ACT.11
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「再びお目通りが叶って光栄ですな、殿下」
んなわけねぇだろ。
…と私は心の中で目の前にいるジャッジ・ギースにツッコんだ。
遡ること、数十分前───、
アーシェと主従の契りを交わした後、魔人が守っていた扉を進むと、その先の台には念願の王家の証─暁の断片─が一同を待っていた。
通路の脇の棚に手を滑らせてみると、埃が目に見える程に溜まっている。ここ数年間で何かを動かした形跡や人が出入りした形跡は見られない。…そのことから見て取れるように、覇王の財宝は召喚獣で間違いないと再認識できた。
その事にますます元気をなくしていくバルフレア。
あの後ろ姿を見て、流石にちょっと可哀想というか申し訳ない気持ちになった。
先頭を歩いていたアーシェが突然立ち止まる。見ると、彼女の体が震えていたのだ。
『どうしたのアーシェ…?』
主従の契りを結んだ私達だが、簡単に言えば昔の関係に戻ったようなものである。姉妹のように、互いに勉強と稽古の時間以外はずっと一緒に遊んでいたあの時のように。
本人が望んだように私は彼女を身分関係無くアーシェと呼び、アーシェもまた私をヴァンやパンネロのようにアルと呼んでくれた。
余談だがレイスウォール王墓に着く前辺りからバッシュも彼女をアルとちょこちょこ呼んでいる。
それはさておき、
前を見つめたまま、アーシェは何かをこらえるかのように両手で口元を押さえた。
まるでそこに“誰か”がいるかのように…。
何を見ているのだろう…、と私も視線をアーシェと同じ先に向けてみた。
同じく、後ろにいたヴァンもアーシェと同じように“何か”を見ていた。
“何か”がゆっくりと振り返る。
『……!』
それは青白い光で姿を成す1人の人…。
あれは…
“ラスラ、様……?”
「ラスラ…」
隣にいた私にも聞こえた。
幻聴でもなければ、たしかにそこにいる“ラスラ様”がいるのだ。
青白い光でかたどる姿はどこか儚げでまるで幻のよう…。
しかし後ろではヴァンが「兄さん…?」と呟いた。見る人によって違うのか…。私とアーシェにはラスラ様に見えた。…だがヴァンには兄・レックスに見えたようだ。
他のみんなには何も見えていないらしい。震えだすアーシェ達を心配そうに見ていた。
ラスラの後を追うように歩き出したアーシェ。愛する夫に手を伸ばしたが虚しく手をすり抜けるだけ。しばらくアーシェを見つめていたラスラは、やがて溶けるように姿を消した。
「仇は、必ず──」
アーシェは中指にはめられたラスラの結婚指輪をなでるように見つめ呟いた。
そしてその手には、暁の断片が握り締められていた…。
『ラスラ様…』
…何故私達の前に御姿を…、
まだこの世未練がおありなのですか…?
心の中で呟いた言葉にラスラは何も返してはこなかった…。
──…、
暁の断片を手に入れた私達は王墓を出た。するとその頭上を聞こえるはずのない轟音が響き、巨大な船影がアルフィナ達を待ち受けていた──。
ここはヤクトだ。飛行石は働かない筈なのに。
徒歩でここまできたアルフィナ達の苦労などお構い無し。
小型艇から降りてきた、たくさんの帝国兵に囲まれたアルフィナ達になすすべもなく捕まってしまったのだった。
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