第41話
夢小説設定
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『誰よりも私のこの虚しさ、悲しみを理解してくれる人だと思ったから…。』
「…そうか。…お前が身勝手で己れを利用しようとしたのなら」
『う…、利用だなんてっ…』
グサッと胸に何かが突き刺さった気がした。
「そのことだって気にはならないはずだ。」
『へ…、』
「己れも、己れの身勝手でここへ来た。それはお前と同じことを思ったからだ。…罪悪感を感じる必要はない。」
『同じ…?』
首を傾げた。
その仕草にスカーはふいっと顔反らす。
少し耳が赤い気がした。
「お前が己れを利用するように、己れの生かされた意味…、お前といれば見つかるような気がする。だから…」
『――…。』
「…共にイシュヴァールへ来てほしい。それが己れがお前を利用する理由だ。」
『…ふっふ、なんかおかしいねっ』
「なにがおかしい。」
うん、やっぱりおかしい。なにがおかしいってもういろいろだ。
おまけに2人とも顔が赤い。
笑うサヤにつられて彼もすこし顔が緩んだ。
「だが、お前がここに居たいのなら無理には言わない。…ここで穏やかに暮らすのも悪くないはずだ。」
『ありがとう心配してくれて。…でも私はこれでもシンの人間よ。シンの者は一度交わした盟約は必ず守る。だから、あなたと一緒にイシュヴァールへ行くわ。』
「…そうか。…イシュヴァールにはマイルズもマルコーもいる。お前が来るのを待っている。」
『マルコーさんも?そっかちょうどよかった。またいろいろ教えてもらおうと思ってたんだ。』
「マルコーに?」
『うん。この国の医学を学ぼうと思って。ねぇスカー…』
「なんだ。」
改めていうのはすこし恥ずかしいが、今のうちに言っておきたいことがたくさんある。
いまなら何でも言える気がするから。
『…ありがとう。』
「…。」
『手紙をくれて、リゼンブールに来てくれて、私を必要としてくれて、イシュヴァールへ連れていくと言ってくれて…』
諦めないでくれて
待っていてくれて
約束を守ってくれて…。
あなたという存在に私がどれだけ救われたか。
伝えても伝えきれない想い。
あなたに会わなければ私はどうなっていただろう。
もしかしたら、エド達の敵のまま滅び去っていたかもしれない。シンを憎んだままこの世から消えてたかもしれない。
あなたが生かされた意味を見つけろと言ってくれたから、いまの私がいる。
涙が零れた。
こらえようとすればするほど、一粒、また一粒と。
「…泣くな。」
零れる涙をいつかのようにそのごつい手でそっとぬぐった。
それでも涙は止まらず。
スカーは自身の左手でサヤの右手を優しく握った。それに答えるようにサヤもぎゅっと握り返す。
「…共にイシュヴァールへ来てほしい。」
『…はい。』
泣きながら笑った。
我ながら忙しいと思う。泣きながら笑うなんて。
ようやく約束が果たせる。
あのとき交わした約束を…。
一緒にイシュヴァールへ行こう。
この先困難なことが起きてもあなたとなら乗り越れる。そんな気がするのだ。
きっと大丈夫…。
私はこの国でこの人と、生きていく――。
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2021/12/26 完結.
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