17話
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『つまりあなたは私に生かされた意味を見つけろ、と言いたいのか?』
「そういうことだ。」
なんともおかしな話である。
敵であるスカーに生きろ、なんて言われるのは。
本当は殺したくてしかたないくせに…。
溜め込んでいたものが全部出たせいなのか、ふぅと深い息を吐く。
不思議と身体も軽くなったような気がして。
『貴方は国家錬金術師を殺したいのではないのか、』
「そうだ。」
『なら何故生きろなどと言う、』
その問いにスカーが答える事はなかった。
ただ無言でサヤを見つめたあと、今度はマルコーに向きを変える。
「マルコー、キンブリーという錬金術師の話をもっと聞かせろ」
「…あ、あぁ」
「それと…、兄が残した研究書の一部に己れでは解読できん部分があった」
スカーが言うには、彼の兄が亡くなる前にこの国の錬金術はおかしい、とスカーに言ったそうだ。
その答えが研究書に書かれているはずだ、と。
「貴様はやり手の錬金術師だ。解読できるか?」
「この国の錬金術はおかしい…?」
マルコーさんは少し考える素振りを見せた後、やってみよう。と首を縦に振った。
すると、再びスカーはサヤを見る。
「サヤ・グレイス。迷っているのなら己れと来い、」
『!…、あなた、と?』
自分は錬金術には詳しくないが…、と考えていたがどうやら違うらしい。
「そうではない。兄は錬金術の研究をすると同時にシンの錬丹術の研究もしていた。研究書にもシンの言葉と思われる物がいくつかあった。」
『それを私に通訳しろ、と?』
そうだ。とスカーが答える。
「メイという娘から聞いた。お前はあいつの師匠なのだろう。錬丹術の基礎はお前から教わったと言っていた。」
『…メイ、か…。』
真っ直ぐにこちらを見る彼にサヤは渋った。
スカーと一緒に行って何があるというのだろうか。
ただ、このままここでホムンクルス側やお父様といても自分は何も変わらないのは確かではあるが。
なおも迷いを見せるサヤにスカーが追い討ちをかける言葉を言う。
「何を迷っている。…貴様は奴らがこの国で何をしようとしているのか知っているのだろう、」
『…、知っている、』
「この国の人間すべてに災厄が起こる。違うか?」
『…そう、だな。そう聞いている。長い時をかけて奴らは計画を進めてきた。イシュヴァールもそのうちの一つだと聞く。』
すべてを私も聞かされたわけじゃない。
だが、だいたいの予想はつく。
「なら、貴様が助けていたあの“スラム”の者達も犠牲になる、ということだ。違うか。」
『……!』
無表情だったサヤの顔に変化がする。
ぱっとスカーを見上げた。
「それでもいいのか、」
『それは…、…』
…いや、だな。
リック、おじいさん…、
みんな…、
「それが貴様の答えだろう、」
『……、』
「あの時、己れを助けた時点で貴様の答えは決まっていたはずだ。」
『スカー…、』
彼が悟らせてくれた。
心の奥底にある私の本心を。
…そうか。私は彼らを失いたくなかった。
『あのスラムに住む人達を…、同じイシュヴァール人であるあなたも…、私は失いたくなかった、のか…、』
「……。」
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