盲目の錬金術師
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汚っ…、とアルフォンスから気持ち距離を取りつつサヤが続きを話した。
『あくまで噂だけどな…。本当かどうか確認してきてほしいと。』
「まさか大佐が?」
『いや…、違う。マスタング大佐ではない。』
エドワードは大佐がサヤにそんなことを頼んだのかと思ったのだがどうやら別案件である。
自分を国家錬金術師に推薦して株を上げた時のように、その人物も推薦しようと企んでいるのでは、と考えたようだ。
「ふーん…、その錬金術師の名前は?」
『…ジュドウ。』
ニヤリとエドワードの口角が上がった。
* * *
ポー、と汽車の発車を知らせる汽笛が駅構内に響いた。さきほど買ったチケットを手にサヤは汽車に乗り込む。
空いてる席は無いかと辺りをキョロキョロしていると、一度通り過ぎた視線をもう一度戻した。
…なんだか見慣れた鎧が見えたからだ。
鎧?
まさか、と思いその席を確認すると、やはりというか、まさかというか。
思わずこけてしまいそうになるのをなんとか堪えた。
『~~~っ。なんでこの汽車に2人が乗っているんだ…。』
「いや~、奇遇だね~。」
「わざとらしいよ、兄さん。」
バレバレだから、とまったくフォローする気のない弟・アルフォンスと白々しいふりをする兄・エドワードがそこにいた。
サヤはつい頭をかかえる。
『司令部に行くんじゃなかったのか…。』
「んなもん、とっくに行ってきたに決まってんだろっ。」
「急いできたんだ。この汽車に間に合うように。」
『はぁ…。』
へへん、となぜか威張る素振りをみせるエドワード。
道沿いのカフェでパフェを食べた後、嫌そうに司令部に行かないといけない、といって別れたのはついさっきの話である。
まぁ座りなよ、とアルフォンスが横にずれて席を開けてくれたので、そのまま素通りも出来ず仕方なく同じ座席に座ることに。
『まさかとは思うが、ついてくる気じゃ、ないよな?』
「そのまさか、だ。人体錬成に成功したなんて話を聞いてこの俺が行かない訳にはいかないだろ?」
「興味があるよね。本当に成功したのかどうか。」
「ま、そういうわけだから一緒に行かせてもらうぜ。」
『はぁ…。報告書には書かせてもらうからな。』
「おうっ。」
汽車はハンベルガング家が納める街へ向けて走り出す――。
真っ暗な視界で、元気そうな幼い少女の声が聞こえた。
「ジュドウ!今日ね!学校で身体測定があったの!クラスの女子の中で一番大きかったのよ!」
「それはそれは。大きくなりましたね、ロザリーお嬢様。」
今度は女性の声。
「この子ったらスクールに通い始めてからいたずらばかり覚えて困るわ。誰に似たのかしら。」
「ははっ。奥様に似たのならさぞかし美しくなられるでしょう。」
「ふふっ。」
コツコツ、と2人とは違う足音が近づいてきた。
「ジュドウ様。ご面会の方が来ていますが、お通ししますか?」
「私に面会とはめずらしい。」
「旅の錬金術師だそうですよ。」
「錬金術師…。ぜひ会ってみたいものですね。」
そう囁くように話すのは杖をついた、白髪の長い髪を後ろで束ねるスーツのようなかっちりとした服を身に纏った男性。両目にはくっきりと残るほどの傷跡。おそらくすでに彼の視力は無いのだろう。
「その方の名前は?」
「エドワード・エルリック氏とアルフォンス・エルリック氏、そしてサヤ・グレイス氏です。」
3人はハンベルガング家のお屋敷の門をくぐった…。
バタンと頑丈に閉じられた門。厳重に鍵まで掛けた上になぜかこちらを警戒するような視線が先ほどからびしびしと感じる。
『……。』
「…。はぁ…。」
視線を向けるとすぐに反らされる彼らの仕草にエドワードも肩を落としてため息をついた。
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