09話
夢小説設定
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テントに近づくとリックの声が聞こえた。また少年の目を盗んでスカーが修練をしようとしたのか。
あの指名手配犯が小さな子供に叱られているなんて誰も想像がつかないだろう。
少年に怒られてもスカーが何もしないのは彼が半分イシュヴァール人の血を引いてるからだろうか。
またやってるのか、と思いながらサヤはテントの中へと入った。
『リック、外まで声が聞こえてたぞ。』
「サヤ姉ちゃん!だっておっちゃんがすぐ修練とかいうのしようとすんだもん。」
『貴方も懲りない人だな。』
「……。」
だんまりな彼にふぅとため息。
『スカー、客人だ。』
「……?…師父!」
そう言ってテントの中に招き入れた先ほどの男。スカーもよく知る人物だったらしく、態度が急変した。
「ご無事でなにより」
「おまえもよく生き延びた。」
テントの中、サヤの他にリック、おじいさんもいるなかでスカーと師父という男性が話をする。
「今までどこに…」
「南の山間部に寺院の者、数名とな。東の大砂漠に逃げた僧もおるが。はて、生き延びておるかどうか…」
話によれば、この師父という人は南部の方へ避難していたそうだが、その南部もまた国境戦だのなんだので物騒になってきたらしく、とばっちりを受ける前に東へと避難してきたのだという。
『(国境戦か…)』
思い当たるフシがあるのかサヤは黙り込む。
「こっちに逃げてきたらおまえの話を聞いてな、」
「………。」
「国家錬金術師を殺してまわっているそうだな」
スカーは何も言わなかった。
ただうつむき、話に耳を傾けるだけ。
師父の言葉は同時に、サヤの胸にも重く胸に突き刺さる。
「確かに我らの村を焼き滅ぼしたのは国家錬金術師だ。恨みたい気持ちはわかる。だが、おまえのしている事は八つ当たりに近い復讐ではないか」
復讐。
言葉の一言一言がスカーにだけでなくサヤにも重くのしかかる。
「復讐は新たな復讐の芽を育てる。そんな不毛な循環は早々に断ち切らねばならんのだ」
「……。」
「堪えねばならんのだよ」
静かに沈黙が流れた。
と、その時。
『…!(なんだ…)』
「どうした?姉ちゃん」
嫌な気配がした。
ここのスラムでは感じない嫌な気配だった。
『すこし外の様子を見てくる。』
「なんだ」
『嫌な気配がした。貴方はここにいて』
立ち上がったサヤをスカーは見上げる。
幕を上げて外に出ると、案の定このスラムには不釣り合いな奴らがテントの前にいた。
『(こいつらか…)』
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