砂礫の大地
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イーストシティから汽車に揺られてやってきたとある場所。かつてここは金で栄えた街・ゼノタイム。
金がもたらした富で街は賑わっている…と聞いていたのだが。
しかし一歩、駅から出るとそこは廃れた街の姿。
道を歩く人の姿もまばらで、どこか疲れた様子だ。
金が取れていたというのはもう昔の事の様で、今では金が取れなくなり寂れてしまい、もうずいぶん経ったのが伺える。
そんな街にサヤはある人物に呼ばれてここへ来ていた。
辺りの様子を見たあと、駅を出て街の方へと歩く。
『金で栄えてた、なんて嘘みたい…』
連なる山々の麓に街があり、その丘の上に一軒の屋敷があった。目的の場所はおそらくあそこだろう。
この街を治める主。名をマグワール。
「エリサ!」
「おいみんな!手を貸してくれ!」
『…?』
駅前と呼べるかわからない通りを抜けてすぐのことだった。
通路の角の向こうから大きな音がして、そのあとすぐ誰かの叫び声がした。
何事かと思い、つられて音のした方へ向かった。
『――!』
そこは鉱山への入り口でトロッコ用の線路がひかれていた。問題はその入り口だ。
なんとトロッコが脱線し、その車体が岩に寄り掛かるように倒れ、その下にいた子供を押しつぶしていたのだ。
大の大人が数人かかっても全く動かないトロッコ。
「だめだっ、ビクともしないっ。」
「パパ…っ」
「大丈夫だ!必ず助けてやるからっ」
『どうしたんですか!?』
「―!?」
その様子を見ていたサヤは思わず声をかける。
「娘がトロッコの下敷きに!」
『!』
トロッコの下で泣きじゃくる女の子。
サヤはトロッコの下を覗き込む。
どうやら岩との隙間に挟まっているだけのようで身体はつぶされてはなさそうだ。
『平気?痛いところはない?』
泣きじゃくる女の子に安心させようと優しく頭を撫でる。
「う、うん。」
『強いね。今助けるから、怖かったらちょっとだけ目を閉じてて?』
その言葉に少女はコクンと頷くとすっとまぶたを閉じた。
サヤはチョークで五芒星の陣をトロッコに描き、それと同じものを地面にも描きクナイを刺した。
そこに手をつき、ぐっと力を籠める。
バシィ!!と眩しい錬成反応が辺りを光で包む。
すると、みるみるうちにトロッコが変形し一つの鉄の長方形の塊に変わった。
「あ…、」
「おぉー!」
『立てる?怪我はない?』
「うんっ、ありがとう!」
倒れていた少女の両脇に手を差し伸べて抱き起して怪我がないか確認する。
土まみれではあったが目立った傷もなく大丈夫そうだ。
「錬金術師の方でしたか!」
「娘を助けていただいてありがとうございます!」
『いえいえ、ただの通りすがりですからっ』
「お姉ちゃんありがとう!私、エリサっ。お姉ちゃんは誰?」
『私はサヤ。サヤ・グレイス。マグワールという人を訪ねて来たんだ。』
「もしかしてマグワールさんの研究のお手伝い!?」
『あ、まぁ、そんなとこかな…、』
エリサの言葉にそこにいた大人たちが期待の込めた目で彼女を見る。
一体なににそこまで期待しているのか。
「もしかしたあんたっ国家錬金術師か!?」
『え?あ、はい…、一応…。』
「やっぱりそうだ!エルリック兄弟を手伝いに来たんだ!」
『エルリック兄弟…?ってあの?』
よくわからないまま盛り上がる大人達。
しかし意外なところで2人の存在を確認したものだ。
久しく見ていないと思ったらこんなとこで引き籠っていたのだろうか。
“上”からもそんな話は聞いてなかったのだが…。
「お姉ちゃん?」
『ん?なに?』
「んーん。どうしたのかなって、」
助けてくれたからか、会って間もないのにエリサに随分好かれてしまったようだ。
サヤは優しく少女の頭を撫でた。
『マグワールさんのお屋敷はあそこですか?』
指さしたのは街の奥、丘の上に建つ大きなお屋敷だ。
「あぁ、マグワールさんの屋敷はあそこだよ。エルリック兄弟もそこで研究しているはずだ。」
『ありがとうございます。ちょっと行ってみます。』
「良かったら今度うちへ寄ってくれ。ぜひお礼がしたい。」
『時間があれば伺います。またねエリサ。』
「うんっお姉ちゃんバイバイっ。」
大人達とエリサに別れを告げ、目的地に向かって再び歩いた。
街中を抜けて、丘の屋敷へと続く林の中を抜けていく。時々柑橘系のような爽やかな香りが鼻を抜ける。なにか農園でもしているのだろうか。
結構好きな香りだ。
「ずいぶん遅かったじゃない。」
『――!』
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