05話
夢小説設定
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退屈な汽車の中。移動手段の進歩が遅れているこの国では、夜通し運行も珍しくはなく、無論サヤ達が夕方に乗り込んだ汽車も日付が変わっても走り続けていた。
「『……ふぁ~…。』」
日付が変わって今は昼前。退屈からか、寝不足からかわからない大きな欠伸をするエドワードとサヤ。
すると、サヤは駅のホームを通り過ぎる一人の人物に眠気が吹き飛んだ。
『──…!あの人はっ…』
その声に少佐も駅のホームを見た瞬間、突然がばっ、と汽車から身を乗り出した。
「うわ!?」
エドワードもびっくり。
「ドクター・マルコー!」
「 ! 」
ドクター・マルコーと呼ばれた人物。少し年老いた男性は顔だけを振り向かせた。その横顔を見てサヤは確信する。
(間違いない。あの人は中央で行方不明になっているドクター・マルコーだっ)
「ドクター・マルコーではありませんか!?中央のアレックス・ルイ・アームストロングであります!」
少佐が名乗った瞬間、ドクター・マルコーと呼ばれた人物は血相を代え、慌てて逃げるようにホームを去って行った。
『あ…っ』
「少佐、知り合いかよ。」
「うむ…」
見えなくなった男性にエドワードは問うた。
『彼はドクター・マルコーと言って、中央の錬金術研究機関にいた、かなりやり手の錬金術師だ。』
「錬金術を医療に応用する研究に携わっていたがあの内乱の後、行方不明になっていた。」
サヤの説明に少佐が更に詳しく語る。するとエドワードはある単語に反応を示した。
“錬金術を医療に応用する研究”
「──降りよう!」
『えっ!?あ、ちょっとっ』
思ったが吉日。突然席を立つエドワードに慌ててついて行くサヤ。
「む?降りるのはリゼンブールという町ではなかったのか?」
「そういう研究をしてた人なら生体錬成について知っているかもしれない!」
『待って!少佐早くっ!汽車が出るっ。』
遅れる少佐を急かしつつ、貨物車両に乗せてあったアルフォンスも忘れず降ろしてもらい、ドクター・マルコーが去って行った方角へと足を向けるエドワード。
(うわ!アル羊くさっ!)
(好きで臭くなったんじゃないやい!)
(……。(…臭い。))
駅を出て、ドクター・マルコーを追う一行。見知らぬ町に道行く人に訪ねようとするが、目立った外見ではなかったドクター・マルコー。
第一印象が思い浮かばず…。
そこへ少佐が助太刀をする。小さい手帳に一筆、
「こういうご老人が通りませんでしたかな?」
目が点になった。
『…すごい…。』
「…少佐、絵上手いね…」
「わがアームストロング家に代々伝わる似顔絵術である!」
キラーンと自慢の前髪が光る。
それはさておき、訪ねられたら町人は手帳の似顔絵を見て、知ってる!と答えた。
「ああ、マウロ先生!」
『…マ、ウロ?』
「あぁ。この町は見ての通りビンボーでさ、医者にかかる金も無いけど、先生はそれでもいいって言ってくれるんだ。」
次々に語る町人。みながマウロ先生もとい、ドクター・マルコーを良い人だ、とか誉めそやしていた。道行く人全員が嬉しそうな顔をして…。
『………。』
(やはり…、知らせなければいけないのだろうか…。)
教えてくれた道を辿っていく途中、だんだん難しい顔になっていくサヤ。それにエドワードが気づく。
「サヤ、変な顔してどうした?」
『……。』(イラッ…。)
変な顔って…。
一言多いエドワードに怒りマークが頭に浮かぶ。
『元からだ。放っとけ。』
「ぶっ。それは可哀想だなっ。」
『うるさいっ!』
「二人とも…、なにケンカしてるの…。」
小さい争いはアルフォンスの介入により、引き分けに終わったのだった。((………ふんっ!))
「そうか。偽名を使って、こんな田舎に隠れ住んでいたのか。」
「でもなんで逃げたんだ?」
『本人にも思う所があったんだろう。研究に疲れたとか…』
「そういうもんか?」
「ドクターが行方不明になった時に極秘重要資料も消えたそうだ。」
『資料はドクターが持ち逃げしたと、当時もっぱらの噂だったんだ。』
それが、さっきの青ざめた表情の意味を表している。自分達が機関の回し者と思ったかもしれん。と少佐は語る。
辿り着いた一軒の家の前で会話は終わる。エドワードが真っ先にドアをノックした。…返事は無し。当然と言えば当然か。
「こんにち…わ。」
ガチャリ ドンッ!
「うおっ!」
まさかの拳銃構えての、お出迎え。…嬉しくないし。(危ねっ!…し死ぬっ!)
当の本人、何しに来たっ!と怯え警戒した様子。いやいやそっちこそなにすんの。エドワードも胸に手を当て、今にも死にそうな顔をしていた。
「落ち着いて下さいドクター。」
「私を連れ戻しに来たのかっ!?もうあそこには戻りたくない!お願いだ!勘弁してくれ……!」
「違います。話を聞いてください。」
「じゃあ口封じに殺しに来たかっ!?」
「『………。』」
延々と続く言い争いにエドワードとサヤは交互に少佐とドクターを見やる。
「まずはその銃をおろし…」
「だまされんぞ!」
「落ち着いて下さいと言っておるのです」
みしっ!
ドクターに向かって投げつけられたアルフォンス。エドワードとサヤは揃ってアルフォンス!と声を上げた。
──…、
「私は耐えられなかった…………。」
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