第41話
夢小説設定
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『……。』
「……。」
…何から話そう…。
自分から話がしたいと誘っておいて、一体何から話せばよいのか。
何度も口を開いては、言葉が出ず、また閉じる。その繰り返し。
いつもの散歩コースの道を歩く。石垣の向こうにはどこまでも広がる草原。
リゼンブールの穏やかの風が2人を包んだ。
「いいところだ。」
『え?…あ、うん。』
意外にも彼の方から会話を切り出してくれた。
サヤに気を使ってか、本当にそう思ったのか。
『私も初めてここへ来たとき、すごく穏やかな気持ちにさせてくれたの。あの殺伐とした生活の中で…、久しぶりの感覚にさせてくれたのを覚えてる。』
「…そうか。」
そういってサヤに見せたスカーの表情はとても穏やかなものだった。
見たことのない表情だったのでサヤも思わず胸がトクン…となる。
あぁ…やっぱり私はこの人のことが…。
ぎゅっと胸元を握りしめる。
『聞いても…いい?あのあとあなたがどうしてたか。ラジオでマスタング准将がイシュヴァール政策を進めてくれているのはすこし聞いたのだけれど…。』
「…あの後か。…あの戦いの後、己れは女将校に匿われ傷の手当てを受けた。そしてマイルズから共にイシュヴァールへ行かないかと誘われたのだ。」
『マイルズってたしか北方軍のマイルズ少佐?』
「あぁ。文化の死は民族の死だ、と。己れの手でイシュヴァールを救え、とな。」
『そっか。…帰れたんだね、イシュヴァールに。良かった…。』
「お前も…」
『ん?』
歩みを止め、こちらを向く。
身長差から彼を見上げた。
この顔は見覚えがある。
なにか言いたいのにうまく言葉にできないときの顔だ。前にも見たことがある。
「…、…今でもイシュヴァールに行きたいと思っているのか…?」
『私は…、…身勝手な人間なの。イシュヴァールには行きたい。それは本心。…でもそれはただの自分勝手な理由で…、本当はその…』
「……。」
以前、離れて行動をしていた時があった。
その時改めて思ったのだ。彼と少しでも長く傍に居られれる方法を。
イシュヴァールの人達の役に立ちたい、救いたい。その気持ちに偽りはない。ただそれはあくまでも言い訳に過ぎない。
イシュヴァールに一緒に行こうと言えば彼も必然と断る理由もない気がして。
今だから白状する。完璧な下心だ。
くっと顔が熱を帯びていく。
『そうすれば…あなたと一緒に居られるんじゃないかと思って…。戦いが終わった後も…』
「お前…、」
『初めてあなたと会った時、私本当は少し嬉しくて、安堵したの。…自分と似たような人がいることに。自分ほどの憎しみを抱くことが異常なんかじゃないと、何かを壊したい、滅ぼしたいほど憎む人が自分以外にもいることに…。ごめん、全然同じじゃないよね。』
「シンを滅ばしたい…か。」
『い、いまはもう思ってないよそんなこと…。忘れることは出来ないけれど…』
「己れも同じだ…。」
『え…、』
そういってスカーはどこか遠い空を見上げた。
2年…、サヤの顔つきが変わったように彼もまたすこし表情に変化が見られたような気がした。
「お前と同じだ…。あの日の事を決して忘れることは出来ん。この先ずっとだ…。」
『スカー…、』
「だが何故そこまで己れに…、」
こだわるのか、というのは少し自意識過剰のような気がして言えなかった。だがサヤはわかってくれたようで少し頬を赤くして答えた。
『勝手かもしれないけど…、わかって、くれる気がしたから。あなたは誰よりも私に近い人だから、共感…ていうのかな…。』
似ているから、同じだから。
大切な家族を失った、奪われた者同士。
もちろんエドやアル、ウィンリーも自分にとって大切な人達だ。…だが彼らとスカーは違う。
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