04話
夢小説設定
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今日ほど自分の長い髪を恨んだ事はない。雨も吸って身に張り付く髪は邪魔以外のなんにでもない。
ヘタをすればスカーに掴まれかねない。
お互いの蹴りが交差する。スカーは只の破壊の錬金術だけではなく、体術のレベルも上級者並みだった。一撃は重く、そして速い。
このご時世、いまだにこんな人がいるとは思いもしないだろう。
このアメストリス国各地でクーデターやら色々起きてはいるが、どれも銃撃戦やら戦車ばかり。スカーのような白兵戦の戦い方をする人はめっきりいなくなったと思っていた。
それにくらべサヤはスピードこそは奴に対応できるがパワーがない。
拳を繰り出してもビクともしないのだ。
『ぅ…っ!』
鳩尾にスカーの一撃が入る。激しい吐血感と内臓まで響くような痛み。
片膝を地面につけてしまい、顔を伝う血は雨に溶け、血の色が地面に広がった。
サヤ!と心配するエドワードの声が通りに響く。
ああ、なんて情けないだろう。友達を助けたいのに、助けられないなんて…。
どんな型でもいい…。守ることが出来るなら。私はこの手を血で染めてでも…、二人を守りたい…。
――友達だから――
――ガッ…!
「…!(む…っ)」
『っ…!─せいっ!』
弱ったように見える態勢から一気に足払いをかけてやれば、意外にもスカーは掛かりバランスを崩して地面に転びかけた。
だが、そう簡単には完全には崩れてはくれない。
しかし、私にはそれだけで十分だった。スカーから1秒でも隙を作ることが出来れば…。
――ガチャリ…。
「……!」
「「…!」」
『……。』
三者三様の反応。
さぞや驚いただろう。私もいまだにこんな物を持ち歩き尚且つ、手に取る日が来たことに驚いた。
エドワードもアルフォンスも言葉が出ないようだ。たった一発…、打ってしまえば私は本当に人殺しと、軍の大量殺人兵器となってしまうだろうから。
それがたとえ殺人犯であったとしてもだ。
微かに動きを見せるスカーに私は黒く光る銃を突きつけた。
動くな…、と…。
『…動けば打つ…。外しはしない。』
「……。」
狙いを眉間に定め、時間が過ぎるのを待った。その間にマスタング大佐の援軍の到着を祈る。
今以上に一秒一秒が遅く感じられた日はないだろう。ほんの少し気を抜いてしまえば殺されそうな空間。
ピンと糸がきつく張り詰めたような空間。
ぷつりと切れてしまえばなにが起こるか予想できないほどに。
そんな時、ふとサングラス越しのスカーの瞳と視線がぶつかった。
サヤは何故か反らすことが出来なかった。
トリガーに当たる指がほんの少し緩む。
スカーの瞳から感情が伝わって来そうで。
いや、それ以前に…、
――私と同じ目をしてる―
それはまるで鏡越しの自分を見ているような気がするほどに――。
「…サヤと言ったな…。」
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