砂礫の大地
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ったく、とんでもねぇな。」
『エドワード…、』
「こんなもん、俺がぶっ潰してやるっ。」
「そうはさせないよ。」
「――っ!」
振り返ると、赤い石を持ったラッセルが立っていた。
「赤い石はようやくここまで育ってくれたんだ。…父さんはこいつのために自分を犠牲にしたんだ。実験が報われなきゃ、救われないだろ?」
「へっ。そんな出来損ないの石がなんだってんだ。」
エドワードの物言いが癪に障ったのか、ラッセルはおもむろに近くにあったスタンドライトを手に取った。
そして錬成陣無しでスタンドライトを剣に錬成してみせたのだ。
「どうせその剣も偽物だろっ。石ともどもぶっ壊してやる!」
負けじとエドワードもお得意の錬成陣無しで自分の機械腕で剣先を錬成し、ラッセルに突っ込んでいった。
「俺のは本物だぜ!」
「――っ!」
ラッセルの剣とエドワードの剣が交わる。
組み合いになった時、最初は互角かと思ったがやはりエドワードのほうが有利なのか、ラッセルの錬成した剣に亀裂が走る。
しかし完全に折られる前にラッセルは膝蹴りをエドワードに食らわし、彼を吹き飛ばした。
後退した隙にラッセルは背後の扉からなにかを錬成してぴっぱり出した。
それは配管となってラッセルの手元で蛇口のような形になる。
「なにっ!?」
「赤い水だよ。浴びたら最後、気を失うだけじゃすまないからね。」
「上等だぜ!」
『エ、エドワードっ、危険だ!』
「お前ら下がってろよ!」
そう言うとエドワードは剣先に変えていた機械腕を今度は傘のようなものに錬成しなおした。
真っ向からラッセルに立ち向かう気だ。
噴き出した赤い水がエドワードに降りかかる。
「兄さん無茶だよ!」
「…っ!!」
「弟の言う通りだ!帰れ!」
「―断る!」
危険な状態にも関わらず、エドワードは一歩も引こうとはしなかった。彼の中にある譲れない“何か”がそうさせるのだろうか。
「親父のケツ追いかけてるようなやつに俺は負けねぇ!!」
「――っ!」
その言葉が癇に来たのか、ラッセルは赤い水の勢いを強め彼をさらに追い詰める。
エドワードもなんとか持ちこたえてはいたが、床に広がる赤い水に足を滑らせてしまう。
「――っ、」
“浴びたら最後。気を失うだけじゃすまない”
さっきのラッセルの言葉が脳裏を過った。
しかし床に倒れる前にエドワードは誰かに突き飛ばされた。
ドサッ…、と倒れる音がする。
とっさの出来事だったので誰も声が出なかった。
『…っ、』
「お、おまえ…、」
「っサヤ…!」
エドワードを突き飛ばしたのはサヤだった。
黒いコートの中の服が赤い水で真っ赤に染まっていた。
呆然とするエドワードとラッセル。
アルフォンスとフレッチャーが慌てて駆け寄った。
「サヤ、しっかり!」
『だい、じょうぶ…、』
「大丈夫なはずないよ!」
抱き起してくれたアルフォンスとフレッチャーが心配そうにする。
心配かけまいと無理に笑うが、内心身体が言うことを聞かない。特に右腕が。
ふと最初にこの街へ来た時に聞かされたラストの言葉を思い出した。
“その赤い水には触れない事ね。人間にとってはもちろん、賢者の石を有する私達にとっても危険なものだから。”
『(ラストが言ってたのって、こういうことだったんだな…、)』
肌にしみ込んだ赤い水がサヤの身体の中の賢者の石に反応しているのか、身体が思うように動かせないのだ。
そんな彼女の様子にフレッチャーが涙ながらに兄に訴える。
「兄さん!父さんは人々を幸せにするために赤い水を研究してたよね!なのに僕達のしてることは街の人を苦しめることじゃないの!?…兄さんだってそんなことわかってるはずなのに…っ」
「……、」
「サヤさんにまでこんな目にあわせて…、もう手柄なんてどうでもいいじゃないかっ。父さんだって…、父さんだってこんなの喜ばないよ!」
「――っ!」
フレッチャーの言葉が胸に刺さったのか、反論することが出来ないラッセル。
フレッチャーはアルフォンスと約束したのだ。
なにかあったとき兄さんを止められるのは弟のフレッチャーだけだと。
他の人にさせてはいけない。
…でないと、悲しい思いをするから。
自分も、兄も。
そんな時だった。
屋敷中に侵入者を知らせる笛が鳴り響いたのだ。
一気に緊迫する研究室内。
エドワード達がここにいると知られるのも時間の問題だ。
.