01話
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〇月✖日・曇り
今日も天気は曇り。気分が悪い。湿った空気が肌に染み込んでまるで毒のよう。
あぁ…気持ち悪い。
…今日で私がこの国へ来てからちょうど5年目になる。あっという間だった。時間が経つのが早い気がする…。
幼かったし、いろいろありすぎて良く覚えていないけれど。
あとどのくらいこんな生活が続くのだろう。
…そろそろセントラルに戻らないと。個人的に、この静かな東部は気に入っているのだけれど。命令だから仕方ない。
お父様に呼ばれているのだから…
──もう寝よう…。
パタリと閉じたDIARY。
明かりを消し暗闇が部屋を包んだ。
国家錬金術師の証─銀時計─が静かに秒針を刻んだ…。
───……。
翌朝。
『うん。晴れた、晴れたっ』
太陽の光を妨げる物がないこの日。暖かな陽射しがイーストシティに降り注ぐ。
カーテンを開けてたっぷりの日差しを浴びて背伸びする。
気分は晴れやか。今日の朝ごはんは何かな?なんて考えている彼女のもとへ誰かがコンコンとドアをノックする。
こんな朝早くから一体誰だ?
「おはようございますグレイス様。」
ホテルのフロントの人だった。
ドアを開ける。
『なに?』
「朝早くから申し訳ございません。フロントにお電話がつながっております。」
『電話?こんな時間に一体誰?』
「東方司令部のマスタング大佐という方からです。」
『……。』
切ってくれ。と言えたらどんなによかったか。
しかめっ面をしてみせた彼女にフロントマンはますます申し訳なさそうにした。…いや彼のせいではないのだが。私があまりの嫌そうな表情にそう思わずにはいられなかったのだろう。
今現在も繋がっているという電話を出にしぶしぶ部屋を出るサヤ。
受付で待つフロントマンが両手で差し出した受話器を受け取り耳に近づける。
『…はい。』
《やぁ。》
『……。』
朝一番で聞いた声に無性にイラっとして仕方ない。
そーっと受話器を置こうとするサヤ。
しかしこちらの行動がまるで見えてるかのようにすこし大きい声で《切ろうとするんじゃない。》と聞こえてきたものだからギクリとしてすぐ受話器を耳の位置に戻した。
『…ナンノヨウデショウカ。』
《なぜ片言なのだ。…まあいい、いますぐ司令部まで来てくれ。》
『…は?こんな朝っぱらから?』
《用件は直接話す。では待っているぞ。》
『あ…ちょっ』ガチャ、ツー、ツー…
……。
一方的に切られた電話。それだけならわざわざ私が電話に出なくともよかったのではないか?
数分前の清々しい気分は一体どこへやら。
はぁとため息とともにガチャンと受話器を戻す。
『なんだってこんな日に呼び出すんだあの大佐は…』
久々の晴天に気分は最高潮だったのに宿泊中(軍事施設)のホテルにかかってきた一本の電話のせいで、私の気分は一気に崖から落ちた。
──…。
『やけに騒がしい…』
呼び出されたのなら行かないわけにはいかない。仕方なく訪れた見慣れた東方司令部。
呼び出した本人はここにいる。が、今日はなんだか騒がしかった。
すれ違う軍部の人から聞こえたセリフに、閣下が…とか、名簿回せ…とか、声明が…とかまぁその他いろいろ。
『なにかあったのか?』
と、すれ違う軍人に聞いてみた。
「あ、あぁ!──トレインジャックだよ!」
『トレインジャック?そう…、ありがとう。』
マスタング大佐の用件とはこのことだろうか?
…だから私を呼んだのだろうか…。たかがトレインジャックごときで。
国家錬金術師、─漆黒の錬金術師─を…。
─コンコン
「入りたまえ。」
ノックした大きな両開きの扉。中から男性の声がする。言葉通り私は失礼する。と一言言って開けた。
「やぁ、おはよう。」
その爽やかな笑顔が早朝の電話による呼び出しと重なって頭にキた──。