第36話
夢小説設定
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ドクン…ッ
『…む、』
はっきりと聞こえた心音のような音。
さきほどから小さく聞こえていたのだが、いままで一番はっきりと聞こえた。
その正体は一体何か。
「気づいたか…、さっきから聞こえている心音に。」
『……、』
動きが鈍くなり違和感を感じる。
ギ…ッとホーエンハイムを睨んだ。
「この国の人達の魂は精神という“ひも”でまだ体と繋がっている。…例えるならへその緒で母体と繋がる赤子のように。」
この鼓動が完全にやつのものになっていない何よりの証拠だ。
抑えきれない心音はどんどん大きくなっていく。
“お父様”の顔がゆがむ。
『…なにをしたホーエンハイム…。』
「長い年月をかけ、計算に計算を重ね、この日の為に俺の中の賢者の石を…仲間を各地に配置しておいたのさ…。」
時は来た――…。
『…なにをする気か知らんがただポイントに賢者の石を打ち込んだだけか?それでなにができる。錬成するにしても円というファクターがなければ力は発動せん。』
「円ならあるさ。時がくれば勝手に発動するようになっている。」
空から降ってくるとびきりでかくてパワーのある円――…
日食によって大地にできる月の影。
“本影”。
先に行くよ、ホーエンハイム――…。
クセルクセスの人達の声が聞こえた…。
『!邪魔をするかホーエンハイムッ!!』
「そのためにここに来たんだよ!“フラスコの中の小人”…ホムンクルス!」
錬成陣が発動する…。
“お父様”もといホムンクルスに異変が起きる。
溢れる力をギリギリ押しとどめているようだ。
『…ぐ…ッ』
「おまえが神とやらを手に入れた時にはすでに我々の逆転劇が始まっていた!」
ホムンクルスの体から錬成反応の光がほとばしる。
それでもなお、アメストリスの人達の魂を開放しないホムンクルスだったが…、どこからともなく聞き慣れた“声”が耳に届いた。
♪――…。
それは歌声だった。
歌詞のない歌はいまのこの場には不釣り合いなほど美しい歌声で。
そしてだんだんたくさんの声が一緒になって聞こえてくる。
まるで賢者の石にされたアメストリスの国民も一緒になって歌っているよう。
この“声”に一番に気づいたのはアルだった。
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