第40話
夢小説設定
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数か月後――…。
リゼンブール
『羊だっ、羊がいるっ。』
「そりゃ田舎なんだから羊の一匹や二匹…」
「兄さん、それ前にも言ってたよ。」
「…そうだっけ?」
エルリック兄弟とサヤは久しぶりの故郷リゼンブールに帰ってきていた。
「どうだ?見覚えあるか?」
『んー…、よくわからない…。でも不思議と懐かしい、気がする。たぶんだけど。』
「そっか。…大丈夫か?」
後ろの方でへばっているアルフォンスを見る。
駅に着いた途端、一目散に駆けていくサヤの後をエドとアルがゆっくり追いかける。
辺りをキョロキョロさせているサヤ。
はっきりと覚えはないものの懐かしいと言ったサヤの言葉に少しずつではあるがエドは彼女が回復方向へと向かっている気がした。
『アル、大丈夫?』
「こんなに筋肉が衰えてるとは思わなかったよ…。」
『やっぱりまだ退院するべきじゃなかったのよ。どう見たってまだガリガリじゃない。』
「はは…、」
初めて会った時より肉付きは良くなった方だが、それでも長旅をするにはまだまだ頼りないくらいだ。
サヤとも数か月共に過ごしているので、彼らとの記憶は微かだが2人のことをエド・アルと呼ぶようになった。それだけ聞けば誰が彼女に記憶がないなんて思うだろうか。
「おぶってってやろうか?」
「いや、いい。…自分の足で帰る。」
それだけでエドは弟の気持ちを汲み取ったのかそれ以上なにも言わなかった。
「ボクはゆっくり帰るから兄さんとサヤは先に帰っててよ。」
「いや。…一緒に家を出たんだ。一緒に帰るさ。…いいだろう?サヤ」
『うん。私の事は気にしないで。周りの景色もゆっくり見ていたいし』
「ありがとう。」
アルはもう一度立ち上がると、ウィンリーが待つ家に向かって歩きだす。
一歩ずつ、一歩ずつ。
鎧の足で歩いた道を、今度は自分の足で歩く。
砂利の感触や、上り坂、吹き抜ける風。
あの時感じなかった事が今では当たり前のように身体に響いてくる。
どれほどこの感覚を待ち望んだことか。
まっすぐな石垣の道を3人で歩いた。
気のせいかな。
こんな道を前にも歩いたような。
『…前にもこうして誰かと歩いた気がする…』
「…それって兄さんと2人で母さんのお墓参りに行ったときじゃない?」
『…そう、なの?』
「そういやそんなこともあったっけ。」
「あのあとの兄さん、なんかおかしかったの覚えてるよボク。」
ケラケラ笑う弟に兄はギクリと肩を揺らした。
どうやら彼も覚えているようだ。
「結局原因はなんだったの?」
「べ、別になんでもねぇよっ。」
『…?』
まさか、初めてサヤの笑った顔に驚いたなんて言えるわけもなく。
からかわれる兄と弟との言い合いを尻目に、リゼンブールの自然の風を満喫するサヤであった。
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