27話
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『お前を許す。リン・ヤオ』
「……!」
もともと細い目を大きく開くリン。
私からもっと罵倒されるかと思っていたのかもしれない。
だから私が言った言葉が余程意外だったのだろう。
『許す変わりに私のことはもう忘れろ。忘れてリンのやるべき事をしてほしい』
「サヤ…」
それがお互いに一番いいはずだ。
過去に囚われているからこそ、お互いに解放することで望む未来を手にすることができる気がする。
『いつまでも過去に囚われてはいけない。』
「ほんとうにそれでいいのカ…?」
『あぁ。…第一に私のことより自分の心配をしたらどうなんだ?』
ホムンクルスと共存なんて気が狂いそうなほどに疲れるはず。
今はリンだが、主導権は完全にグリードが支配しているのだ。
「だガっ…っ!」
『リン…?』
突然頭を抱えて呻き出す。
「くそ…っ、まダ…!」
『…!グリードか…っ』
リンの人格を押し込めてグリードが出てこようとしている様子。
今までの会話を聞いてたならもう十分だろ、とグリードは判断したのか。リンの対面もここまでのようだ。
「おまえモっ…、」
『?』
「おまえもいくのカ…!お父様とらやのところヘ…っ」
『あぁ、…行く。行って全てを終わらせる。』
「き、気を付けロ…!あいつはお前ヲ…っ!……」
『リン?』
「………。」
リンの声が途絶えた。
かわりにグリード独特の気配を感じる。
『グリード、か…』
「あぁー、ったくじっとしてんのも疲れるぜ」
ほんの数分間だけだったろうに。
忍耐力のないやつだ、と心の中でサヤは思う。
『グリードはなにか知っているのか?』
「あぁ?なんのことだ」
『私のこと…、フィーネ、のこと…』
「……。さぁな、」
あっさりはぐらかされてしまった。
そう簡単には教えては貰えないか。
サヤから見れば、今のグリードは敵ではないが味方でもないといったところ。
サヤに教える義理など無いに等しいものだ。
「おーいっ」
『…?』
グリードとサヤとの会話がちょうど途切れた時、遠くからエドがやって来た。
ホーエンハイムさんの話はもう終わったようだ。
『エド、』
「グリリンもここにいたのか」
「おい、その呼び方はやめろっつったろが」
『……。』
なんでグリリン?変わった呼び方だと思いながらグリリンことグリードをじっと見る。
『なんでグリリン?』
「グリードだか、リンだかややこしいから略してグリリンだ!」
どうだ!と鼻高々に言われてもどうとも言いようがない。
そもそもセンスの欠片もないし、そう言えばエドってセンスないんだったっけ。
アルに「兄さんのセンスは破壊的だよ」なんてことを聞いた覚えがある。
『ふーん。…で?』
「……。」
軽く流され、なにか用?と言わんばかりの視線にエドはがっくり。
「お前友達少ねぇだろ絶対。」
『そういうエドだって人のこと言えないだろ』
「お前よりはマシだ!…多分、」
『……。』
何を根拠に多分と言い張るのか。
2人の友達事情なんて知らないグリードと後から来た合成獣の2人はツッコむことも出来ず、小さい言い争いを黙って見過ごすしかなかった。
「ま、お前の友達事情なんて興味ねぇし。それより飯食いに行こうぜ」
『自分から言っといて…、』
ずいぶん用件から逸れてしまったが、エドの用はそれだけ。
なんだかんだで飯屋に向かうエドの後を付いていくサヤだった。
(エド、)
(ん?)
(…背、伸びた?)
(なに!?)
(((うるさい。)))
────、
『で、お父さんからちゃんと話聞けたのか』
「うーー…、」
横でずずーと麺を啜るエド。
その顔は頭の中がぐちゃぐちゃで整理出来てない顔だ。
すると一緒に話を聞いていたハインケルとゴリウス(ダリウスだ!)が両サイドから話しかけてくる。
「おまえよ、もーちょっとおやっさんと膝交えて話した方がいいんじゃないか?」
「そーそー、せてめ「親父」って呼んでやれよ」
「……。」
2人の指摘にさらに顔色を悪くするエド。
『あの人、悪い人じゃないと思うけどなぁ』
「そーそー。過去に色々あったようだが、ありゃカミさんを捨てるような男じゃないな。」
「きっと色々あんだよ、な。話を聞いてやれよ」
ちくちく。つんつん。
決してサヤ達に悪気はなかったのだが、ついにエドの我慢が切れた。
「あーもーうっせーな!オレだって色々あんだよ!」
『色々って?』
「ぬっ…ぐ…」
爆発したものの冷静にツッコまれれば、何とは答えられず言葉を詰まらせる。
「どーせつまらん意地だろ」
と、ダリウスに大人の余裕で言い返されてしまえば逃げ道はなくなり。
苦し紛れにそばにあった布屋へと逃げ込むエドであった。
「おばちゃん赤いのくれ!」
「はいよー」
『逃げた。』
「逃げたな。」
サヤがぽそっと呟いた言葉にハインケルも賛同するのだった。
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