砂礫の大地
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「おーい!汽車出ちまうぞー、早く乗れよー。」
「『―!』」
つい2人だけの世界にいたようにはっと現実に戻される。すこしエドワードを恨めしく思いながらも、ウキウキした気持ちを抑えるのに必死なラッセルはなんとか平然とした態度でみんなのもとへ戻る。
『いま行く!ラッセル、それじゃ。』
「あぁ。気を付けて。いろいろありがとう。」
『うん。』
サヤが入り口へ乗り込んだ瞬間汽車が動き出す。ゆっくりと動き出す汽車は徐々にサヤとラッセルの距離を開けていった。
そのまましばらく駅を見ていたがラッセル達の姿が見えなくなってようやく中へと入る。
「なんの話してたんだ。」
同じ席に着いた途端、問い詰めるエドワード。
サヤはともかくラッセルの様子がおかしかったので気になったのだろう。
『手紙書いてほしいって。』
「―はぁ!?おま、それOKしたのかよ!」
『?したけど?』
「サヤ…、」
『??』
なぜか呆れられるサヤ。
絶対こいつ理解してないな、という顔の2人に意味が分からず。
あの状況でラッセルのあの様子では、きっと彼もそういうつもりだったんだと思う。しかし彼女はそれを理解してない。
『え?いけなかった?』
「いけなくはないけど…、」
「男心のわからねぇやつだな…。」
『え?なに?』
「ラッセルはきっと君と“友達以上”になりたいって思ってるんだよ。」
『……。』
・・・。
固まったまま数秒。
アルフォンスが発した言葉を脳が理解した瞬間、サヤの顔が一気に赤くなる。
『え、な…っ、えぇー!?』
あれはそういうことだったの!?
そういえば、今度会ったら伝えたいことあるって言ってたような、言ってなかったような!?
「「はぁー…。」」
『ちょっと!2人してため息つかないで!』
「ま、かんばれよ。」
『なにを!?』
これ以上は付き合ってられないと言わんばかりにバッサリと切り捨てるエドワードであった。
するとアルフォンスが抱えるレモンの入ったカゴの中に何かを見つける。
「…手紙か?」
「手紙?」
「あぁ、なんだろ…。」
『誰から?』
エドワードの目が右左と文字を辿る。
最後の一文を読み終えた時、エドワードの表情が驚きのものへと変わった。
「な…っ!?」
「なに?」
「うわっ!な、なんでもねぇ!」
『ふーん…。』
あからさまに手紙を隠すエドワードにますますあやしさが増す。
「見せて!」
「うわぁ!ダメだ!見せねぇ!」
「見せてってば!」
『狭いんだから暴れるな!』
手紙を隠す兄をしつこく追い回す弟。
狭い座席のなかをぐるぐると逃げ回っていた。
一体あの手紙には何が書かれてたんだろう。
エドへ
いろいろと世話になった
ありがとう
1つ下なのに生意気言って悪かったな
フレッチャーにとってもっといい兄貴になれるよう
エドを見習って頑張るよ
じゃあいい旅を
ラッセル
追伸
“彼女”のこと、俺がもらっても文句言うなよ?
エドとはそんな仲じゃないって本人も言ってたし
「(ちっくしょー…、俺よりでかいくせに年下なんて笑っちまう…。)」
しかもどうやら彼は本気で“彼女”を狙ってるようだ。ちらりと盗み見すれば、当の本人はアルフォンスからレモンをもらい嬉しそうにしているではないか。
別に彼女に対してそんな風に思ったことはないのだが、少なからずサヤが心を許してくれている相手だと自負している。
だからちょっと複雑の気分になるエドワードであった。
* * *
トゥルルル…。
「はい。」
『ラスト。』
「あら。サヤ、そっちはどう?」
電話の向こうはリオールにいるラスト。
サヤは無表情のまま、ゼノタイムであったことを話した。
『ごめんなさい。マグワールを仕留め損ねた。』
「そう…。」
『赤い水の泉で岩に押しつぶされていたから無事ではないと思うけど。』
「別にいいわ。そもそもあまり期待もしていなかったし。ところであなた、今どこにいるのかしら。」
『中央に戻ってきてるけど。』
「“お父様”に診てもらった?」
赤い水に触れたことをラストは気にかけてくれているらしい。そういうところは意外に他のホムンクルスより人間味があるように思う。
『まだ。』
「はぁ。…はやく行きなさい。終わったらエンヴィーの“仕事”手伝って。」
『えー、エンヴィーかぁ…。』
あいつ嫌いなんだよな。個人的に。
むごいし、人使い荒いし。
「あまり待たせるとしつこいわよ。」
『…それはいやだ。』
じゃあお願いね。とガチャンと受話器を置かれたのでラストとの通話は終わりを告げた。
はぁ。ため息がひとつ零れる。
何に対してなのか。“仕事”のことなのか、はたまたラッセルのことなのか。
頭が痛くなる案件ばかりだ。
そういえばエドワードはどこへ行くと言っていたっけ。
『リオールって言ってたっけ?』
しまった。ラストに報告するの忘れたな。
だがさっきの電話はもう繋がらないだろうし。
仕方ない、と諦めサヤは公衆電話から出ると軍司令部に向かって歩きはじめた。
地下の奥深くにいらっしゃる“お父様”の会うために…。
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砂礫の大地
fin.2022/07/07
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