07話
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しばらくして、デンの鳴き声で我に返った二人はどちらからでもなく笑い出した。
「帰る前に寄りたい所があるんだけどいいか?」
『あぁ、かまわない』
エドワードとサヤは墓標に別れを告げると、来た道とは真逆の方へと歩き出した。
どこへ行くのかと問うと彼は自分達兄弟の始まりの場所とだけ言って、その他は何も言わなかった。
『…ここは、』
「俺たちの…家だ。」
そう言って見つめる視線の先は、家の柱だけを残して焼け落ちた民家が一軒。
側には立派な木が立っていたであろうが火事により木の幹から上が燃えて、残った木の根は真っ黒な炭となっていた。
「─あの日、国家資格を取った俺は後には戻れないように自分の家を焼いたんだ。」
『アルもそれを?』
「あぁ、二人で決めたことだ。」
兄弟の覚悟を見たサヤはその場からピクリとも動くことが出来なかった。
この場所で刻まれたであろう笑い声や泣き声、兄弟ケンカの声などさまざまな思い出が聞こえてきそうで。
たしかにここにあった彼らの家は彼ら自身の手で失った。だがエドワードは後悔はないという。
後悔などしている暇はない。それならば一歩でも前に進むべきだと彼らは自らを叱咤し前に進み続けている。
今も、
そしてこれからも…──。
「帰るか、みんなが待ってる。」
『…うん。』
自分たちの帰りを待っていてくれてる人たちの所へ──。
『っエ、エド!』
「─!」
唐突に愛称で呼ばれたエドワードは思い切り振り返った。
そこには顔を俯かせつつも耳まで赤く染めたサヤが口をもごもごさせていて。
『そ、その…っ、』
「な、なんだよ急に、」
煮え切らない態度の[#dn=1#。不意に愛称で呼ばれたとこにむすがゆさを覚えたエドワードだったが、次の瞬間彼女の口から出た言葉に目を見張った。
『─ありがとう、』
「───…、」
──…、
「ただいまー」
『ただいま。』
「あ、ふたりともお帰り。遅かったね、って…兄さん?」
「な、なんだよ。」
墓参りから帰った兄とサヤを迎えたアルフォンスだったが、兄の様子が明らかに墓参り前と違ってることに目敏く気づいた。
なんだよと答える辺りが既に挙動不審で怪しすぎる。
すると、続いてサヤも家に入ってきた。彼女の方は何の変化もないようだ。
それどころか、どこか清々しく付き物が落ちたような雰囲気さえアルフォンスには感じられた。
「ねぇサヤ、兄さんとなにかあったの?」
『え?特になにも無かったと思うけど…』
どうやら彼女には心当たりはないようである。どうやらエドワードの独り相撲のようだ。だが様子が可笑しいのは確かだ。
アルフォンスは、一人しかめっ面をしたり頭を抱えて振りかぶったりと怪しすぎる行動を見せる兄に疑問の視線を送るのだった。
「~~~~…っ」
『─ありがとう。』
さっきからサヤが墓参りに行った際、お礼の言葉とともに見せた笑顔がずっと頭から離れずにいた。
初めて見た表情だった。人間らしいというか(…。)。女の子らしいというか。
慣れないことに戸惑い、それが今の彼の挙動不審な態度を表していたようだ。
「くっそー…、頭から離れねぇー!」
「何一人でぶつぶつ言ってんの?」
「うわぁ!ウインリィてめぇ!おどかすなっ!」
「はぁ?」
ただ声をかけただけのウインリィにも挙動不審ぶりを発揮していたエドワードであった。
──…、
リゼンブールに来てあっという間の3日がたった日の、朝──。
すっかりウインリィと仲良くなったサヤは彼女から借りた服でアルフォンスと共に外に来ていた。
普段は真っ黒なコートを好んで着ていた彼女だが、ウインリィから借りた短パンにレギンス、Tシャツといったラフな格好に髪もポニーテールにしているせいか雰囲気がガラリと変わって見えた。
朝食時にエドワードが食べかけのパンを落とすほどの激変ぶりである。
「いい天気だね」
『あぁ。風が気持ちいいな』
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