第35話
夢小説設定
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「サヤっ」
『ぐ…っ』
スカーが駆け寄る。
プライドが大佐と共に“お父様”の所へいったおかげで、やっと影から解放された。
自力で錬丹術を使って肩の傷を塞ぐ。
傷は塞いだものの、なんだか自分の体がおかしい気がした。
身体を内側から操られているかのような。
自分のようで自分じゃないような感覚が時々感じる。プライドがマスタング大佐を使って強制的に人体錬成を行ったのが影響しているのか。
胸の奥がざわざわする。
まるで己の中の賢者の石が騒いでいるようで。
「無事か。」
『は、離れ、て…、』
「…!?」
呼吸が荒い。
気を緩めれば今にもなにかの糸が切れそうな、そんな気がする。
「父上が呼んでいるのだろう」
『よ、呼んで…る…、?』
“お父様”が私の中の賢者の石に呼びかけているのだという。
体が思うように動かせくなってきた。
5人目の人柱が揃ったのだ。その時はすぐそこまで迫ってきている。
『あっ───…、』
「どうしたっ」
完全に体が支配された。
目の前が真っ暗になっていく。
脳裏に“お父様”の姿が浮かび上がる。
すると、サヤの足元に大きな一つ目がギョロっと突然現れ、伸びてくる黒い細長い腕が彼女を捉えた。
捕まえた所から徐々に分解されていく体。
『あぁ…っ!』
うそ…っ
こんなの…、
思わず傍にいたスカーを見上げる。
目を見開き、動けずにいる彼。
『く…っ、─────!』
「…っ!?」
微かに動いた彼女の唇からスカーは何かを聞き取った。
助け出そうとした足が、踏みとどまる。
「姉様!」
「お嬢!」
あっという間だった。
エドやマスタング大佐だけでなく、サヤまでもが姿を消してしまった。
ラースを倒して──。
「……。」
彼女の手を掴むことが出来なかった手が宙に浮いたまま、ぐっと握りしめた。
彼女がスカーに向けて放った言葉。
大総統が言った言葉が本当なら彼女はまだ死んではいない。
おそらく地下深く、あの場所へと連れていかれたのだろう。そこにはエド達もいるはず。
自分に出来ることを、と覚悟を決める。
「約束は必ず守る…。…“あれ”が中心で、…この下にいる、か。」
スカーが渾身の一撃を込めて、大総統へ向かって人体破壊を放つ。
簡単にかわされるが、そこには大きな穴が空いた。そこからジェルソ達、メイ、中尉が降りていく。
その場に残されたのはスカーと、大総統のみ。
「父上の邪魔をする気か」
「むん!」
「…っ!」
爆煙の中からスカーが攻撃をしかける。
激しい攻防。
「そうか…、私の最後の相手は“破壊する者”か…。貴様、本当の名はなんと言う?」
思いもよらない質問だった。
スカーは少し考える素振りを見せるも、名は無いと答えた。
「捨てた」
「そうかね。…それは奇遇だな。私も己の本当の名を知らん。」
名無し同士、殺し合うのも面白かろう……────。
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