百年前、帝国でクーデターがあったそうです。その時1人の政民が帝国を去ったと…。その人が同時のソリドール家の後継ぎで、後の初代ヴェスパニア──ウィリアム・ルビウス・ソリドールだとギースが言ったんです。』
「そう、だったのか…」
『小父様は父からそのような事を聞きませんでしたか?』
「いや…。たが、私がダルマスカ人ではないと言った時、自分も似たような者だ、と言っていたのを覚えている。あの言葉はそういう意味を指していたのか…。」
誰でも最初は一兵卒から始まる。当時からスコールと気が合ったバッシュはよく彼と話をしていたのだ。ある時、バッシュは自分はダルマスカの人間ではないとスコールに話した。その反応はかなり驚いてはいたが、笑って「おれも似たようなものだ」と言ってのけたのだ。
「ダルマスカ人ではないのか、と聞くと上手いことはぐらかされてしまってな」
『……。?、ちょ、ちょっと待ってください!』
「なんだ?」
『小父様、今ダルマスカ人ではないと…、』
今のセリフの中にものすごい事実が隠れていたのを危うくスルーしてしまう所だった。
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