第41話
夢小説設定
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「わんわんっ」
『誰か来たの…?』
機械鎧の看板の前で立ち尽くす人がいた。
来客に気づいて玄関に向かったのか。
吠えていたデンだったが、何故かおすわりしてしっぽを振っている。
来客に興味津々の様だ。しかしあのデンが一瞬で懐くなんて珍しい。いつもはちょっと距離を置く癖に。
『お客様かな?いらっしゃい…ませ…』
「!…、」
来客者は突然現れたサヤに驚いた様子で立ち尽くし、一言も発することなくこちらを凝視している。
サヤ…
『―……っ、』
何、今の…、
ふいに頭の中で男の人に呼ばれた気がした。
その声がとても懐かしくて、愛おしくて。
とても大切だった…はずの声。
「サヤ…、」
『あなたは…、』
突然姿を見せた彼女。
心の準備なんてものをする間もなく現れたこともそうだが、なによりも以前会った時より大人びた姿に2年の歳月を感じ驚く。
少女という言葉から女性、という表現が相応しい姿へと変貌していた。
『あ…、』
一筋の涙が流れた…。
溢れる涙が、雨のように零れていく。
この胸を締め付ける想いは一体何?
私の、思い出せない記憶の中の声と同じ声で目の前の彼が私の名を呼んだ。吐く息が震えだす。
唐突にずっと霧がかかっていた頭の中がすぅと晴れ渡っていく。同時に溢れるように思い出す記憶の数々。所々だった記憶が一冊の本のページのように順番に並び繋がっていく。
そして最後に思い出したのが、どうしても思い出すことが出来なかった一番大切な人。
その人が今、目の前にいる。
喋りたいのに喋れない。
触れたいのに身体が動かせない。
言葉が見つからないのだ。
何から話せばいいのか。
お互い固まってしまったまま数秒、彼が口を開いた。
「…、…何故、」
『…っ』
ぴくんと身体が反応する。
「…濡れている?」
『…あ。』
一気に恥ずかしさが込み上げてきた。
デンをシャンプーした時の水が頭にかかったままの状態で玄関まで出てきたものだからびしょ濡れの姿を見事見られてしまったのだ。
『こ、これはっ、その…っ、デンをシャンプーしててそれで…』
「……、デン?」
「わんっ。」
僕です、と言わんばかりの返事をする足元に引っ付いている犬。
なるほど、と納得。
そしてもう一度サヤを見て恐る恐る彼が尋ねた。
「…、己れが、わかるか?」
『あ、うん。アルから聞いたのかな?…思い出したよ、今…、忘れてた事全部…。』
「…そうか。元気そうでなによりだ。」
『うん…、ごめんなさい。2年も待たせてしまって…』
「気にするな。」
あの時はまさかこんなにも時間がかかってしまうとは思ってもいなかった。あの戦いが終わればともにイシュヴァールへ行けると信じていたのだ。
「サヤー、デン吠えてたけどお客さん来たの?」
『ウィンリー。』
ドアを開けて出てきたのは、こちらも少し大人になった見覚えのある娘だった。看板の前で立ち尽くす人物を見てピタッと動きが固まる。
そしてふっと優しく笑みをこぼす。
「スカー…、やっと来てくれたのね…。」
「…。」
『ウィンリー、少し2人で話がしたいんだ。デンのことお願いしてもいい?』
何かを悟ったのか、ウィンリーはサヤの持つタオルを受け取るといってらっしゃいとだけ言うと手を振って2人を見送った。
『…行こう。』
「あぁ。」
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