09話
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すぐ振りほどかないのは彼なりの優しさなのだと思う。
とっさにスカーの腕を掴んで止めたはいいが、なにを言えばいいのか言葉が出ず。
しびれを切らしたスカーが口を開く。
「まだ己れに用か」
『あ、そ、その…』
やっぱり言葉が出てこない。
このまま別れたくなくて、なりふり構わず追い掛けたはいいが何を言えばいいのか…。
『ま、まだ傷も治ってないんだ。せめてもう少しだけでもここにいられないのか』
「…さっきのを見ただろう。己れがここにいれば同胞達を危険にさらす。」
『…そ、そうだけど…』
実際スカーを狙って不穏な輩が来たわけで。
スカーの言い分に納得せざるを得なかった。
それでも掴んだ腕はそのままで。
行ってほしくない、と切実に思った。
「看てくれたことには感謝する。だが、いずれ後悔することになるだろう」
『私は貴方を治療したことを後悔したりしない。この先もずっと。それは私が望んでしたことだから』
「…そうか、」
『…ここを出れば貴方はまた指名手配犯に戻るし、私も貴方が狙う国家錬金術師に戻る。もしこの先、貴方に殺されるようなことになったとしても、ここで貴方の治療をしたことを私は後悔しない。』
「……。」
だから…、と続く言葉をスカーはただ静かに聞いていた。
『だから…、どうか死なないで…』
「……!」
そう告げたサヤの顔は今にも涙を零しそうな、悲しげな表情だった。
それはどういう感情だったのか。スカーには理解できなかった。
だか、その言葉は彼の胸に深く刻まれた。
スカーはサヤの言葉に何かを返すこともなく、そっと離れる彼女の手が宙にさ迷い、そのまま再びスカーの腕を掴むことなく、彼は静かに彼女の前から立ち去ったのだった。
死なないで
「(不思議なやつだ…)」
そう思っても彼女もまた国家錬金術師であることに違いはない。
次に会う時はお互い躊躇なく殺すだろう。
その思いに迷いは無いのに、この数日でスカーは自分の中にある言葉では表しようのない不思議な感覚を味わった。人はそれを安らぎ、というのだがその答えにたどり着くのはまだ先の話になる。
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