第31話
夢小説設定
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「姫、少しよろしいでしょうカ?」
『フー?』
ハインケル達とたわいも無い会話の途中でフーがサヤのもとへ来た。
片手には布に包まれた細長いものを携えている。
振り返った彼女にそれを手渡す。
なんの疑いもなく受け取ると、突然フーがサヤの前で跪いた。
『フーっ?どうしたの、』
慌てるサヤ。
後ろのハインケル達も何事かと耳打ちするが、事情を知るジェルソとザンパノが2人にコソッと「実は…」と明かす。
「お嬢はシン国の皇女様らしいぜ。」
「ほんとか、それはっ」
「だから昨日から姫って呼ばれてんのか」
なるほど。と納得した彼らはうんうんと頷く。
「お叱りも覚悟の上でそれをお持ち致しましタ。」
『叱るも何も、これは…』
「母君の剣でございまス。」
『…っ!』
サヤは慌ててその布をめくる。
シュル…と姿を見せたそれは見覚えのあるもので。
幼い頃、これが欲しいと何度も母に迫っては断られたものだ。
「本来ならば姫が成人なさる16歳の時に祝いの品としてお渡しするつもりだったそうでス…」
ですが…、とフーはその先を口にすることが出来なかった。
『もう、何も残ってないと思ってた…。どうしてフーがこれを持っていたの?』
自分には母親の形見も、一族の形見も何一つなかった。
それがとても悲しくて。
髪飾りの一つでもあれば、もっとシンでの事を一つ一つ覚えていられたのだろうか。
「若から頼まれたのでス。あの惨劇のあとマオ族のお屋敷に向かい、なにか形見になるものを見つけてくるようにト。」
『まさか…、リンが?』
フーが頷く。
「はイ。ご安心くださイ。亡くなられた母君をはじめ一族のご遺体はすべてヤオ家の者で手厚く埋葬させていただいておりまス。」
『………っ、』
「その剣も本来であれば、母君のご遺体と一緒に埋葬すべきだったのですが、若が…」
『…埋めるなといったのね…』
リンらしいといえばらしい。
私が生きていると信じてかどうかは定かではないが。
渡すつもりだったのだろうか。
ずっと気になっていた。自分はこうしてシンを追放され、アメストリス国に流れてきたが、亡くなった一族の皆はどうなったのか。
きちんと埋葬されたのか、それとも反逆者として死してもなお、埋められず安息の眠りも与えられていないのか。
『よかった…。みんなちゃんと安らかに眠っているのね…。教えてくれてありがとうフー。あと、この剣も…。』
「お咎めは…」
『そんなのないない。』
ぎゅっと母の形見の剣を抱きしめる。
嬉しさが込み上げてきて、ほほ笑んだ。…つもりだったのだが、
「姫…」
『あ、あれ…』
つ、と雫が頬を流れる。
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