05話
夢小説設定
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「愚か事だというのはわかってる!それでもっ、…それでも目的を果たすまでは針のムシロだろうが座り続けなきゃならないんだ…!」
エドワードはドクターに己の過去を話す。そして、賢者の石を求める理由も…。
「そうか…、禁忌をおかしたか…。
驚いたよ。特定人物の魂の錬成を成し遂げるとは…。君なら完全な賢者の石を作り出す事が出来るかもしれん。」
『…ドクターっ!』
「じゃあ……!」
「資料を見せる事はできん!」
「そんな…っ!」
ドクターから、こうもはっきりと拒否されては手も足も出ない。だがドクターの言葉に若干安堵している自分もいる。それがなんだか申し訳なくて、やりきれなくて、苦しい。胸を締め付けるこの気持ちは一体何だろうか。
「話は終わりだ。帰ってくれ。元の身体に戻るなどと…、それしきの事の為に石を欲してはいかん。」
「それしきの事だとっ!?」
「ドクターそれではあんまりなっ。」
懇願するもドクターは決して首を縦には振らなかった。
「あれは見ない方がいいのだ。あれは悪魔の研究だ…。知れば地獄を見る事になる。」
「地獄なら、とうに見た!」
「…!」
『………。』
…地獄。
そうだ…。エドワードとアルフォンスにとっては、“あれ”はまさに地獄…地獄絵図だ。
あれ以上の地獄が果たして存在するのだろうか。
…否、そう簡単にあるはずがない。無いと信じたい。
決意の瞳をドクターに向けるも、やはり了承してはくれず、結局そのまま手ぶらで家を追い返されたエドワード一行だった。
『…先に、行ってて。』
「?、あ、あぁ。わかった。」
歯切れの悪い会話。先ほどの言い合いが引きずっている証拠だ。アルフォンスは心の中で、あーあ。と呆れながら見守る。
とにかく汽車が来るまで時間がある。エドワード達と別行動をするサヤはもう一度ドクターの家に向かった。…どうしても言いたい事があったから。
──コンコンっ。
『ドクター!私です、#サヤですっ。』
ドクターはすぐにドアを開けてくれた。少し驚いた様子だ。
「どうしたんだね、一体。エドワード君達と行ったのでは…、」
『一つだけ言い残した事があって…』
軽く駆け足で来たため、少し乱れた息を整える。なんだね、と聞くドクターにサヤはすぅ…と息を吸い込んだ。
『私達が今日会ったのはマウロ先生という、ただの町医者です。』
「……!」
『決して軍には報告しませんから、安心してください。』
そう言って頬を緩めた。
サヤの言葉にドクターは目がこぼれ落ちそうな程に見開く。
まっすぐで曇りのない瞳は嘘を言っている様には見えず、
「…ありがとう、ありがとう。すまない。」
『いえ。もし怪我をしたらドクターに診てもらいに来ますからっ。』
「あぁ、いつでもおいで。」
優しい笑みを向けるドクター。すると彼はサヤに一枚の手紙を差し出した。
『?、…これは…。』
「私の研究資料が隠してある場所が書いてある。エドワード君に渡してくれ…。」
『!、ドクター、でも…っ』
「エドワード君に伝えてくれ…。“真実を知っても後悔しないと言うのならこれを見なさい”と。
そして君なら“真実の奥の更なる真実に――”、……いや、これは余計だな。」
『“真実の奥の、更なる真実”…?』
不可思議な言葉にサヤは首を傾げるが、ドクターに忘れてくれと言われ、その先を聞くことは出来なかった。
「君達が元の身体に戻れる日が来るのを祈っておる…と伝えといてくれ。」
『…わかりました。ありがとうドクター。』
「さぁ、もう行きなさい、汽車が来る時間だ。私の心配はいらん。」
サヤは深く頭を下げる礼を述べると、再び駆け足でドクターの家を去って行ったのだった。
──パタン…、
「久しぶりねマルコー。」
「─っ!」
思わぬ客。いつの間にいたのか、その人物はドクターのデスクに腰掛けていた。
慌て飛び退くドクター。その人物とは、エドワード達と共に同じ汽車に乗っていた彼女──ラストだった。
「鋼の坊やを見張ってたら、思わぬ収穫だわ。」
「っ!」
「ご心配なく。あなたを連れ戻しに来たんじゃないから。あなたがいなくても、あなたの部下が後を継いでよくやってくれてるわ。そんな事よりも…盗んだ資料の隠し場所、あの子…サヤに教えたわね?」
「なんの事…」
「とぼけないで。」
ラストは指先を矛のように尖らせると、ドクターの左肩を貫いた。痛みに叫ぶドクター。
「あの子のことだわ。きっと鋼の坊やに隠し場所を伝えるはず。まったく自分の立場もよく理解しないで…。」
「ふ…。あの子は賢い…。あの資料を見ればいずれ真実に…、
お前達がやろうとしている事に気づくだろうよ。」
「そんな事は私がさせるものですか!マルコー…、変な気を起こしたら…、そうね。サヤにこの町を消すよう仕向けるわよ。」
サヤの名にドクターは固まった。そんな事が…、と。
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