盲目の錬金術師
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「俺達、ジュドウさんの噂を聞いて一度じっくりと錬金術の話をしたいと思ったんだ。」
「噂、ですか。」
ジュドウさんの声のトーンが少し下がった。
「長年このハンベルガング家に尽くしてきたとか、実力は国家錬金術師に匹敵するとか、お家存亡の危機をその技術で救ったとか、」
「……。」
エドワードはちらりとジュドウの顔色を伺う。
「人体錬成をやった、とか。」
「―!」
エドワードの話に一瞬だけ顔をこわばらせたジュドウだったが、すぐに微笑みを繕う。
「根も葉もない噂ですよ。」
『ですがその根も葉もない噂話の中にまれに真実があったりするのもです。それを調べるのも私たちの仕事ですから…。』
「……。わかりました。ロザリーお嬢様は席を外していただけますか?」
隠し通せる件ではないと観念したのか、ジュドウは話の場を設けてくれるようだ。
「ロザリー。」
「いやだ!鎧と遊ぶ!」
ずいぶん気に入られたのか、アルフォンスは頭の髪飾りの紐を握られていた。
その様子に執事が慌てた様子を見せる。
「行けませんお嬢様っ。お客様は大事なお話がっ。」
「わーっ、頭を引っ張らないでーっ」
アルフォンスが頭を引っ張られたまま右往左往。梃子でも動かぬようすのロザリーにエドワードも諦めた様子で一緒に行くよう促した。
「アルも一緒に行ってやれ。」
「本当!?お屋敷の中案内してあげるー!」
「わー!わかったから頭を引っ張らないでー!」
「お嬢様いけません!」
アルフォンスを引っ張るロザリーと、それを追う執事。
嵐の様な一連に唖然とするサヤとエドワードだった。
ご夫人はさもいつもの事の様で半面呆れた様子を見せる。
気持ちを切り替えて東屋を案内してくれた。
*
本当に広いお屋敷の敷地内。
円形状の池に浮かぶ東屋は草木で屋根を作り日陰を設けた小さなテーブルが一つだけあった。
涼しい風が通り抜けるその場所でエドワードは本題へと切り込む。
「まどろっこしいのは嫌いでね。単刀直入に行こう。…人体錬成やったのか、やらなかったのか。」
『…教えていただけますか。』
「…。聞いてどうします。」
「参考にするだけさ。」
エドワードの答えにジュドウは数秒考える素振りを見せた後、ゆっくりと口を開いた。
「…両の目を“持って”いかれましたよ。」
『やはりその目…。』
「はい。」
「こっちは左足と弟。」
「――!」
まさかの告白にすこし驚いた様子を見せたジュドウはさすが錬金術師といったところか。エドワードの右手にもなにかあったのでは、とすぐに思いつく。
エドワードの右手の袖から機械腕がちらりと見えた。
「これか?これは弟を錬成するのに使った。」
腕の1本をまるで物の1つや2つ、というようなエドワードの物言いに少し悲しくなる。
ただ、お互い大変な思いをしたというのだけは共感できる。
ジュドウはふっと笑みをこぼした。
「お仲間、ですね。」
「いやな仲間だけどね。」
ジュドウの言葉にエドワードも苦笑いする。
その雰囲気に何かを悟ったのか、ジュドウは肩を下ろし、緊張を解いた。
「安心しました。」
「ジュドウ…。」
傍で付き添っていたご夫人が心配そうに彼を見る。
「奥様、大丈夫です。彼らは私をどうこうしに来たわけではありません。」
「……。」
本当に私達が彼をどうこうしに来たと思われていたのだろうか。
ジュドウの言葉にほっと胸を下ろす夫人。
「ほんとに俺達がなにかするって思ってたのかよ。」
『日頃の行いの悪さかなー。』
「んなにしてねぇし。」
『どうかなー。』
「ふふっ。」
2人のやり取りにジュドウは緊張が解けたようで笑みを浮かべた。
「さて。そうと分かれば。腹を割って話せるというものです。何かほかに聞きたいことは?」
その言葉を待ってましたかのようにエドワードは前のめりになって食いついた。
「人体錬成に成功したってのは本当か!?」
「――!、はっはっ、」
「ふふ、エドワードさん、サヤさんももうすでにその結果を見てますのよ?」
『――え?』
「はっ!?」
2人の目が点になる。夫人やジュドウの言葉を飲み込むのに数秒かかった。
「ロザリー。あの子が錬成の結果です。」
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