第31話
夢小説設定
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自分の意志とは関係なく流れた涙がサヤの頬を濡らす。
『ごめっ…、』
「さぞお辛かったことでしょウ…。」
『ぅっ…、』
涙が止まらない。
次から次へと溢れる。
今になってこんなにも泣いてしまう自分が情けない。
あの日から一度だって泣いたことなどなかったのに。
ぼろぼろ泣くサヤにフーはあたふたするばかり。
「姫…、私は若を探さねばなりませン。一足早く中央へ行きまス。…落ち着かれましたら、みなのもとへ来てくださイ。作戦を講じたいとそうでス。」
『ん、わかった。…フー、気を付けて』
御意、といってフーを後ろ髪を引かれる思いでスラムを出発した。
何はともあれ、早くこの涙を止めなくては。
ハインケル達と離れ、1人深呼吸を繰り返す。
こんな情けない姿、誰にも見せれない。
と思っていたのに。
「サヤ。」
『!』
ビクッと肩が揺れる。
後ろから声をかけてきたのは、スカー。
よりによって一番見られたくない人が来るとは。
確かに、また後でと言ったが。
『(どうしよう…)』
こんな顔、絶対見せられない。
振り返らないサヤを不思議に思ったのか、一歩一歩近づいてくるスカーに慌てて待ったをかけた。
『ちょっと待って!い、いま、顔見せられない…っ』
「……」
スカーはなにも言わない。
気配も感じられないので遠くに行ってくれたか、と気を緩めたその時。
ふ、と視界が陰る。
『…?』
「泣いて、いたのか…」
『…っ!』
声が出なかった。
離れたとばかり思っていた彼が今目の前にいた。
その背丈のせいでサヤの視界が影でさえぎられたのだ。
『わっ…』
泣き顔を隠すようにうつむいた。
驚く彼の表情が見える。
顔を見せられないというのはこういうことだったのか。
まさか泣いているとは思わなかった。
『と、止まらなくて…』
「…なにがあった。」
なにかつらいことでもあったのかと想像してしまう。だが、彼女は首を横に振った。
そうではないと。
では、なぜ。と問う彼にうれしいからだと言った。
『これ、』
「それは…」
『母の、形見。』
「……。」
大事そうに持つそれをスカーにも見せた。
フーがシンから持って来てくれたのだと。
それでか、と彼も納得する。
『私、母の形見を何も待っていなくて。なにも残ってないとばかり思っていたから…。』
うれしいのだと話す彼女の頬をまた一筋の涙が零れる。それを見たスカーが無意識に自分のごつごつした指でそっと涙を拭いた。
彼の思いも寄らない行動にサヤの身体が硬直する。
『…っ』
「……、泣き止んだか。」
『う、うん。泣き止んだ。…というか、ちょっと恥ずかしかった。』
「…っ、」
サヤにそういわれて自分のしたことに気付いた彼はつい顔を反らした。
すこし耳が赤いような気がする…。
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