盲目の錬金術師
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門から屋敷までの距離が遠い。
それがこのハンベルガング家の名門さを語ってるようだった。
「立派なお屋敷だね。」
「錬金術師の2、30人かこっても平気そうだな。」
『それは広さの事を言ってる?それとも経済的?』
「両方!――っ!」
『エドワード?』
エドワードが何かに気づいて後ろを振り返る。だがそこには庭師が一生懸命に植木を剪定しているだけだった。
「なんだぁ?俺達がなんかしたってのかぁ?」
「するって思われてるのかも。」
『はは。日頃の行いってやつ?』
まぁ彼らの行く先々でなにかしらの問題が起きているのは事実なので。何かするんじゃないかと思われても仕方がないのかもしれない。
「なにをするってんだよ。」
「…、あ。」
『ん?』
身体が大きいアルフォンスの陰に隠れて気づかなかったがいつのまにか1人の少女がいて、興味津々でアルフォンスを見ていた。
「君は…、」
「――。全身鎧だわ!変人だわ!」
「!へ、変人って!?」
『誰だろう?』
「なんだこのガキ。」
ショックを受けるアルフォンスをよそに、少女は鎧姿の彼をみて嬉しそうにはしゃいでいた。
「ロザリー!」
『「――!」』
少女の名を呼ぶ声の方を見ると、女性と執事に支えられ歩いてくる男性。
その風貌にエドワード達は一瞬、息を飲んだ。
「エドワードさんとアルフォンスさん、そしてサヤさんですね?」
囁くような静かな声で彼が言った。
「私がジュドウです。」
「俺がエドワード。」
『サヤ・グレイスです。』
「あっちでおもちゃになってるのが弟のアルフォンスだ。」
そう紹介されたアルフォンスは嫌な顔ひとつせずロザリーと呼ばれた少女の遊び相手になってあげていた。
「この通り目が不自由で外に出ないものですから、他の錬金術師の方と話をする機会がなかなか得られません。わざわざ訪ねて来てくださって感謝します。」
ジュドウは右手をエドワードに差し出した。
普段、彼は右手が機械腕のため握手をするのを嫌がるのだが、なぜかジュドウ相手にそのような素振りを一切見せず、迷いなくその手を握った。
その時の感触にジュドウもなにかを悟ったようで。
「堅い手でびっくりしたかい?」
「いえ。そういうわけではありません。」
ジュドウはこの場ではそれ以上エドワードに何かを言うことなく、エドワードの傍にいるであろうもうひとりの存在・サヤにも右手を差し出し握手を求めた。
「はじめまして。」
『突然の訪問、申し訳ございません。』
「いえ、とんでもない。お会いできて幸栄です。あなたも錬金術師なのでしょうか?」
『はい。一応、』
「それはそれは。お若い上に女性で術師とはすばらしいですね。」
『いえ、そんなこと…。』
変な目で見られることはあっても、すばらしいなどと褒められるのは初めてである。
あまり言われることのない言葉に、もごもごしてしまう。
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