砂礫の大地
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翌朝。
無事?疑いが晴れた本物のエルリック兄弟は屋敷へ呼ばれた。
そこにはにこにこへつらい、ご機嫌を取ろうとするマグワールの姿。それが目に見えてわかるのでエドワードの呆れ顔が隠しきれていないのがわかる。
「この度は偽物2人が失礼しました。わたしめもまんまと一杯くわされた口でして。」
『(よく言う…。随分前から知ってたくせに…。)』
エドワードの隣でこれまた呆れ顔で立っていたサヤ。
「この上、ご無礼を重ねるのは心苦しいのですがお2人を当代一の錬金術師と見込んでお願いしたい件がございまして…、」
「“赤い水”の研究か。」
「おぉ!ご存じでしたか。ならば話が早い。…実はちと小耳に挟んだのですが貴殿は賢者の石にひとかたならぬ興味をお持ちとか…。」
マグワールが手にしたのはラッセルから奪った赤い水を凝縮した石。その色さといい、以前目にしたことのある賢者の石と酷似していた。
しかしエドワードはさも興味がなさそうに石を見る。あまりのくいつきのなさにマグワールは焦った。
「ふぅん…。」
「いかがです?赤い水を凝縮したもので、いわば賢者の石の試作品。」
「どうすんだ、これで。」
「わたしはゼノタイムを救いたいのです。金脈を再生出来れば、みな街を捨てずに済む。」
「なるほどねぇ…。」
マグワールのいう街を救いたいという思いは果たして本心なのだろうか…。
サヤはどうも胡散臭い気がしてならないのだ。
「で、偽物は?」
「地下牢に捕えてあります。」
それを聞いたエドワードはおもむろに両手を合わせ、マグワールが持つ赤い石に触れた。するといとも簡単に石は砕け散った。
お金と時間をかけ、苦労してやっと手にした石がこうも簡単に砕けてしまったのがマグワールには衝撃だった。
「なにをするんです!?」
「未完成品に興味はない。偽物の処刑の方が先だ。うそつきは許しておけない質でね。」
「…おぉ。ということは引き受けてくださるので…?」
「俺達にかかればどうってことなはない。それより久しぶりの処刑だ。腕がなるぜ。…見に来るかい?」
『……。』
本物のくせしてその顔はまるで悪人顔。
子供相手なのにエドワードがあまりの形相だったのでマグワールはつい後ずさりをした。
「え!?…、そ、その…、遠慮しておきます…。」
『「(やれやれ…。)」』
兄貴の極悪人の顔に呆れるアルフォンスとサヤであった。
地下牢へは自由に出入りしてかまわないとマグワールに言われたエドワード達は牢屋の前にやってきた。錠は特になく簡単にドアを開けられるようになっていた。
そこには両手に錠をかけられたラッセルとフレッチャーがいた。
ラッセルは両ひざに頭を乗せて顔を伏せるようにしていて、その様子をフレッチャーが心配そうに見ていた。
ギィ…と思い鉄の戸が開く音に2人が顔を上げるとエドワードとサヤ。
そしてアルフォンスがやぁ、と片手を上げて挨拶する。
「アルフォンスさんっ。」
『2人とも大丈夫?』
「ナッシュ・トリンガムはお前達の親父さんなんだってな。」
「「――!」」
エドワードの直球な問いに驚く2人。
「研究を続けてどうするつもりだったんだ。」
「…っ。あれは、父さんの水だ…。研究を続けるのは僕の義務だ。」
『ったく、…バカじゃないの。その赤い水の毒のせいで街の人達がどれほど苦しんでるのか、わかってるのか?』
「…親父さんはわかってた。だから研究を止めようとしたんだよ。赤い水や賢者の石なんかに頼ってちゃ幸せなんか手に入らないんだっ。」
エドワードは2人に近づくと両手を合わせ2人を拘束する錠を壊した。
「前に進めっ。みっともない真似すんな。俺の名を語ったからにはな。…アル、サヤ行くぞ。」
「うん。」
『あぁ。』
枷が外れ自由になった2人。呆然と立ち尽くす彼らを置いてエドワード達は再び研究室を目指した。
エドワード達の心はすでに決まっていたのだ。
自分達がこのさきどうするべきかを。
その頃、研究室ではマグワールがさっきとはまるで別人のようなほくそ笑んだ顔を見せていた。
「…まぁいい。研究さえ成功させれば“あやつら”など…、」
『あやつらってのは…、』
「誰のことかい?」
「―!」
振り向いた先では、地下牢へ偽物を処刑しに行ったはずのエドワード達が立っていた。
ずいぶん戻りが早かったので油断していたのだろう。
「気になることがあってね。赤い水の研究者、ナッシュ・トリンガムはどこに行ったんだ?」
「ナッシュ?…あぁ、研究がうまくいかないので“クビ”にしましたよ?」
『“クビ”ねぇ…、』
「ほぉ…?すべてを知る人間を逃がすほどお人好し、には見えないねぇ。」
裏のある言い方をするエドワードにマグワールも口調が変わっていく。
「…何が言いたいのですかな?」
「人殺しには手を貸さないってことさっ、マグワール!」
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