砂礫の大地
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夕暮れ。
エドワードとアルフォンスはゼノタイムの駅に停まっている汽車に乗っていた。
もうこの街を発つつもりだ。
しかしそこには先程まで一緒にいたサヤの姿はなく。
「サヤお姉ちゃんは?」
「一緒じゃないのか?」
見送りに来てくれたラッセルが辺りを見るがその姿は見つけられず。気のせいかだろうか、ラッセルはどこかそわそわしているように見えた。
一緒にフレッチャーとエリサも見送りに来てくれていた。
「電話掛けたいっつってどこか行った。まぁ一緒の汽車には乗るって言ってたからもうすぐ来るんじゃねぇ?」
「それにしても遅いね。もう汽車出ちゃうけど…、」
間に合うだろうか、とアルフォンスは心配する。
「あ!お兄ちゃんこれ、ベルシオさんから。」
「わぁ!ありがとう!」
エリサが差し出したのはカゴいっぱいのレモンだった。柑橘の爽やかな香りがする。
「お兄ちゃん元気でね。」
「また遊びに来てね。」
とフレッチャー。
アルフォンスがエリサとフレッチャーと話してる横でエドワードはラッセルにこの街に留まるのかを尋ねた。
「…下される罰は受ける。ベルシオさんとなら俺の力も役に立つさ。…なぁエド。」
「ん?」
「これからも賢者の石を探すのか?」
「…っ!」
ラッセルがまさかそんなことを聞いてくるとは思わなかった。一瞬考える素振りを見せたエドワードだったが、すぐあぁ、と答えた。
それを聞いたラッセルはすこし気まずそうに話す。
「…赤い石の凝縮法、教えようか…?」
「…!」
「お詫びってわけじゃないけど、…知っておいたほうが、いいと思うんだ。」
いつか2人の旅で役に立つ日が来ることを祈って。きっとラッセルはそう思ったに違いない。
しかしラッセルの思いとは裏腹、エドワードはふっとふっきれたように笑って見せる。
「そんなもの必要ない。自分達で探して見せる。…必ずな。」
その言葉にラッセルも余計なおせっかいだと自覚したようで笑みを返した。
「エドさん、また来てください!いい街にきっとします!」
「そのときはお兄ちゃん、もっと大きくなってね!」
「んなにぉー!!このー、もーかわいくねぇなぁー!」
汽車の窓から腕を突き上げて怒るエドワードにアルフォンス、ラッセル、フレッチャー、エリサは笑う。
『なんの話してるの?』
「あ、サヤ!」
いち早く気づいたアルフォンス。
ようやく駅に訪れたサヤ。
どうやら出発に間に合ったようで良かった。
彼女の姿を見た途端、ラッセルの表情に緊張が走る。
「どこまで行ってたんだよ。」
『エリサのお父さんのお店まで。そこで電話借りれるってベルシオさんから教えてもらったから。』
「もう出発するみたい。サヤも早く乗りなよ?」
『うん。』
サヤが汽車の乗り口に向かおうとした時、ラッセルは咄嗟に彼女の手を引いて止めた。
手を引かれ、身体がカクンとなったのを不思議に思い振り返ると、どこか落ち着かない様子のラッセルが。
『ラッセル、どうしたの?』
「…あの、さ、」
「兄さん?」
いつもと雰囲気がおかしい兄にフレッチャーも首を傾げる。
すこし落ち着きがなく、こんな様子の兄を見るのは初めてかもしれないとフレッチャーは思う。
「ちょっと、いいかな…。その、向こうで…」
『ラッセル?』
「話したい、ことがあるんだ…。」
少し顔を赤くしたラッセル。彼の様子に今度はサヤが首を傾げた。断る理由もないので成すがまま彼についていく。エドワード達から少し離れた場所でラッセルは意を決して彼女を見つめた。
「あの、さ…」
『…。』
目尻をすこし下げ、以前顔は赤いまま言いたいことがすんなり出てこない自分を𠮟咤激励しながらラッセルはちょっとずつ言葉を選んでいく。
サヤは黙って静かにラッセルの言葉に耳を傾ける。
「君が、国家錬金術師で…その、忙しい人だっていうのはわかってるつもりだ…。けど…、」
『うん。』
「その、もしよかったら、て、手紙…書くから返事、書いてくれないかな?」
『手紙…?』
それはラッセルからの予想もしなかったお願いだった。
言い切った彼はなおも頬を赤く染めたまま。
サヤの返事がなく数秒…。
『いいよ。』
「―!?」
恥ずかしいやら照れくさいやら。彼女を直視できずにいたラッセルだったが、まさかのOKにばっと顔を上げた。ばち、と目が合う。
「ほ、ほんとに!?」
『手紙、書くよ。でも…、何を書いたらいいんだろ…。』
「な、なんでもいいさ!その日あったこととか、サヤ自身のこととかっ」
なんでこんなに必死なんだろう、と思うもそれすら今はどうでもいいくらいにラッセルは嬉しかった。心の中でガッツポーズをする自分がいた。
するとサヤは自分の手帳に何かを走り書きし、そのページを破いてラッセルに渡した。
『私もエドワード程じゃないけど、あまり一か所にじっとしてるわけじゃないから。けどだいたいは中央にいることが多い。そこの軍用のホテルにいつも滞在してるからそこへ送ってくれれば受け取れると思う。』
「わかった。」
『すぐに返せない事の方が多いからあまり期待はしないで。』
「あぁ。それでもかまわない。それでその…、いつか中央に行くことが出来たら…君さえよければ案内、してくれないかな。」
今はまだ小さく淡いこの想い。
まだ胸を張って言えないから。
いつか君に伝えることが出来る日が来たその時は。
「次に会えた時、伝えたいことがあるんだ。」
『?、わかった。案内しよう。』
君に抱いたこの想いを…伝えたい。
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