06話
夢小説設定
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サヤはエドワードに手紙を差し出した。
「?、なんだよこれ。」
手紙とサヤを交互に見比べるエドワード。
『ドクターからエドワードに、って。資料の隠し場所が記してあるそうだ。』
「──…っ!、ほ、本当か!?」
『あぁ、伝言も預かっている。』
「聞かせてくれ!マルコーさんはなんてっ!?」
数秒前のテンションとは変わって興奮気味のエドワード。今まで軽く落ち込んでいたのだろう。己の過去を明かし、あれだけ必死にマルコーさんに頼んだ挙げ句、結局は拒否されてしまったのだから。
『“真実を知っても後悔しないと言うのならこれを見なさい”…と。それから……─、あ、いや。これはいいんだったか…。』
「気になるじゃねぇか!マルコーは他になんて言ってたんだっ!?」
エドワードのあまりの勢いに、若干圧されつつもすべて伝える為ドクターが言っていた一句一句をたぐり寄せる。
『“真実の奥の更なる真実に”…と言っていたが、余計な事だと言ってその先を教えてはくれなかった。』
「“真実の奥の更なる真実に”…。どういう意味だ?」
「ねぇサヤ、マルコーさん、他には何か言ってなかった?」
『いや。後は、“二人が元の身体に戻れる事を祈っている”とだけ。』
「そっか。ありがとうサヤ。やったね兄さん!」
アルフォンスは横にいる、目をキラキラと輝かせる兄・エドワードに視線を投げかけた。さっきの落ち込み様が嘘のようだ、とアルフォンスは思う。
「おう!サンキューサヤっ!お前のおかげで元の身体に戻れるかもしれねぇっ!」
『うわっ!、わっ!』
興奮のあまりか、エドワードは遠慮なしにサヤの肩を組むようにガバッ、と腕を回し、まるで子供のように無邪気にはしゃぐのだった。これにはサヤもビックリ。アルフォンスと少佐は笑ってそれを見ていた。
しかし、こうも喜びを隠す事なく表現する彼を見ると、なんだか良い事をしたような気分にさせる。──だが、実際はまったくの逆で。これで兄弟二人が“真実”とやらに一歩近づいた事になる。
それは危険に一歩近づくことを意味する。
気持ちが、矛盾する。
知らない方が幸せな時もある…。まさにその通りだ。後悔しないと言うのなら、…などと言ってはいるが、そんな事知ってからでしか分からないと言うに。
それでもきっと彼等は知りたがるだろう。すぐ手の届く場所に欲していたものが、望んでいたものが、その答えが目の前にあるのだから。
『………。』
サヤの胸中では“心”という“鎖”が複雑に絡みあっていた。
「よっしゃ!道が見えて来た!」
「うん!道はまだ続いてる!」
「おう!」
新たに道が開けた事に決意も深まる中、アルフォンスは忘れてはならない事をエドワードに告げる。
「…ところで兄さん。」
「なんだよアル。」
「なんだよ、じゃないよ。ちゃんとサヤに謝るって言っただろ。」
「う…。」
「…兄さん…。」
「………。」
ゴゴゴ…と、アルフォンスが無言の圧力を掛けてくる。兄の威厳はいずこへ?
するとエドワードは観念したのか、後頭部をガシガシかくと、苦虫を潰したような顔でサヤに向き直った。
サヤも視線に気づき、首を傾げ、エドワードを見る。
『?』
「…………。」
『…………。』
少しの沈黙。その間、エドワードは百面相をしていた。どう言えばいいのか悩んでいるのだろう。ちょっと面白い。
「…おいっ、」
…。なんぞというエドワードの第一声は捨て置き、サヤはなんだ、と返す。
「………かったな。」
『……は? 聞こえんぞ、バカ。』
「~~~っ。だから!さっきは悪かったなっ!って言ってんだよ!」
『……。』
え?逆ギレ?
とか思わないでやってほしい。なにせ筋金入りの“不器用”君だ。彼なりにこれが精一杯の謝罪なのだろう。
彼からの唐突の謝罪。サヤは面食らったような顔で瞬きを数回。
必死に(エドワードなりには)謝ったつもりだ。 恐る恐る、というか、チラッと覗き見するように彼女の顔を伺う。…のだが…、
『───…、』
「……。…おい、聞いてんのかよ。」
『──…っ、』
「………。」
…せっかく最初に謝ってやったのにサヤは一言も返さねぇ。 なんか肩震わせてるがるし…。……ん?。…肩、震わせて……って…。
そこでようやくサヤの様子がおかしい事にエドワードは気付く。
「…てめっなに笑ってやがるっ!」
『ぶ…くく…っ。』
密かに笑っていたのだ。…しかも、肩まで震わせて。
一体なにが面白いのか。また何故自分がこんなにも笑われなければならんのか。
エドワードの心の中では、罪悪感やらなんやらはすべて吹き飛び、変わりに安堵感が芽生え、それを飲み込むかのように“怒り”が先立ってきた。
自分が放った一言に傷つけたのではないか、と心配していた彼女の肩が必死に抑えはいたが、やはり限界があったようでその震えは止まらなかった。
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