ACT.12
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咄嗟に手を引っ込める。まだ触れた手に余韻が残っているようだった。
一瞬…たった一瞬体に走った“違和感”は例えようのないもの。
『けほっ…、…バッシュ小父様…?』
「─!?、いや、なんでもない…」
言葉にしようにも浮かんでこない。違和感の正体が何なのか…
そこでバッシュは“ある事”を思い出す。先程、皆と話し合っていた時の事だ。
『ギースは私に人造破魔石を近づけたんです』
その後はあまり覚えていない、と言っていたが…
この違和感はその人造破魔石が関係しているのではないか、とバッシュは考える。
「一つ聞きたいことがある」
『?』
「先程の話、ギースは君に人造破魔石を近づけた、と言ったな。そのあと人造破魔石はどうなった?」
『──っ、』
思いたる節があるのか、アルフィナの顔が強張った。どうやら覚えていない、と言ったのは嘘のようだ。
「あの後どうなったのだ?人造破魔石は…砕けたのか?それとも…──」
『─やめて!!』
「─!」
震え出す身体。呼吸も荒く。
バッシュの言葉を遮り、アルフィナは自らの耳を両手で塞いだのだ。体を縮こませ視界に何も入らないように。
全てを拒絶するように、言葉も、目に映る景色も。
『…言えない…言いたくないっ』
「……。」
先程感じたアルフィナの異変はこれが原因か、とバッシュは直感する。
『認めたくないっ。信じたくない…これは夢よ!だってありえないもの!…私の体の中に…──人造破魔石が埋め込まれたなんて!』
「──…!?」
アルフィナが言った言葉はバッシュを固まらせた…。指一本動かせず、ただ息を飲むばかり。
耳を塞いでた両手で腕を抱き締め、体をさらに縮こませる。怯える彼女の姿がバッシュの目に映った。
「アルフィナ…」
『…っ』
膝に顔を埋めている彼女の側に腰掛け、肩を抱き締めた。体はまだ冷えたまま。震えが腕に伝わってきて、どれほどの恐怖を味わったのかが思い知らせれた。ヴェスパニア家の跡継ぎだからとつい油断してしまう。まだ成人もしていない、民となんら変わりない年端もいかない彼女にとってこれほど酷な事はない。
バッシュはただただ無言で肩を抱き締め、頭を撫で続けた。…それしか、出来ることが思い浮かばなかった…。
『…っ、…こわい…、私死ぬのかな…、死にたく、ない…』
「大丈夫、大丈夫だ。君は死なない。私が死なせない。安心して今は少し眠りなさい…」
『う、ん…』
撫でてくれる手が心地いい。落ち着いたのか、忘れていた眠気が一気に押し寄せてきて、落ちるように意識を手放したのだった…──。
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