砂礫の大地
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「そんな…、そんなはずはない!これさえあれば国家錬金術師など恐るるに足らんわ!貴様も始末してくれよう!」
マグワールの言葉が癪に障ったのか、エドワードはわざとマグワール前に姿を見せた。これでは大砲のいい的だ。
「兄さん…っ!」
「よく言ったなマグワール。国家錬金術師をなめんじゃねぇ!」
「…っ!死ねぇ!!」
大砲がエドワードを狙い撃つ。
錬成しなおした壁が穴を塞いでいく。穴が塞ぐのが先で砲弾は壁に衝突した。
こちら側にも多少の衝撃はあったが、砲弾が当たったのはマグワール側だった為、やつの方が衝撃が激しく、その振動でマグワールは倒れた。
そばにやってきたエドワードがマグワールを見下ろす。
「わかったか。“格”が違うんだよ、“格”がっ。」
その時だった。
ズズズ…、と地下道が揺れ出したのだ。
これはやばいと瞬時に理解する。
「エド!もういい!出よう!」
ラッセルが叫ぶ。
「兄さん!」
「…っ、」
パラパラと地下道が崩れ、その破片がどんどん落ちてくる。
「渡さんぞ…、この泉は…っ」
『マグワール!』
ここで始末する…っ。
なおも赤い水の泉を独占しようとするマグワールにサヤはトドメを刺さなくては、と近寄ろうとする。
だがそんな彼女をラッセルが腕を掴んで引き留める。
「バカ!ここから出るんだ!これ以上は危険だっ。」
『離してっ、あいつを…マグワールを始末しなくては―っ!』
掴まれた腕を振り払おうとするも掴む力が強く離せない。そのままラッセルに手を引かれ地下道を駆けていく。
遠のくマグワールの姿。赤い水にすがりつく様子が見えたが次の瞬間、頭上に大きい岩が崩れ落ちて来てマグワールを今度こそ押しつぶしたのだ。
聞こえてきた悲鳴に思わず耳を塞ぎたくなるほど。
赤い水の泉を後にし、地下道を逆戻りする一行。
今だにラッセルに手を引かれたまま走るサヤの耳に嫌な音が聞こえた。
『ち、ちょっと待って!』
「「――!」」
それはザザザ…と波のように押し寄せてくる音。その音にまさか…とエドワード達の顔が凍り付く。
「…水だ。赤い水が溢れてくるっ。」
『そんな…っ、崩れ落ちて塞がったんじゃ…、』
「くそ…っ」
パシン…ッ!とエドワードが床に手を着き、通路を塞ぐ壁を錬成した。
「とりあえずこれでもつだろ。」
「ほかの場所は大丈夫かな。」
とアルフォンス。
「…さっきの衝撃だと岩盤の方が危ない。―行こう!」
地下道を抜け、屋敷の外へ出てきたサヤ達は屋敷の上の岩山から溢れる赤い水に驚愕する。
これほどまでに水脈があったとは…。
エドワードが駆け出し、溢れる岩山の周りを一周するように土を盛り上げ、壁を錬成する。
「これで出てくるのが止まれば…、」
溢れる赤い水は錬成された壁で塞き止められ、街へ流れることはとりあえず防ぐことが出来た。だがそれも時間の問題だ。赤い水はどんどん溢れ、どんどん水位が増し止まる気配がない。
『どうしよう…、このままじゃ…っ』
止まることのない赤い水。
フレッチャーは1人、林の木に駆け寄って錬成陣を描いた。
描いた錬成陣に額を寄せて錬金術を発動させた。
フレッチャーの想いに答えるように木々が光を放ち、なんと赤い水をどんどん吸収し始めたではないか。
吸収した木は次々に赤く色を変え、まるで紅葉のよう。
屋敷の周りの木々がすべて赤く色が変わったときには赤い水も出し尽くしたのか、すでに止まっていた。
「木が赤い水を吸収してる。」
「兄さん、こんな木、研究室にもあったよ。」
『赤い水を吸収させて無毒化しようとしてるのか?』
1人で錬金術を発動させていたフレッチャーに寄りそうようにラッセルもその小さな手に重ねた。
「兄さん…。」
フレッチャーの視線に頷いて答えるラッセル。
その2人の姿をエドワードとアルフォンスとサヤは微笑みを浮かべながら見つめていた。
赤い水を吸収し、一段と大きく成長した木々はやがて青く結晶化し小さな光の粒となって霧散する。
それは太陽の光が差し込むことでより一層光り輝いて見えた。この景色が見れただけでも今日の苦労が報われたような気がした。
「やったな、あいつら…。」
「うん。」
『もう、大丈夫だね。』
清々しい顔をしているトリンガム兄弟にエルリック兄弟とサヤもすっきりとした表情で見守る。
こうして赤い水は無くなり、これからはゼノタイムで咳による被害も次第に無くなっていくだろう。
そのかわり金脈の復活はもう完全に望めない。
これからは金に頼らない生活を歩んでいかなくてはいけないのだ。
だがきっとあの兄弟が自分達で道を切り開くだろう。
そう信じて…。
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