08話
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スカーの話では1人は背の低い小太りした男。もう1人は黒髪の女性だったそうだ。
ただ、どちらも普通の人ではなかったと。
『人体破壊が、効かなかった!?』
「確かに脳を破壊したはずだった。だがやつは倒れなかった。」
『それって…』
サヤの脳裏にある2人が思い浮かぶ。
『まさかラストとグラトニー…』
「なんだ、」
『いや、なんでも。…襲われたということは、貴方の存在が邪魔だと認識されたからだろう。貴方が生きていると知ればまた狙われる可能性もある。』
「…貴様、何を知っている。」
『――…っ、』
スカーは勘の鋭い男だった。
サヤが何か知っていると瞬時に見抜き問い詰める。
包帯を巻く手が止まった。
『貴方に答えられる事は何も無い。ただ忠告することは出来る。』
「…なら質問を変える。貴様は一体何者だ。」
そう来たか。とサヤは言葉を詰まらせる。
…だが、何故だろう。
スカーになら少しだけ己の過去を喋ってもいい気がした。それはきっとスカーと自分の境遇が似通っている部分があるからだサヤは思う。
『私の名はサヤ・グレイス。アメストリス国、国家錬金術師。2つ名は漆黒の錬金術師。歳は16。生まれはアメストリスではなくシンだ。』
「シン…国だと?あの東の大国のかっ」
シン国とはアメストリスから東、砂漠を挟んで位置する大国である。
50もの民族からなり、皇帝が国を治めている民族国家である。
『そうだ。だから私は錬金術師ではなく錬丹術師なんだ。貴方の傷を塞いだのも錬丹術だ。』
錬丹術という単語自体はスカーも知ってはいた。
錬丹術とはいわば、医療に秀でた術であり、逆に錬金術は武力に特化した術である。
錬丹術にかかればスカーの傷を塞ぐことなど容易である。
「何故シンの国の者がアメストリスに…」
『国家錬金術師なんかやってるのかって?』
「……。」
言い当てられたスカーは押し黙る。
その様子にサヤはふっと笑う。
『そうだな…。…あれは12歳の時だったかな。皇帝陛下暗殺の疑いをかけられて、私の一族はみな殺されてしまった。私の母も父である陛下からの勅命で命を落とした…。でもあとになって気づいたんだ。私達一族は嵌められたんだと。』
「…。」
『お国柄、後継者争いが絶えなくてな。他家が他家を陥れ、潰し合うような醜い争いが何度もあったんだ。実際消滅した一族は多くある。まだ幼かった私は情けからか1人流刑にされ、砂漠の真ん中に置いて行かれたんだ。』
「…そのままアメストリスへ来たというのか…」
『そういうことになる。前に貴方に言っただろう?貴方と私は同じ目をしている、と。』
「祖国に復讐するため、か」
それは母国であるシンを指していたのだ。
『そうだ。だからかな、貴方のこと放っておけなかったのは。』
「……。」
『復讐の道を同じく歩む者を見過ごすことが出来なかった。…死んでほしくなかった。』
今ならはっきりとわかる。
スカーを助けた理由が。後悔はない。
それからスカーは何も聞いて来ようとはしなかった。
あたりもすっかり暗くなっていたので、包帯を変え終わった所で横になって休むようスカーに言う。
『長話をしてしまったな。もう休んだ方がいい』
「…貴様はまだいるのか」
『薬を作ったら帰る。そう嫌そうな顔をしないでほしい』
「……。」
苦笑いするサヤを横目にスカー再び目を閉じた。
話し相手がいなくなったことで再び静寂が訪れる。
目を閉じたスカーに向けてかどうかはわからないが、サヤは独り言を呟いた。
『自分の過去を話したのは貴方が初めてだ。…不思議と嫌ではなかった。…ほんとは誰かに知っていてほしかったのかもしれない。もう誰も知らない私だけの秘密を……。』
「……。」
静かに夜が更けていく……。
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第09話