第40話
夢小説設定
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「あの娘…、サヤはどうなった…。無事なのか。」
「ふむ…、確か軍の医療機関に収容されたと聞いたが。…それがどうした?」
「…ともにイシュヴァールへ行くと約束をしたのだ。」
「あの娘とか?」
意外そうな反応を見せたオリヴィエだったが、そのあとすぐに何かに納得したような素振りを見せ、軍服のポケットから何かを取り出しスカーに手渡した。
それは一通の手紙だった。
「…なんだ?」
「アルフォンス・エルリックからだ。お前に渡すよう頼まれていた。」
「アルフォンス・エルリック…、」
その名前にスカーの脳裏に鎧姿が浮かび上がる。
わざわざ自分に手紙を寄越すとは、いったい何事だろうか。
差し出された手紙を受け取り、開封する。
手紙にはサヤのことについて記されてた。
今、彼女は記憶を無くしてしまっている。
僕達兄弟を助ける為にサヤが選んだことだ。
サヤが無くした記憶は兄さんが対価を払ってすでに取り戻してはいるけれど、一度無くした記憶がすべて元に戻るのは時間がかかるらしい。
それまで彼女のことは、僕達が出来ることを精一杯サポートしていこうと思う。
しばらくは僕達の故郷リゼンブールで知り合いの家で面倒みるから安心して。
いつでも会いに来てくれたらいい。
きっとサヤも待ってる。
最後に同封している紙はサヤが記憶を無くす前に僕に託したスカーへの伝言だ。
手紙はそこで終わった。
紙…、と言われた通り同封されているくしゃくしゃの紙切れを見付け、中身を開いた。
「――…っ。」
少し遅くなる。
先に行って待っていて欲しい。
必ず行くから。
イシュヴァールへ。
「……。」
記憶を無くす瞬間も自分との約束を気にしてくれたことがスカーは嬉しくなった。
と、同時に迷っていた心も決まる。
視線を手紙からマイルズ少佐に切り替える。
「…イシュヴァールへ連れて行ってくれるか、マイルズ。」
「うむ。」
スカーの返答にマイルズは満足し、オリヴィエもしてやったり、と企みのある笑みを浮かべた。
軍人なのにその笑い方はまるで極悪人のようだ。
「ふっふ…、マスタングめ。スカーが生きていると知ったら肝を冷やすだろうよ。」
時に、とオリヴィエが振り返る。
「貴様、本当の名はなんと言う?」
「…己れは二度死んだ。この世にはいない人間だ。名は無くていい。好き呼べ。」
「…そうか。また会おうイシュヴァール人よ。」
そういってオリヴィエは笑い、長い髪を揺らしながらマイルズとともに部屋出ていく。
どういった経緯でサヤが記憶を無くしてまであの兄弟を助けようと思ったのかスカーにはわからないが、とりあえずサヤがリゼンブールにいるというなら安心だろう。
スカーはもう一度サヤが書き残した手紙を見た。
先に行って待っていて欲しい、か…。
ならば気長に待つとしよう。
いつになるかわからないが、それすらも悪くないと思えてしまうはなぜだろうか。
ふっ、と小さく笑みを浮かべるスカーだった。
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