砂礫の大地
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ドンドンドン!
荒々しく研究室のドアが叩かれる。
鍵を掛けてあるのですぐに破らることは無いが、それも時間の問題だ。
「エドワード様!どうしました!」
マグワールの声がする。
心配で駆け付けたのだろう。…いや、心配なのはきっとラッセルが持つ赤い石なのだろうが。
「何でもない!…手を出すなと言ってあるのに。」
「へっ。信用されてねぇんだな。いっそのこと正体ばらした方がすっきりするんじゃないか?」
「…っ、」
今ここで第三者が現れればエドワードが2人いるこの状況。どちらが本物かなんてすぐにばれてしまう。不利なのはラッセルの方だ。
するとフレッチャーが研究室のドアに錬成陣を描き、木の根のようなものを錬成する。
これで簡単にはドアを開けられない。
「逃げて!早く!」
「―!兄さんっ、」
「あなた達が捕まれば僕達もただじゃすまない!いずれはっきりさせますから!」
『アルフォンス、エドワードと一緒に逃げて。』
「え、でも君を置いて行ったら…、」
『大丈夫。私はつかまったりしない。2人の足手まといにはなりたくなから。行って!』
「ったくっ…。あとで話聞かせろよっ!行くぞアル!」
エドワードとアルフォンスは急いで研究室の窓を割って飛び出し屋敷から逃走した。
あの様子なら捕まることはないだろう。
ほっと胸をなでおろす。
床に座り込むサヤにフレッチャーとラッセルが近寄った。
「大丈夫?サヤさん、」
「悪かった。君をこんな目に、合わせて…」
『…。』
パチンッ!
「――っ、」
「あ…、」
気付けばラッセルに向かって手を振っていた。
サヤが彼の頬を叩いたのだ。
再び呆然とするラッセル。フレッチャーも驚いていた。
『私よりも先に謝罪する相手がいるんじゃないのか。』
「……。」
黙り込むラッセル。
フレッチャーも申し訳なさそうにする。
ラッセルはせめて手当てだけでもと、赤い石を手に取って見せた。
それを見たサヤは顔を強張らせる。
「本当に悪かった…。せめて傷の手当だけでも。」
『やめて!』
「サヤ?」
「サヤさん?」
先ほどとは打って変わって怯えたような彼女の態度。
右腕を抑え込むような仕草をしていた。
赤い石に怯えるサヤ。赤い水は人間には危険だが石にしてしまえば害はないはずなのに。
ラッセルは疑問に思った。
『お願い…。その石を近づけないで。』
「わ、わかった…。」
「こ、これはひどい…っ!」
ようやく研究室の扉が開かれる。
複数の警備兵と共に研究室にへやってきたマグワール。中の惨状をみて一瞬言葉を失う。
「マグワール様。」
「おぉ、みなさんご無事で。石は…石は無事ですか?」
「ご心配なく。ここに。」
ラッセルの手にはさきほどの赤い石。
それを確認したマグワールは落ち着きを取り戻す。
「よくここまで大きくしてくれましたね。…しかしもう時間はありませんよ。あの方法を実行に移してください。」
『あの方法…?』
その言葉を聞いた途端、ラッセルの表情が曇る。
「あの方法でなくても石は…っ」
「んん?私の命令に従えないとでも?」
「い、いえ…、」
「かつて同じようなことを言った男がいました。結局逃げ出した、負け犬がね。」
マグワールは何かの装置を手に取った。
そしてラッセルから受け取った赤い石をその中に入れたのだ。
石を入れた途端、装置が赤く光り出す。
「それは…っ」
「これがあれば錬金術師でない私でも…、」
赤い錬成反応が起こるとその光がラッセルとフレッチャーを捕えたのだ。
『ラッセル!フレッチャー!』
「マグワール様!」
「すばらしい…。本物のエルリック兄弟は金髪に金の瞳だそうです。…ナッシュ・トリンガムの息子達よ。2人を牢屋へ入れなさい。」
『(!やはり知っていたのか…、)』
成す術もなく兄弟は地下牢へ入れられてしまった。そんな2人をサヤは成す術無く、心配そうに見守ることしか出来なかった。
2人が地下牢へ入れられたあと、サヤは地下の赤い水の水脈がある場所へと来ていた。
そこにはラストがいた。
「赤い水に触ったのね。」
『うん…。』
「だから気を付けなさいって言ったじゃない。これが済んだら中央に戻って“お父様”に診てもらいなさい。」
『あんな反応が起こるなんて思わなかった。』
「まぁおかげで参考にはなったかしら。」
『…。』
「なぁに?その顔。」
『別に。』
そう言いつつもむすんとした顔は笑われても文句は言えないだろう。
なんか実験台に使われたような気がしてならない。
気を付けてとは言われたももの、私ならこうなるとラストは予想していたのかもしれない。
…実際、予想通りになったのだが。
すると赤い水脈の所へマグワールがやってきた。
「すべて手を打ちました。後は本物のエルリック兄弟を使って実行に移すのみです。」
「うまくいくかしら。一筋縄でいく相手でじゃないわよ。」
「あんな小僧の1人や2人…っ」
『彼らをあまり“子供扱い”しないほうがいいですよ。』
「え…、」
「まぁいいわ。…わかった。行きなさい。」
「はいっ。」
ラストにそう言われるとマグワールは意気揚々をその場から立ち去る。その後ろ姿を見続けるサヤ。
『いいの?』
「…ここもそろそろ潮時ね。…あとは任せるわ。」
『マグワールはどうする?』
「…始末しておいて。」
ラストはまるで興味をなくしたものを見るような目で去っていくマグワールの消えた場所を見る。
サヤはコクンと頷いた。
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