第39話
夢小説設定
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数秒の沈黙の後、リンはなには吹っ切れたようなあきらめたような。そんなため息をつく。
「わかっタ。…ただ、ひとつ言っておク。」
『…なに?』
もし。
もし、この時私にすべての記憶があったなら、このあとのリンの発言を聞いた瞬間彼の顔面に拳が飛んでいたことであろう。
「俺はお前を諦めていなイ。正妃の座は空けておくからいつかシンへ帰ってきてくレ。俺はいつまでも待つから…。
…マオ家の血筋が消えてしまうのも忍びないしナ?」
『――…。』
「せ、正妃っテ…っ!リン・ヤオっ!」
リンの言葉に固まってしまったサヤの代わりにメイが顔を赤くする。
“正妃”という単語にピンと来ていないその他の人達は首を傾げるだけ。
「メイ、正妃ってどういう意味?」
「アルフォンス様…、正妃とはつまり“妻”のことでス!皇帝の妃の中でも最上位の地位を指しまス。リン・ヤオったら…まだ皇帝の地位に就いてもいないのニ…っ。」
「えぇーー!それっていわゆるプロポーズっていうやつじゃ…」
「おいリン、いいのかよそんなこと言ってっ」
「俺は本気だぞエド。」
意味が分かった途端、エド達もメイ同様すこし顔を赤くする。しかしその反面、エドとアルの頭の片隅ではある人物が思い浮かんだ。
サヤってスカーのこと、好きなんだよな/ね…。きっと…。
んー…、と微妙な顔をして見せる2人に今度はリンがなにその顔は。と不安そうになる。
「まぁ、がんばれよ。」
「う、うん。こればっかりは僕らが口出しすることじゃないしね。」
「なにすげー気になるんだけド。」
「アル様?…わっ!」
アルを見上げていたメイは不意にリンに脇に抱えられる。驚いてジタバタするが、メイの足のケガを気遣ってのことだったようで。
下ろしなさい!と暴れるメイをスルーしてリンはエドに拳を突き出す。
「帰るのか?」
「あァ。俺達不法入国者だから面倒事になる前にナ。」
「そっか。…またなっ。」
「おウ!またいつカっ。…サヤも。」
『あ…、リン…』
結局、リンのプロポーズとやらに返事出来なかった。言葉が出てこないサヤにリンは優しく頭をポンと撫でる。
「達者でナ。…元気に暮らせヨ。」
『うん…、ありがとうリン。シンまで気を付けてね。メイをよろしく。』
「あぁ、任せておケ。チャン家の事も面倒みるサ。シンの人間ハ…」
『盟約は必ず守る、でしょう?信じるよリン。』
リンが満足した笑顔を見せると、人知れずこの場を去っていく。サヤはその姿が見れなくなるまで見送り続けた。
「あーハラ減った!アル飯にしよう!…あれ?そういやあのクソ親父は?」
「さっきブリッグズの人にお金借りてたよ。」
「何やってんだあいつ。」
そんな会話が交わされているとは知らず、当の本人は借りたお金で故郷・リゼンブールまで帰り…亡き妻の墓前で息絶えていたことを兄弟が知ったのはもう少し後の事だった…。
それは幸せそうな死に顔だったそうな…。
『あの…、』
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